BCP未策定減算はいくら?施設・居住系3%・その他1%|対象サービス・いつから・さかのぼって減算・研修訓練との関係(2026)
更新日:2026-10-26・約12分で読めます
業務継続計画(BCP)が未策定のときの「業務継続計画未策定減算」は、施設・居住系サービスが所定単位数の3%、それ以外の対象サービスが1%です。感染症と災害のどちらか一方でも計画が未策定なら対象になり、運営指導で見つかった場合は、見つかった月ではなく基準を満たさなくなった時点までさかのぼって減算されます。経過措置は2025年3月31日で終わっています。対象サービス、いつから・いつまで減算されるか、計画に書く項目、研修・訓練との関係を、運営基準・告示・算定構造・国のQ&A・解釈通知の原文で整理しました(2026年10月時点)。
まず結論:施設・居住系は3%、その他は1%。どちらか一方の計画が無いだけでも対象
令和6年度の介護報酬改定で「業務継続計画未策定減算」が新設されました。感染症または災害のいずれか、あるいは両方の業務継続計画(BCP)が未策定の場合に、基本報酬を減算する仕組みです。対象は居宅療養管理指導と特定福祉用具販売を除くすべてのサービスで、経過措置は令和7年3月31日で終わっています。
- いくら:施設・居住系サービスは所定単位数の100分の3(3%)、その他のサービスは100分の1(1%)。
- 対象になる場合:感染症のBCP・災害のBCPのどちらか一方でも未策定なら対象です。
- いつから減算:運営指導などで見つかった場合は、見つかった月ではなく、基準を満たさない事実が生じた時点までさかのぼって減算されます(国のQ&A 問166)。
- 研修・訓練との関係:周知・研修・訓練・定期的な見直しを行ったかどうかは、この減算の算定要件ではありません(問164)。ただし運営基準上の義務であることに変わりはなく、運営指導では研修と訓練の計画・実績も確認されます。
- 文書は1つでもよい:解釈通知は、感染症と災害の業務継続計画を一体的に策定することを妨げないとしています。前提は、両方の項目がそろっていることです。
根拠:運営基準・告示・改定資料の原文
訪問介護の運営基準(平成11年厚生省令第37号)第30条の2第1項は、事業者は「感染症や非常災害の発生時において、利用者に対する指定訪問介護の提供を継続的に実施するための、及び非常時の体制で早期の業務再開を図るための計画(以下「業務継続計画」という。)を策定し、当該業務継続計画に従い必要な措置を講じなければならない」と定めています。第2項は従業者への周知と「必要な研修及び訓練を定期的に実施」すること、第3項は定期的な見直しと必要に応じた変更を求めています。特養(平成11年厚生省令第39号)は第24条の2、居宅介護支援(平成11年厚生省令第38号)は第19条の2に同じ規定があり、通所介護(第105条)や短期入所生活介護(第140条)などは第30条の2を準用しています。
減算は報酬の告示で定められています。令和6年厚生労働省告示第86号は、たとえば訪問介護について「別に厚生労働大臣が定める基準を満たさない場合は、業務継続計画未策定減算として、所定単位数の100分の1に相当する単位数を所定単位数から減算する」と定めました。
厚生労働省の改定資料は、減算の目的を「業務継続に向けた計画の策定の徹底を求める観点」とし、算定要件を、業務継続計画を策定すること、当該業務継続計画に従い必要な措置を講ずること、の基準に適合していない場合としています。率を定率にした理由には、サービスごとに基本サービス費や算定方式が異なることを挙げ、その他のサービスでは所定単位数から平均して7単位程度/(日・回)の減算になるとしています。
国のQ&A(令和6年度改定 Vol.1 問164)は、減算の対象を「感染症若しくは災害のいずれか又は両方の業務継続計画が未策定の場合、かつ、当該業務継続計画に従い必要な措置が講じられていない場合」としています。
減算はいくら?サービス別の率
介護報酬の算定構造(令和6年4月改定)の「業務継続計画未策定減算」の欄と、告示第86号の条文で、サービスごとの率を確かめました。
- 所定単位数の3%(−3/100):介護老人福祉施設、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人保健施設、介護医療院、特定施設入居者生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)。介護予防の特定施設とグループホームも3%です。
- 所定単位数の1%(−1/100):訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、福祉用具貸与、居宅介護支援、介護予防支援(介護予防を含む)。
- 減算の対象外:居宅療養管理指導と特定福祉用具販売(介護予防を含む)。ただし、BCPを策定する運営基準上の義務はこの2つのサービスにもあります(解釈通知はどちらも訪問入浴介護と同様としています)。
- 短期入所は泊まりのサービスですが、率は1%です。施設・居住系の3%には入りません。
いつから?施行時期と、終わった経過措置
国のQ&A 問165 は、施行時期を3つの区分に分けています。どの区分も経過措置の期限は令和7年3月31日で、2026年10月時点ではすべての対象サービスで減算が適用されます。
