介護の虐待防止研修は何をすればいい?年何回・研修で扱う内容・新規採用時と記録 2026(レジュメ無料)
更新日:2026-10-26・約10分で読めます
高齢者虐待防止の研修は、すべての介護サービスの義務です。運営基準(省令)は「定期的に実施すること」とだけ定め、回数と中身は国の解釈通知が示しています。回数は施設系・居住系が年2回以上、訪問系・通所系などは年1回以上で、どのサービスも新規採用時には必ず行うことが重要とされ、実施内容の記録が必要です。研修で扱う内容(法律が定める5つの虐待・通報義務・自事業所の指針)、進め方、運営指導で見られる書類を、省令・解釈通知・国のQ&A・国の調査の原文で整理しました(2026年10月時点)。
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まず結論:研修は「定期的に」と「新規採用時」。中身は基礎知識と自事業所の指針
運営基準(厚生労働省令)は、すべての介護サービスの事業者に、虐待の発生または再発を防ぐため、①委員会を定期的に開いて結果を従業者に周知する、②指針を整備する、③従業者に研修を定期的に行う、④これらを担当する者を置く、の4つの措置を義務づけています。令和3年度の介護報酬改定で全サービスに設けられ、3年間の経過措置(努力義務)を経て、令和6年4月1日から義務です。
研修について運営基準が書いているのは「定期的に実施すること」だけです。回数・内容・記録の考え方は、各サービスの解釈通知に書かれています。
- 回数:施設系・居住系(特養・老健・介護医療院・特定施設・グループホームなど)は年2回以上。訪問系・通所系・短期入所系・多機能系・居宅介護支援・福祉用具貸与などは年1回以上。
- 新規採用時:どのサービスも「必ず」行うことが重要とされています。
- 内容:虐待の防止に関する基礎的な知識を広めることと、自事業所の指針に基づいて虐待の防止を徹底すること。
- やり方:指針に基づく研修プログラムを作ります。事業所内の研修で差し支えありません。
- 記録:研修の実施内容を記録することが必要です。
- 研修だけでは足りない:委員会・指針・担当者を含む4つの措置のどれか一つでも欠けると、所定単位数の1%が減算されます。
根拠:運営基準と解釈通知の原文
訪問介護の運営基準(平成11年厚生省令第37号)第37条の2は「虐待の発生又はその再発を防止するため、次の各号に掲げる措置を講じなければならない」とし、第3号で「訪問介護員等に対し、虐待の防止のための研修を定期的に実施すること」を求めています。特養(平成11年厚生省令第39号)は第35条の2、居宅介護支援(平成11年厚生省令第38号)は第27条の2、地域密着型サービス(平成18年厚生労働省令第34号)は第3条の38の2に同じ規定があり、ほかのサービスはこれらを準用しています。
同じ省令の一般原則(第3条第3項)は、事業者に「利用者の人権の擁護、虐待の防止等のため、必要な体制の整備を行うとともに、その従業者に対し、研修を実施する等の措置を講じなければならない」としています。運営規程にも「虐待の防止のための措置に関する事項」を定めます(訪問介護は第29条第7号)。解釈通知は、ここに書く内容を、責任者の選定、従業者への研修方法や研修計画などの組織内の体制と、虐待等が起きた場合の対応方法などとしています。
解釈通知(令和3年度改正)は、研修の内容を「虐待等の防止に関する基礎的内容等の適切な知識を普及・啓発するものであるとともに、当該指定訪問介護事業所における指針に基づき、虐待の防止の徹底を行うもの」としています。そのうえで「指針に基づいた研修プログラムを作成し、定期的な研修(年1回以上)を実施するとともに、新規採用時には必ず虐待の防止のための研修を実施することが重要である」「研修の実施内容についても記録することが必要である」「研修の実施は、事業所内での研修で差し支えない」と書いています。特養・老健・介護医療院・特定施設・グループホームの解釈通知は、同じ文で回数が「年2回以上」です。
法律にも根拠があります。高齢者虐待防止法(平成17年法律第124号)第20条は、養介護施設の設置者と養介護事業を行う者に、従事者の研修の実施や、利用者と家族からの苦情を処理する体制の整備などの措置を講じるよう求めています。
研修は年何回?サービス別の回数
令和7年1月20日の介護保険最新情報 Vol.1345(問1)は、各サービスの解釈通知を参照するよう求めたうえで、研修の回数を次のように示しています。
- 年2回以上:特定施設入居者生活介護、認知症対応型共同生活介護(グループホーム)、地域密着型特定施設入居者生活介護、地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護、介護老人福祉施設、介護老人保健施設、介護医療院(介護予防を含む)。
