BCP訓練のやり方|介護の業務継続計画の訓練は年2回?年1回?机上訓練と実地訓練・一体実施・記録の残し方(2026)
更新日:2026-10-26・約12分で読めます
介護事業所の業務継続計画(BCP)の訓練は、運営基準で「必要な研修及び訓練を定期的に実施」することが義務づけられ、回数は解釈通知で、施設・居住系サービスが年2回以上、それ以外のサービスが年1回以上とされています。訓練は机上でもかまいませんが、机上と実地を組み合わせるのが適切とされ、感染症対策の訓練とは全てのサービスで、非常災害対策の訓練とは通所系や施設などでまとめて行えます。国の資料が示す訓練の種類と机上訓練の進め方、記録に残す書類、年間の組み方の例を、運営基準・解釈通知・国のQ&A・ガイドラインの原文で整理しました(2026年10月時点)。
まず結論:施設・居住系は年2回以上、その他は年1回以上。減算の要件ではないが義務
運営基準は、業務継続計画を策定して計画に従い必要な措置を講じること(第1項)に加えて、従業者に計画を周知し、必要な研修及び訓練を定期的に実施すること(第2項)、定期的に計画を見直すこと(第3項)を求めています。訓練の回数は省令ではなく、解釈通知に書かれています。
- 回数:施設・居住系(特養・地域密着型特養・老健・介護医療院・特定施設・地域密着型特定施設・グループホーム)は年2回以上。それ以外の訪問系・通所系・短期入所系・多機能系・居宅介護支援・福祉用具貸与などは年1回以上です。
- 中身:計画に基づく役割分担の確認と、感染症や災害が起きた場合に実践するケアの演習など。手法は問いませんが、机上と実地を適切に組み合わせるのが適切とされています。
- まとめて行えるもの:感染症のBCPの訓練は感染症対策の訓練と、災害のBCPの訓練は非常災害対策の訓練と、一体的に行って差し支えないとされています(災害の方は通所系・施設などの解釈通知に限った記述)。
- 減算との関係:国のQ&A(令和6年度 Vol.1 問164)は、研修・訓練などの実施の有無は業務継続計画未策定減算の算定要件ではないとしています。ただし運営基準上の義務で、運営指導では「訓練の計画及び実績がわかるもの」が確認されます。
根拠:省令は「定期的に」、回数と中身は解釈通知
訪問介護の運営基準(平成11年厚生省令第37号)第30条の2第2項は、事業者は「訪問介護員等に対し、業務継続計画について周知するとともに、必要な研修及び訓練を定期的に実施しなければならない」と定めています。特養(第39号)は第24条の2、居宅介護支援(第38号)は第19条の2、地域密着型サービス(第34号)は第3条の30の2に同じ規定があり、通所介護やグループホームなどは準用しています。
この義務は令和3年度の介護報酬改定で全てのサービスに設けられました。3年間の経過措置の間(令和6年3月31日まで)は努力義務とされ、令和6年4月から義務になっています。
回数と中身は、各サービスの解釈通知(令和3年度の改正=介護保険最新情報 Vol.934)に書かれ、令和6年度の改正でも研修と訓練の記述は改められていません。
- 研修と訓練の違い:研修は計画の具体的内容を職員間で共有し、平常時と緊急時の対応への理解を促すもの(実施内容を記録)。訓練は計画に基づいて役割分担の確認やケアの演習を行うものです。
- 新規採用時:施設・居住系は、新規採用時に別に研修を「実施すること」。その他のサービスは「実施することが望ましい」。新規採用時の訓練は、解釈通知に書かれていません。
- 参加者:全ての従業者が参加できるようにすることが望ましいとされています(訪問介護は登録訪問介護員等を含めて)。
- 他の事業者との連携:策定や研修・訓練は、他のサービス事業者との連携等により行っても差し支えないとされています。
サービス別の回数:年2回か年1回か
解釈通知の各サービスの記述(「通所介護と同様」のように他のサービスを参照するものは参照先)を確かめると、次のとおりです。
- 研修・訓練とも年2回以上(新規採用時の研修は実施すること):介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院、特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)。