- 令和6年4月から:通所介護、短期入所生活介護、短期入所療養介護、特定施設入居者生活介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、認知症対応型共同生活介護、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、看護小規模多機能型居宅介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院(介護予防を含む)。ただし令和7年3月31日までは、感染症の予防及びまん延の防止のための指針の整備と、非常災害に関する具体的計画の策定を行っていれば、減算を適用しないとされていました。
- 令和6年6月から:通所リハビリテーション(介護予防を含む)。経過措置は上と同じです。
- 令和7年4月から:訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、福祉用具貸与、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、居宅介護支援、介護予防支援(介護予防を含む)。この区分は、令和7年3月31日まで条件なしで減算を適用しないとされていました。
- 「非常災害に関する具体的計画」とは:解釈通知は、消防法施行規則第3条に規定する消防計画(これに準ずる計画を含む)と、風水害・地震等の災害に対処するための計画をいうとしています。経過措置が終わった今は、指針や非常災害の計画があることは、減算が適用されない条件になりません。
どの月から、いつまで減算されるか(さかのぼりあり)
留意事項通知は、減算の期間を「基準を満たさない事実が生じた場合に、その翌月(基準を満たさない事実が生じた日が月の初日である場合は当該月)から基準に満たない状況が解消されるに至った月まで」とし、事業所の利用者全員について所定単位数から減算するとしています(訪問介護の例。特養などの施設は入所者全員)。
運営指導などで見つかった場合について、国のQ&A 問166 は、発見した時点ではなく「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡及して減算を適用するとしています。例として、通所介護事業所で令和7年10月の運営指導で未策定が判明した場合(かつ、指針と非常災害の具体的計画も策定していない場合)は令和6年4月から、訪問介護事業所で同じく令和7年10月に判明した場合は令和7年4月から、減算の対象になると示しています。
同じQ&Aで、高齢者虐待防止措置未実施減算はさかのぼらず、発見した日の属する月を「事実が生じた月」とするとされています(問168)。BCPの減算はこれと扱いが違い、さかのぼって適用されます。
「策定済み」と言える計画の中身:解釈通知が示す項目
解釈通知は、業務継続計画に次の項目等を記載するよう求めています。各項目の内容は、厚生労働省の「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」と「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン」を参照し、想定される災害は地域によって異なるため、項目は実態に応じて設定する、としています。
- 感染症に係る業務継続計画:平時からの備え(体制構築・整備、感染症防止に向けた取組の実施、備蓄品の確保等)、初動対応、感染拡大防止体制の確立(保健所との連携、濃厚接触者への対応、関係者との情報共有等)。
- 災害に係る業務継続計画:平常時の対応(建物・設備の安全対策、電気・水道等のライフラインが停止した場合の対策、必要品の備蓄等)、緊急時の対応(業務継続計画発動基準、対応体制等)、他施設及び地域との連携。
- 1つの文書にまとめてもよい:「感染症及び災害の業務継続計画を一体的に策定することを妨げるものではない」とされています。1冊にまとめる場合も、感染症と災害の両方の項目が入っているかを確かめます。
- 他の事業者と連携して作ってもよい:策定・研修・訓練は、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えないとされています。改定資料も、事業所間の連携により計画策定を行って差し支えない旨を周知するとしています。
- ひな形:厚生労働省の「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援」のページに、感染症と自然災害のガイドライン、ひな形(感染症は入所系・通所系・訪問系)、BCPの作り方と机上訓練の解説動画が掲載されています。
研修・訓練・見直しは減算の要件ではないが、運営基準の義務
問164 は、令和3年度改定で計画の策定と同様に義務づけられた周知・研修・訓練・定期的な見直しの実施の有無は、業務継続計画未策定減算の算定要件ではないとしています。一方で、運営基準第30条の2第2項・第3項の義務はそのまま残り、国の運営指導マニュアルの確認文書には「業務継続計画」「研修の計画及び実績がわかるもの」「訓練の計画及び実績がわかるもの」が並んでいます(訪問介護の例)。
研修と訓練の回数は、各サービスの解釈通知に書かれています。
