訪問介護の法定研修一覧 2026|登録ヘルパーも対象?年何回・全員集まれない時の実施と記録・減算
更新日:2026-10-22・約12分で読めます
訪問介護の法定研修で、運営基準が「研修の実施」を義務づけているのは虐待防止・感染症・業務継続計画(BCP)の3つで、感染症とBCPは訓練も年1回以上必要です。登録ヘルパーも対象か(解釈通知の文言)、年何回か、全員を集められない事業所の進め方と記録、身体拘束の記録、未実施時の減算と遡り、認知症介護基礎研修が対象外であること、2026年10月1日からのカスハラ対策を、一次資料の原文で整理しました。
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まず結論:研修の義務は虐待防止・感染症・BCPの3つ。登録ヘルパーも対象
訪問介護の運営基準(平成11年厚生省令第37号)で「研修を実施する」ことが義務づけられているのは、①高齢者虐待防止(第37条の2)、②感染症の予防とまん延防止(第31条第3項)、③業務継続計画=BCP(第30条の2)の3つです。感染症とBCPは訓練も義務で、回数はいずれも年1回以上です(解釈通知)。このほか、④職場のハラスメント対策の措置(第30条第4項)と⑤研修の機会の確保(第30条第3項)も義務です。
研修の対象は「訪問介護員等」で常勤・非常勤の区別はなく、解釈通知は感染症とBCPの研修について「登録訪問介護員等を含めて」と明記しています。一方、認知症介護基礎研修と、身体的拘束・事故防止の委員会や研修は、訪問介護には義務づけられていません(身体的拘束と事故の記録は義務です)。
未実施が減算につながるのは2つです。虐待防止は、研修を含む4つの措置のどれかが欠けると所定単位数の1%減算で、さかのぼりません。BCPは計画が未策定だと1%減算で、訪問介護では令和7年4月までさかのぼります。
登録ヘルパーも対象?省令は「訪問介護員等に対し」、解釈通知は「登録訪問介護員等を含めて」
運営基準は、虐待防止・感染症・BCPの研修をいずれも「訪問介護員等に対し」実施すると定めています。訪問介護員等は「指定訪問介護の提供に当たる介護福祉士又は法第八条第二項に規定する政令で定める者」(第5条第1項)で、常勤・非常勤・登録型といった雇用の形で分ける規定はありません。
解釈通知(老企第25号。令和3年度の改正=介護保険最新情報 Vol.934)は、次のように登録ヘルパーを名指ししています。この文言は令和6年度の改正後も変わっていません。
- BCP(第30条の2):「当該業務継続計画に従い、登録訪問介護員等を含めて、訪問介護員等その他の従業者に対して、必要な研修及び訓練(シミュレーション)を実施しなければならない」。また、研修・訓練は「全ての従業者が参加できるようにすることが望ましい」。
- 感染症(第31条第3項):「登録訪問介護員等を含めて、訪問介護員等その他の従業者に対する」研修の内容を定め、年1回以上の定期的な教育と実施内容の記録を求めています。
- 虐待防止(第37条の2):解釈通知に登録ヘルパーの名指しはありませんが、省令が「訪問介護員等に対し」としており、登録ヘルパーを除く根拠は見当たりません(確認した範囲)。
- 運営指導:厚生労働省の確認項目一覧は、訪問介護の「勤務体制の確保等」の確認文書に「雇用の形態(常勤・非常勤)がわかるもの」と「研修の計画及び実績がわかるもの」を挙げています。
年何回?訪問介護の研修・訓練の早見表(条文・回数・新規採用時・減算)
条番号は平成11年厚生省令第37号、回数と新規採用時の扱いは解釈通知(Vol.934)、減算は令和6年度介護報酬改定によります。虐待防止・感染症・BCPは令和3年度改定で義務化され、3年の経過措置を経て令和6年4月から完全義務です。なお、訪問介護には非常災害対策の条文(通所介護の第103条)がなく、災害への備えはBCPで行います。
- 高齢者虐待防止【研修が義務】第37条の2:委員会・指針・研修・担当者の4つ。研修は年1回以上と、新規採用時に必ず。4つのどれかが欠けると所定単位数の1%減算。
- 感染症の予防とまん延防止【研修・訓練が義務】第31条第3項:委員会(おおむね6か月に1回以上)・指針・研修・訓練。研修・訓練は各年1回以上で、新規採用時の研修は「望ましい」。減算なし。