- 研修・訓練とも年1回以上(新規採用時の研修は望ましい):訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、居宅療養管理指導、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、福祉用具貸与、特定福祉用具販売、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援、介護予防支援。
- 短期入所は泊まりのサービスですが、解釈通知は「通所介護と同様」としており、年1回以上です。
国の資料が示す訓練の種類:避難訓練だけではBCPの訓練にならない
国の感染症と自然災害のガイドラインは、どちらもBCPは作成するだけでは実効性があるとは言えないとして、平時からの研修・訓練と、訓練などで洗い出された課題を反映した定期的な見直しを求めています。
厚生労働省のBCP作成支援のページに載っている机上訓練の解説資料(令和5年度 介護BCP策定支援セミナー・厚生労働省委託事業)は、避難誘導・初期消火・救出救護の防災訓練はBCPの訓練ではないとし、BCPの訓練を次の6つに分けています。
- 参集訓練:夜間・休日を想定し、対策本部の要員が事業所へ集まる。
- 対策本部設置訓練:災害が起きた想定で、対策本部を設ける。
- 机上訓練:災害の発生から復旧までの流れを机上で確かめる(イメージ・トレーニング)。
- 安否確認訓練:施設の内外にいる職員などの安否を実際に確かめる。
- 実働訓練(実地):マニュアルに沿って機器の操作などを実際に行う。
- 総合訓練:地域などと協力して、一連の流れを確かめる。
- 同じ資料は「机上訓練と実地訓練を実施する」とし、業務継続の流れは机上訓練で確かめるとしています。
机上訓練の進め方:国の解説資料の手順
国の机上訓練の解説資料は、始めは簡単なケース・簡単なシナリオでBCPの訓練を行うよう勧め、次の手順を示しています。
- 準備:会議室(できれば災害対策本部を置く場所)に、本部長と各対策班の正副の班長を集める。
- シナリオ:事前に決め、できるだけ具体的に設定する。前提条件の例は、震度7の地震、停電・断水、電話やデータ通信が使えない、道路の状況は不明など。
- 進め方:進行役がシナリオを1ステップずつ説明し、各班が何を行うかを考えて発表する。わからなかった点は記録を取り、反省会で振り返る。
- 評価:達成度・迅速性・正確性・柔軟性(検討できた対応の数)の4項目で評価し、反省点をもとにBCPを改善する。
- 想定の例:入所系は夜10時に夜勤リーダーとして詰所にいる時、通所系は15時に事務所にいる時、訪問系と居宅介護支援は15時に利用者宅を訪問中の地震です。
感染症のBCPの訓練で扱うこと
解釈通知は、感染症の業務継続計画に書く項目を、平時からの備え、初動対応、感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等)としています。訓練では、この計画に沿って誰が何をするかを確かめます。
- 国の感染症のガイドラインは、BCPと感染対策マニュアルの違いを表で示し、体制・担当者、連絡先、職員の確保、業務の優先順位などをBCPの側に置いています。手指消毒やガウンテクニックは主にマニュアルの側です。
- 国の机上訓練の解説資料は、BCPの発動を決めないまま感染が広がることを阻害要因に挙げ、感染(疑い)者が1名出た時点でBCPを発動して情報を集める対策を示しています。職員の感染で人手が足りない時に優先業務・利用者にサービスを絞ることも挙がっています。
- 防護具の着脱やゾーニングなど感染対策の実地の訓練は、感染症対策の訓練と一体的に行えるため、同じ回で「誰が判断し、誰に連絡し、どの業務を減らすか」の確認と組み合わせられます。
災害のBCPの訓練で扱うこと
解釈通知は、災害の業務継続計画に書く項目を、平常時の対応(建物・設備の安全対策、ライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)、緊急時の対応(発動基準、対応体制等)、他施設及び地域との連携としています。
- 緊急時の対応:計画の発動、対策本部の立ち上げ、職員の参集と安否確認、優先業務の継続を、机上訓練で流れとして確かめます。国の解説資料は確認事項の例に、発災が夜の場合の連絡、対策本部長と各班の役割、法人本部・利用者と家族・ケアマネジャーへの連絡を挙げています。
- 平常時の対応:同じ資料は、停電で使えない機器の確認と対策や、水・食料・寝具などの備蓄を挙げています。備蓄の量と置き場所は実地で確かめやすい項目です(当社の整理)。
