訪問看護の研修 必須項目 2026|年何回・新規採用時・減算の始まりとさかのぼり(介護予防訪問看護を含む)
更新日:2026-10-27・約27分で読めます
訪問看護(介護予防訪問看護を含む)で、運営基準が研修の実施を義務づけているのは、高齢者虐待防止・感染症の予防とまん延防止・業務継続計画(BCP)の3分野です。回数はいずれも年1回以上で、感染症とBCPは訓練も年1回以上です。身体的拘束等は「禁止と記録」、ハラスメントは「措置」の義務で、研修そのものの義務ではありません。認知症介護基礎研修は対象外です。減算は、高齢者虐待防止措置未実施減算と業務継続計画未策定減算がどちらも所定単位数の1%で、BCPの減算は令和7年4月から適用され、事実が生じた時点までさかのぼります。条番号・回数・新規採用時の扱い・減算の始まりを、省令・解釈通知・留意事項通知・国のQ&Aの原文で整理しました(2026年10月時点)。
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まず結論:研修の義務は虐待防止・感染症・BCPの3分野で年1回以上。減算は虐待防止とBCPの2つ
訪問看護の運営基準は、平成11年厚生省令第37号の第4章(第59条から第74条)です。第74条が、訪問介護の規定(第30条・第30条の2・第31条・第37条の2など)を、「訪問介護員等」を「看護師等」に読み替えて準用しています。この省令で「研修を定期的に実施する」と書かれているのは、①高齢者虐待防止(第37条の2)、②感染症の予防とまん延の防止(第31条第3項)、③業務継続計画(BCP。第30条の2第2項)の3分野です。条文には「定期的に」とあるだけで、年1回以上という回数は解釈通知(老企第25号)が示しています。感染症とBCPは、研修に加えて訓練(シミュレーション)も年1回以上です。
介護予防訪問看護は、別の省令(平成18年厚生労働省令第35号)が同じ3分野を定めています。国のQ&A(介護保険最新情報 Vol.1345)は、虐待防止の研修の回数を、「(介護予防)訪問看護」を含む訪問介護・通所介護などの区分で「年に1回以上」と明記しています。
減算は2つあります。高齢者虐待防止措置未実施減算と業務継続計画未策定減算で、どちらも所定単位数の1%です(令和6年度改定の改定事項)。BCPの減算は、国のQ&A(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問165)が訪問看護・介護予防訪問看護の施行時期を令和7年4月とし、令和7年3月31日までは適用しない経過措置でした。BCPの減算は、運営指導で見つかった時点ではなく、基準を満たさない事実が生じた時点までさかのぼります(問166)。一方、虐待防止の減算はさかのぼらず、発見した日の属する月が「事実が生じた月」になります(問168)。
減算が2つだけでも、ほかの義務がないわけではありません。感染症の研修・訓練そのものには報酬の減算はありませんが、運営基準の義務なので、していなければ指導の対象になります。研修の義務ではないものも、並べて押さえておくと迷いません。身体的拘束等は「原則禁止と記録」だけが義務で、委員会・指針・研修の義務はありません。事故防止の委員会・研修の規定も、訪問看護の運営基準にはありません。認知症介護基礎研修を受講させる措置も、訪問看護には条文がありません。本記事は介護保険の指定基準にもとづく整理で、医療保険の訪問看護との関係は、後ろの節で研修義務の範囲だけ触れます。
早見表:訪問看護の条番号・回数・新規採用時・減算
条番号は平成11年厚生省令第37号(居宅サービス基準)です。介護予防訪問看護は平成18年厚生労働省令第35号(予防基準)で、条番号を「/」の後に併記します。予防基準の第74条は、虐待防止・感染症・BCP・事故発生時の対応・秘密保持などを、介護予防訪問入浴介護の規定(第53条の2の2から第53条の11)から準用していて、勤務体制の確保等だけは訪問看護独自の第72条の2です。研修の相手は、条文では「看護師等」(看護師その他の指定訪問看護の提供に当たる従業者。第60条)です。虐待防止・感染症・BCPは令和3年度改定で義務化され、令和6年3月31日までは努力義務、令和6年4月1日から義務です(解釈通知)。