- 業務継続計画(BCP)【研修・訓練が義務】第30条の2:感染症と災害の計画の策定、周知、研修・訓練(各年1回以上)、定期的な見直し。新規採用時は別に研修するのが「望ましい」。感染症のBCPの研修・訓練は、感染症の研修・訓練と一体で実施してよい。計画の未策定は所定単位数の1%減算。
- ハラスメント対策【措置義務】第30条第4項:職場のセクハラ・パワハラを防ぐための方針の明確化等の措置。研修は周知・啓発の手段の一つで、回数の定めなし。
- 研修の機会の確保【義務】第30条第3項:訪問介護員等の資質向上のため研修の機会を確保。回数の定めはなく、倫理・法令遵守や接遇の研修はこの枠で年間計画に入れます。
- 身体的拘束等【記録が義務・研修は義務ではない】第23条第3号・第4号:緊急やむを得ない場合を除き禁止。行う場合は記録が必要(後の節)。委員会・指針・研修・減算の規定なし。
- 認知症介護基礎研修【対象外】:訪問介護の第30条第3項には、通所介護(第101条第3項)や訪問入浴介護(第53条の2第3項)にある「受講させるために必要な措置」の文言がありません。
全員を集められない時(1):研修のやり方について一次資料で確認できたこと
登録ヘルパーが多い事業所では、全員が同じ日時に集まるのは簡単ではありません。確認した一次資料には、研修を全員一斉の集合形式で行うよう求める規定は見当たりませんでした。研修の方法について確認できたのは次の点です。
- 虐待防止:「研修の実施は、事業所内での研修で差し支えない」(解釈通知)。小規模な事業所には、法人内の複数事業所や他の委員会との合同開催、都道府県・市町村などの研修会への参加、外部講師を活用した複数の小規模事業所の合同開催が例示されています(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問170)。
- 感染症:厚生労働省の研修教材を活用するなど「事業所内で行うものでも差し支えなく、当該事業所の実態に応じ行うこと」(解釈通知)。
- BCP・感染症の訓練:「机上を含めその実施手法は問わない」(机上と実地の組み合わせが適切)。BCPの研修・訓練は、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えない(解釈通知)。
- 記録:研修は実施内容を記録します(解釈通知)。合同で開催する場合は「参加した各事業所の従事者と実施したことの内容等が記録で確認できるように」しておきます(問170)。
全員を集められない時(2):分けて実施する場合の進め方と、出席簿の残し方
全員を一度に集められない場合は、集まれる人で事業所内研修を行い、来られなかった人には同じ内容を日を分けて少人数ずつ(必要なら1人ずつ)行う、外部の研修会に参加させる、といった組み合わせが現実的です。ただし、日を分けて行う方法を名指しで認めた一次資料は確認できませんでした。迷う場合は指定権者(都道府県・市町村)に確認してください。
どの方法でも大事なのは、誰が・いつ・何を受けたかが記録で確かめられることです。運営指導の確認文書は「研修の計画及び実績がわかるもの」で、公表制度の調査でも研修の記録は少なくとも題目・開催日・出席者・実施内容の概要が確認されます。日を分けた場合は、回ごとに実施日・講師・資料・出席者を残し、従業者名簿と突き合わせて全員分そろっているか確かめると、受講漏れが見つけやすくなります。
このサイトでは、研修ごとの読み上げ用レジュメ・確認テスト・実施記録様式・出席簿を無料で表示・印刷できます。毎回同じレジュメを読み上げ、確認テストに答えてもらい、出席簿に日付と氏名を残す形にすれば、1人ずつ行っても内容と記録をそろえられます。事業所名や実施日を入れて編集できる Word / Excel 版は、研修別の単品と、全11研修の年間運用パック(年間計画表つき)があります(このすぐ下の案内から)。
研修の義務はなくても記録が要るもの:身体的拘束(第23条)と事故(第37条)
身体的拘束等は、令和6年度の改正で訪問介護の基準に規定が入りました。第23条第3号は、利用者本人または他の利用者等の生命・身体を守るため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならないと定め、第4号は、行う場合に「その態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由」を記録するよう定めています。解釈通知は、切迫性・非代替性・一時性の3要件の確認等の手続きを組織等として極めて慎重に行い、その具体的な内容を記録しておくことを求めています。記録は完結の日から2年間の保存が義務です(第39条第2項)。