- 施設・居住系(特養・地域密着型特養・老健・介護医療院・特定施設・地域密着型特定施設・グループホーム):研修・訓練とも年2回以上。新規採用時には別に研修を実施すること。
- その他のサービス(訪問系・通所系・短期入所系・多機能系・居宅介護支援・福祉用具貸与など):研修・訓練とも年1回以上。新規採用時には別に研修を実施することが望ましい。
- 研修の中身:感染症と災害の業務継続計画の具体的内容を職員間で共有し、平常時の対応の必要性や緊急時の対応への理解を促すもの。研修の実施内容は記録します。
- 訓練の中身:計画に基づく役割分担の確認、感染症や災害が起きた場合に実践するケアの演習など。机上を含め手法は問わず、机上と実地を適切に組み合わせて行うのが適切とされています。
- まとめて行える組み合わせ:感染症のBCPの研修・訓練は、感染症の予防及びまん延の防止のための研修・訓練と一体的に実施して差し支えありません。通所介護や特養などの解釈通知は、災害のBCPの訓練を非常災害対策の訓練と一体的に行うことも差し支えないとしています。
- 参加者:全ての従業者が参加できるようにすることが望ましいとされています。
実務の手順:自事業所のBCPを点検する
次の手順は、上の運営基準・解釈通知・Q&Aの求めを、点検の順に並べたものです。訓練の具体的な進め方は「介護のBCP訓練のやり方」で扱っています。
- 1. 2種類の中身がそろっているか:感染症と災害のそれぞれについて、第6節の項目が書かれているかを確かめます。1冊にまとめていても、片方の項目が欠けていないかを見ます。
- 2. 自事業所の実態に合っているか:発動基準・対応体制・連絡先・備蓄などが、今の職員体制と地域の災害の想定に合っているかを確かめます。
- 3. 計画に沿った備えがあるか:計画で決めた備蓄や連絡体制が実際に用意されているかを確かめます。問164 は「当該業務継続計画に従い必要な措置が講じられていない場合」も条件に挙げています。何をもって措置が講じられているとみるかは、指定権者に確認するのが確実です。
- 4. 研修・訓練を年間計画に入れる:施設・居住系は年2回以上、その他は年1回以上。感染症対策の研修・訓練や非常災害の訓練と同じ月にそろえると、一度の機会で両方を行えます。
- 5. 記録を残す:研修・訓練の日時・内容・参加者を記録し、計画を見直した日と変更点も残します。運営指導の確認文書は、研修・訓練の「計画及び実績」です。
- 6. 未策定や欠けている項目が見つかったら:速やかに策定・補完します。Q&A 問166 のとおり減算はさかのぼって適用される扱いのため、請求や届出の取扱いは指定権者(都道府県・市町村)に確認してください。
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この記事で確認した一次資料
2026年10月26日に、下の「出典」に挙げた運営基準(e-Gov 法令検索)、報酬の告示(令和6年厚生労働省告示第86号)、介護報酬の算定構造(令和6年4月改定)、令和6年度改定の改定事項と主な事項、留意事項通知の改正(老企第36号・老企第40号)、国のQ&A(令和6年度改定 Vol.1 問164〜166・168)、解釈通知の改正(介護保険最新情報 Vol.934)、運営指導マニュアルの確認文書、厚生労働省のBCP作成支援のページを取得し、該当箇所を確かめました。最終的な取扱いは指定権者(都道府県・市町村)にご確認ください。
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出典(一次資料)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準等の一部を改正する告示」(令和6年厚生労働省告示第86号・PDF)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」(PDF)
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造」(令和6年4月改定・PDF)
- 介護保険最新情報 Vol.1225(令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)・令和6年3月15日)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(老企第36号)令和6年度改正の新旧対照表(別紙1・抄)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(老企第40号)令和6年度改正の新旧対照表(別紙2・抄)
- 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年度改定・解釈通知改正)
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」別添 確認項目及び確認文書(令和6年7月改訂・PDF)
- 厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」
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