- 年1回以上:訪問介護、訪問入浴介護、訪問看護、訪問リハビリテーション、通所介護、通所リハビリテーション、短期入所生活介護、短期入所療養介護、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、夜間対応型訪問介護、地域密着型通所介護、認知症対応型通所介護、小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護、居宅介護支援、介護予防支援(介護予防を含む)。
- 福祉用具貸与・特定福祉用具販売・居宅療養管理指導:Vol.1345 の問の対象からは外れていますが、解釈通知はいずれも「訪問介護と同様」としており、年1回以上です。
- どのサービスも、定期の研修とは別に、新規採用時には必ず行うことが重要とされています。
研修で扱う内容:何を教えればよいか
解釈通知が研修に求めているのは、①虐待の防止に関する基礎的な知識を広めること、②自事業所の指針に基づいて防止を徹底すること、の2つです。①は法律が定める虐待の中身と通報の決まり、②は自事業所の指針と委員会で決めたことが中心になります。
- 法律が定める5つの虐待(高齢者虐待防止法第2条第5項):身体的虐待(身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行)、介護・世話の放棄・放任(著しい減食や長時間の放置など、職務上の義務を著しく怠ること)、心理的虐待(著しい暴言や著しく拒絶的な対応など)、性的虐待(わいせつな行為をすること・させること)、経済的虐待(財産を不当に処分することなど)。対象は施設だけでなく、居宅サービスや居宅介護支援などの従事者も含みます。
- 見つけたときの通報義務(第21条):従事者は、自分の働く施設・事業所で従事者による虐待を受けたと思われる高齢者を見つけたら、速やかに市町村に通報しなければなりません。守秘義務の規定は通報を妨げるものと解釈してはならず(虚偽・過失によるものを除く)、通報したことを理由に解雇その他の不利益な取扱いを受けません。
- 早く気づくこと:解釈通知は、従業者は虐待やセルフ・ネグレクトなど虐待に準ずる事案を発見しやすい立場にあるとし、相談体制や市町村の通報窓口の周知などを望ましいとしています。
- 自事業所の指針の読み合わせ:解釈通知が指針に盛り込むとする項目は、基本的考え方、委員会などの組織、研修の基本方針、虐待等が起きた場合の対応方法、相談・報告体制、成年後見制度の利用支援、苦情解決の方法、利用者等が指針を閲覧できるようにすること、などです。研修で、自事業所では「誰に・どう報告するか」まで確かめます。
- 委員会で決めたことの周知:解釈通知は、委員会で得た結果(事業所の体制や再発防止策など)を従業者に周知徹底する必要があるとしています。研修はその場にもなります。
国の調査から:虐待の要因の最多は「知識・意識の不足」
厚生労働省の令和6年度の調査結果では、介護施設・事業所の従事者等による虐待と判断された件数は1,220件(前年度1,123件)、市町村への相談・通報は3,633件でした。
虐待の発生要因(複数回答)は、「職員の虐待や権利擁護、身体拘束に関する知識・意識の不足」が926件(75.9%)で最も多く、「職員の倫理観・理念の欠如」64.3%、「職員のストレス・感情コントロール」62.5%、「職員の性格や資質の問題」62.0%、「職員の指導管理体制が不十分」61.9%と続きます。被虐待高齢者2,248人のうち、身体拘束ありは495人(22.0%)でした。
一方、虐待の事実が認められた施設・事業所の取組状況を見ると、「職員に対する虐待防止に関する研修の実施」が999件(81.9%)でした。研修を行っていた施設・事業所でも虐待が起きていることがわかります。解釈通知が研修に求めているのは、回数だけでなく、基礎知識を広めることと自事業所の指針に基づく徹底です。
実務の手順:年間計画から記録まで
次の手順は、上の省令・解釈通知・Q&Aの求めを、作業の順に並べたものです。研修の具体的な時間割は「高齢者虐待防止研修、60分の進め方」で扱っています。
- 1. 年間計画に回数分を入れる:施設系・居住系は年2回以上、それ以外は年1回以上。委員会の開催月と近づけると、委員会で決めたことをすぐ研修で周知できます。
- 2. 指針から研修プログラムを作る:基礎知識(5つの虐待・通報義務)と、自事業所の指針(対応方法・相談・報告体制)を両方入れます。
- 3. 実施する:事業所内の研修で差し支えありません。外部講師は必須ではありません。
- 4. 新規採用時:入職の手続きに研修を組み込み、その場で行って記録します。年度の途中の採用者が漏れやすいところです。
- 5. 欠席者:別の日に同じ内容で行い、その記録も残します。
- 6. 記録を残す:実施日・テーマ・講師・使った資料・参加者と出席簿。理解度の確認(確認テストなど)を行ったなら、その結果も一緒に保管します。