訪問介護の基準には、身体的拘束等の委員会・指針・研修や減算の規定はありませんが、運営指導では3要件を全て満たしているか、態様・時間・心身の状況・理由を記録しているかが確認されます。
事故については、第37条で、市町村・利用者の家族・居宅介護支援事業者等への連絡と必要な措置、事故の状況と処置の記録、賠償すべき事故の速やかな損害賠償が義務です(記録は2年間保存)。訪問介護の第37条に、委員会・研修・担当者の定めはありません。
未実施だとどうなる?減算は2つ。虐待防止はさかのぼらず、BCPは令和7年4月までさかのぼる
令和6年度の介護報酬改定で新設された2つの減算は、どちらも訪問介護が対象です。感染症の研修・訓練、ハラスメント対策、研修機会の確保は、確認した一次資料の範囲では減算はありませんが、運営指導の確認項目で、守れていなければ運営基準違反として指摘の対象になります。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算(所定単位数の1%):委員会の開催・指針の整備・研修の定期的な実施・担当者の配置のうち一つでも講じていなければ、虐待が起きていなくても減算の対象(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問167)。
- 虐待防止の減算の始まり:運営指導などで把握した事実が過去のものでも、さかのぼっては適用されず、発見した日の属する月が「事実が生じた月」になります(問168)。減算はその翌月から始まり、事実が生じた月から3か月以降に、改善計画にもとづく改善が認められた月まで続きます(問169)。
- 業務継続計画未策定減算(訪問介護は所定単位数の1%):感染症・災害のどちらか、または両方の計画が未策定で、計画に従った措置も講じていない場合が対象。BCPの周知・研修・訓練・見直しをしているかどうかは、この減算の要件ではありません(問164)。
- BCPの減算の施行とさかのぼり:訪問介護の施行は令和7年4月です(問165)。減算は運営指導で見つかった時点ではなく「基準を満たさない事実が生じた時点」までさかのぼり、Q&Aは、訪問介護事業所で令和7年10月の運営指導で未策定が判明した場合、令和7年4月から減算の対象になる例を示しています(問166)。
2026年10月1日からカスハラ対策が義務に:1人で訪問する現場で決めておくこと
2026年(令和8年)10月1日から、改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント対策が全ての事業主の措置義務になりました。厚生労働省のリーフレットは、方針の明確化と周知・啓発、あらかじめ定めた対処の内容の周知、相談窓口の設置、事後の迅速かつ適切な対応などを講ずべき措置とし、許容範囲を超える言動の例に、身体的な攻撃や暴言のほか、不退去・居座り・監禁といった拘束的な言動を挙げています。
訪問介護は、利用者の自宅でヘルパーが1人で対応する場面が多いサービスです。リーフレットは、あらかじめ定める対処の例として、管理監督者にその場の対応の方針について指示を仰ぐ、可能な限り労働者を一人で対応させない、犯罪に該当し得る言動は警察へ通報する、などを挙げています。厚生労働省のサイトに掲載されている「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」(令和4年3月改訂)も、訪問系サービスについて、事業所と電話連絡をとれる体制、警報機付きブザーの支給、管理者等の同行や複数人の派遣の検討などを例示しています。
こうした手順を事業所のルールとして決め、登録ヘルパーを含む全員に研修で周知しておくと、措置の「周知・啓発」を記録で示せます(回数の定めはなし)。セクハラ・パワハラ対策(第30条第4項)とあわせて年間計画に入れておくと漏れを防げます。
情報公表の調査票(訪問介護)と運営指導で見られる記録、この記事で確認した一次資料