- 他施設・地域との連携:国の自然災害のガイドラインは、連携先と共同で行う訓練の概要を計画に書くとし、地域と共同の防災訓練は継続的に取り組むのが望ましいとしています。
- 通所系・訪問系:国の解説資料の想定では、通所系は利用者と職員の帰宅準備・避難所への避難・休業と再開、訪問系は訪問中の利用者の安全確保・利用者の安否確認・人員と物資の確保が流れに入っています。
一体実施:まとめてよい組み合わせと、書かれていないこと
解釈通知が「一体的に実施することも差し支えない」としている組み合わせと、計画そのものを一体的に策定できる範囲は、次のとおりです。
- 感染症のBCPの研修・訓練と、感染症の予防及びまん延の防止のための研修・訓練:全てのサービスで一体的に実施して差し支えないとされています。
- 災害のBCPの訓練と、非常災害対策の訓練(避難、救出その他必要な訓練):通所系・短期入所系・多機能系・施設・居住系の解釈通知にある記述です。訪問系、福祉用具貸与・特定福祉用具販売、定期巡回・夜間対応、居宅介護支援・介護予防支援の解釈通知にこの一文はありません。このうち訪問系・福祉用具貸与・定期巡回・夜間対応・居宅介護支援は、運営基準に非常災害対策の条文がありません。
- 計画の一体的な策定:感染症と災害の業務継続計画は一体的に策定できます。令和6年度の改正で、対応する項目を適切に設定していれば、特養などは感染症の指針や非常災害の計画とも、訪問介護は感染症の指針とも一体的に策定して差し支えないとされました。
- 書かれていないこと:感染症と災害を別々に数えるのか合わせて数えるのか、研修と訓練を同じ時間で兼ねてよいかは、解釈通知と国のQ&Aに定めが見当たりませんでした。迷う場合は指定権者に確認するのが確実です。
- 避難訓練と同じ日に行う場合:避難のあとに、計画の発動・職員の安否確認・優先業務の継続を確かめる場面を入れておくと、BCPの訓練としての中身がそろいます(当社の整理)。
記録に残すもの:運営指導の確認文書と情報公表の調査票
国の運営指導マニュアルの確認文書は、訪問介護の業務継続計画について、策定と措置、周知と研修・訓練の定期的な実施、定期的な見直しの3点を確認項目とし、確認文書に「業務継続計画」「研修の計画及び実績がわかるもの」「訓練の計画及び実績がわかるもの」を挙げています。通所介護の非常災害対策では「避難・救出等訓練の実施状況がわかるもの」も確認文書です。
介護サービス情報公表制度の運営情報の調査票(訪問介護の例)には、BCPの周知・研修・訓練の実施記録と、見直しを検討した記録のそれぞれについて「あり・なし」を記入する項目があります。
- 計画と周知:感染症と災害の業務継続計画、見直した日と変更点、いつどの版を誰に周知したか。
- 研修:年間の計画と、実施日・内容・参加者の実績。
- 訓練:年間の計画と実績。訓練記録の項目の例(当社の整理)は、実施日、机上か実地か、対象の計画(一体的に行った訓練の名称も)、参加者、想定、決めた対応、評価4項目、課題、計画の見直しへの反映です。
- 一体的に行った回:感染症対策や非常災害対策の訓練の記録にも同じ実施日を書き、どの計画の訓練かがわかるようにしておくと説明しやすくなります(当社の整理)。
年間の組み方の例(当社の整理)
次の例は、上の求めを1年に並べた当社の整理で、国が月や順番を定めているわけではありません。感染症と災害の数え方の定めが見当たらないため、どちらの計画も毎年の訓練から外れないように組んでいます。
- 年2回の類型(施設・居住系)1回目:災害が主。夜間の地震を想定した机上訓練(参集・安否確認・計画の発動・優先業務)を避難訓練と同じ日に行い、感染症の連絡網の確認も短く入れる。
- 年2回の類型 2回目:感染症が主。感染(疑い)者が1名出た想定で初動の判断・連絡・業務の絞り込みを机上で確かめ、防護具の着脱やゾーニングを実地で行う。災害の安否確認の手段も短く確かめる。
- 年1回の類型(訪問系・通所系など):1回の訓練の前半で災害(訪問中・送迎中の地震)、後半で感染症(利用者の感染疑い・職員の感染で人手不足)を扱う。「年1回以上」なので、分けて年2回行うこともできます。
- 研修と見直し:訓練の前に計画の中身を共有する研修を置き、訓練で見つかった課題は計画に反映して、改訂版を周知し記録します。
BCPに委員会の設置義務はない:周知と見直しの記録を残す