- 職員が少ない事業所:国のQ&A(令和6年度改定 Vol.1 問170)は、規模の大小に関わりなく研修を定期的に行うよう求め、法人内の複数事業所や他の委員会との合同開催、都道府県や市町村などが行う研修会への参加、複数の小規模事業所が外部講師を招いての合同開催などを例に挙げています。合同で行う場合は、参加した各事業所の従事者と実施した内容が記録で確かめられるようにしておきます。
運営指導で見られる書類
国の運営指導マニュアルの「確認項目及び確認文書」は、虐待の防止について、委員会の定期開催と結果の周知、指針の整備、研修の定期実施、担当者の配置を確認項目とし、確認文書に次の4つを挙げています(訪問介護の例)。
- 虐待の防止のための対策を検討する委員会の開催状況及び結果がわかるもの
- 虐待の防止のための指針
- 虐待の防止のための研修の計画及び実績がわかるもの
- 担当者を置いていることがわかるもの
運営指導の巡回で観察されること
同じマニュアルは、運営指導の巡回の際に利用者の様子や従業者の態度を見て、虐待やその予兆がないか観察するよう求めています。また、介護保険法では高齢者虐待は人格尊重義務違反に当たり、状況によっては指定取消などの行政処分となる可能性もあるとしています。
しないとどうなる:4つの措置のどれかが欠ければ1%の減算
令和6年度の介護報酬改定で、高齢者虐待防止措置未実施減算(所定単位数の100分の1)が新設されました。対象は居宅療養管理指導と特定福祉用具販売を除くサービスで、福祉用具貸与は令和9年4月1日から適用されます。
国のQ&Aは、虐待が起きていなくても4つの措置の一つでも講じていなければ減算になるとし(問167)、運営指導などで見つかった場合は過去にさかのぼらず、見つかった月が「事実が生じた月」になるとしています(問168)。研修の回数が足りない場合も、この4つの措置が欠けた状態に当たります。減算の期間や改善計画の手続きは「高齢者虐待防止措置未実施減算とは?」で詳しく説明しています。
無料で使えるレジュメ・確認テスト・記録様式
本サイトの「高齢者虐待防止研修キット」には、そのまま読み上げて実施できる約30分のレジュメ、確認テスト10問(解答・解説つき)、実施記録様式、出席簿がそろっています。すべて登録不要・無料で、入力内容はお使いのブラウザ内にのみ保存され、外部には送信されません。印刷(PDF保存)してそのまま保管できます。自事業所の指針の読み合わせとあわせて使ってください。
この記事で確認した一次資料
2026年10月26日に、下の「出典」に挙げた省令・法律(e-Gov 法令検索)、解釈通知の改正(介護保険最新情報 Vol.934)、国のQ&A(令和6年度改定 Vol.1・介護保険最新情報 Vol.1345)、令和3年度・令和6年度の改定事項と算定構造、運営指導マニュアルと確認文書、令和6年度の高齢者虐待の調査結果を取得し、該当箇所を確かめました。最終的な取扱いは指定権者(都道府県・市町村)にご確認ください。
この記事を書いたチームは、note でも介護の仕事で考えたことを書いています。note をフォローする
出典(一次資料)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)
- 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年度改定・解釈通知改正)
- 厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)
- 高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(平成17年法律第124号)
- 介護保険最新情報 Vol.1345(令和6年度改定 Q&A)
- 厚生労働省「令和6年度『高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律』に基づく対応状況等に関する調査結果」(資料1・PDF)
- 介護保険最新情報 Vol.1225(令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)・令和6年3月15日)
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」別添 確認項目及び確認文書(令和6年7月改訂・PDF)
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」(令和6年7月改訂)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造」(令和6年4月改定・PDF)
【免責事項】本キットは研修実施の参考資料です。法令・運営基準・介護報酬の内容は改定されることがあります。実際の運用にあたっての最終確認は、指定権者(都道府県・市区町村等の自治体)へのご確認をおすすめします。本キットの利用により生じた損害について、当社の損害賠償責任は、故意・重過失を除き購入代金の額を上限とします。