介護サービス情報公表制度の令和8年度「運営情報調査票(訪問介護)」は、研修の記録が「あり」か「なし」かを答える様式です。通所介護の調査票と比べると、訪問介護には「訪問介護員の接遇に関する研修の実施記録」の項目があり(接遇の項目は夜間対応型訪問介護・訪問入浴介護・定期巡回の調査票にもあります)、非常災害時の研修・訓練の項目はありません。新任・現任の研修計画と実施記録は「常勤及び非常勤の全ての」従業者が対象です。認知症ケアや身体的拘束などの研修記録の項目は、記録の有無を報告するもので、運営基準の研修義務とは限りません(施行通知も「事業者の取組の良し悪しを評価する仕組みではない」としています)。
公表制度の調査では、研修は自ら実施するものか外部の研修に参加させるものかを問いません(施行通知)。運営指導の確認項目一覧では、虐待防止・BCP・研修機会の確保の「研修の計画及び実績がわかるもの」、感染症の研修・訓練の実施状況、BCPの訓練の計画及び実績、身体的拘束等の記録などが確認文書です。
本文の条番号・回数・減算・Q&Aの問番号・調査票の項目は、次の一次資料の原文で2026年10月22日に確認しました(リンクは記事末尾の「出典(一次資料)」)。法令・介護報酬は改定されます。最終的な適用は指定権者(都道府県・市区町村)へご確認ください。
- 平成11年厚生省令第37号:第5条第1項、第23条第3号・第4号、第30条第3項・第4項、第30条の2、第31条第3項、第37条、第37条の2、第39条第2項(比較に第53条の2第3項・第101条第3項)。
- 介護保険最新情報 Vol.934(解釈通知の令和3年度改正):登録訪問介護員等を含めた研修、回数、新規採用時、研修・訓練の方法。
- 介護保険最新情報 Vol.1213 と老企第25号の新旧対照表(令和6年度改正):身体的拘束等の記録と3要件、BCP・感染症の記述の維持。
- 令和6年度介護報酬改定の主な事項:2つの減算の率と経過措置。
- 令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)問164〜問170:減算の要件・施行時期・さかのぼり、小規模事業所の合同開催と記録。
- 公表制度の施行通知(最終改正 令和8年8月14日)と令和8年度の運営情報調査票、運営指導マニュアルの確認項目一覧。
- 厚生労働省のカスハラ対策リーフレット(令和8年10月1日施行)と「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」。
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出典(一次資料)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
- 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年度改定・解釈通知改正)
- 介護保険最新情報 Vol.1213(令和6年度改定・解釈通知等改正)
- 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(老企第25号)令和6年度改正の新旧対照表(別紙10・抄)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」(PDF)
- 介護保険最新情報 Vol.1225(令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)・令和6年3月15日)
- 厚生労働省老健局「「介護サービス情報の公表」制度の施行について」(老振発第0331007号・最終改正 令和8年8月14日 老認発0814第1号)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表制度」(令和8年度の別添1〜7=別添2 調査票 運営情報〔訪問介護〕を収録・2026年10月22日確認)
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」別添 確認項目及び確認文書(令和6年7月改訂・PDF)
- 厚生労働省リーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」
- 厚生労働省「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」
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