BCPには、虐待防止や身体拘束の適正化のような検討委員会を置く義務はありません。運営基準が求めるのは、策定と措置、周知、研修、訓練、定期的な見直しです。委員会の記録がない分、「いつ計画を見直したか」「いつ誰に周知したか」を研修・訓練の記録とあわせて残しておくことが大切です。
減算との関係:BCP未策定減算は「策定」と「措置」が要件
業務継続計画未策定減算は、施設・居住系サービスが所定単位数の3%、その他のサービスが1%です。国のQ&A(問164)は、感染症若しくは災害のいずれか又は両方の計画が未策定で、かつ、計画に従い必要な措置が講じられていない場合に減算の対象になるとし、研修・訓練などの実施の有無は算定要件ではないとしています。対象サービスやさかのぼりの扱いは、別記事「BCP未策定減算はいくら?」で解説しています。
無料で使えるBCP研修キットと年間計画表
本サイトの「BCP(業務継続計画)研修キット」には、そのまま読み上げて実施できる約30分のレジュメ、確認テスト10問、実施記録様式、出席簿がそろっています。サービス類型を選べば、BCPを含む義務研修が頻度に応じて月に配置された年間計画表も作れます。登録不要・無料で、入力内容はお使いのブラウザ内にのみ保存され、外部には送信されません。印刷(PDF保存)してそのまま保管できます。
法令・介護報酬は改定されます(本記事は2026年10月時点)。最終的な適用は指定権者(都道府県・市町村)にご確認ください。
この記事で確認した一次資料
2026年10月26日に、下の「出典」に挙げた運営基準(e-Gov 法令検索)、解釈通知の改正(介護保険最新情報 Vol.934、令和6年度の新旧対照表)、国のQ&A(令和6年度 Vol.1 問164)、改定資料、厚生労働省のBCPガイドラインと机上訓練の解説資料、運営指導マニュアルの確認文書、情報公表の調査票を取得し、該当箇所を確かめました。
この記事を書いたチームは、note でも介護の仕事で考えたことを書いています。note をフォローする
出典(一次資料)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)
- 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年度改定・解釈通知改正)
- 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(老企第25号)令和6年度改正の新旧対照表(別紙10・抄)
- 厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について」(老企第43号)令和6年度改正の新旧対照表(別紙14・抄)
- 介護保険最新情報 Vol.1225(令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)・令和6年3月15日)
- 厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」(PDF)
- 厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」
- 厚生労働省「介護施設・事業所における感染症発生時の業務継続ガイドライン」(第2版・令和6年3月・PDF)
- 厚生労働省「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」(第1.1版・令和6年3月・PDF)
- 厚生労働省「机上訓練(入所系)」令和5年度介護BCP策定支援セミナー資料(令和5年度厚生労働省委託事業・PDF)=通所系・訪問系・居宅介護の版も同じページに掲載
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」別添 確認項目及び確認文書(令和6年7月改訂・PDF)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表制度」(令和8年度の別添1〜7=別添2 調査票 運営情報〔訪問介護〕を収録・2026年10月22日確認)
【免責事項】本キットは研修実施の参考資料です。法令・運営基準・介護報酬の内容は改定されることがあります。実際の運用にあたっての最終確認は、指定権者(都道府県・市区町村等の自治体)へのご確認をおすすめします。本キットの利用により生じた損害について、当社の損害賠償責任は、故意・重過失を除き購入代金の額を上限とします。