- 高齢者虐待防止【研修が義務】第37条の2(第74条で準用)/予防基準第53条の10の2:委員会(定期的に開催)・指針・研修・担当者の4つ。研修は年1回以上と、新規採用時に必ず。4つのどれかが欠けると所定単位数の1%減算(さかのぼらず、発見した月から)。
- 感染症の予防とまん延防止【研修・訓練が義務】第31条第3項(準用)/予防基準第53条の3第3項:委員会(おおむね6か月に1回以上)・指針・研修・訓練。研修・訓練は各年1回以上で、新規採用時の研修は「望ましい」。確認した国の資料の範囲では、研修・訓練の未実施そのものを対象にした減算はありません。
- 業務継続計画(BCP)【研修・訓練が義務】第30条の2(準用)/予防基準第53条の2の2:感染症と災害の計画の策定、従業者への周知、研修・訓練(各年1回以上)、定期的な見直し。新規採用時は別に研修を実施するのが「望ましい」。計画の未策定で所定単位数の1%減算(令和7年4月1日から。事実が生じた時点までさかのぼる)。
- 身体的拘束等【禁止と記録が義務・研修は義務ではない】第68条第3号・第4号/予防基準第76条第8号・第9号:緊急やむを得ない場合を除き禁止。行う場合は態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録し、完結の日から2年間保存。委員会・指針・研修の定めなし。
- ハラスメント対策【措置が義務】第30条第4項(準用)/予防基準第72条の2第4項:就業環境が害されることを防ぐための方針の明確化等の措置。研修は周知・啓発の手段の一つで、回数の定めなし。カスタマーハラスメントは令和8年10月1日から事業主の措置義務。
- 研修の機会の確保【義務】第30条第3項(準用)/予防基準第72条の2第3項:看護師等の資質の向上のために、研修の機会を確保。回数の定めなし。
- 事故発生時の対応【義務】第37条(準用)/予防基準第53条の10:市町村・家族・居宅介護支援事業者等への連絡、必要な措置、記録、賠償。事故防止の委員会・指針・研修の規定は、訪問看護の基準にはありません。
- 認知症介護基礎研修【対象外】:研修の機会の確保を定める第30条第3項に、受講させる措置の記載がありません(通所介護の第101条第3項にはあります)。
根拠:条文は「定期的に」、回数と新規採用時は解釈通知。準用の読み方
省令の研修の条文は、3分野とも「定期的に」としか書いていません。虐待防止は第37条の2第3号が「虐待の防止のための研修を定期的に実施すること」、BCPは第30条の2第2項が「必要な研修及び訓練を定期的に実施しなければならない」、感染症は第31条第3項第3号が「感染症の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練を定期的に実施すること」です。訪問看護は第74条の読み替えで、これらの研修の相手が「看護師等」になります。
回数と新規採用時の扱いは、解釈通知(老企第25号。令和3年度の改正は介護保険最新情報 Vol.934)にあります。訪問看護の項(第3の三・3)は、BCPを「訪問入浴介護と同様」(第3の二・3⑺)、衛生管理等(感染症)を「訪問入浴介護と同様」(同⑻)、虐待の防止を「訪問介護と同様」(第3の一・3(31))として、それぞれの項を参照させています。参照先の書き方は、虐待防止が「定期的な研修(年1回以上)を実施するとともに、新規採用時には必ず虐待の防止のための研修を実施することが重要」、感染症が「定期的な教育(年1回以上)を開催するとともに、新規採用時には感染対策研修を実施することが望ましい」、BCPが「定期的(年1回以上)な教育を開催するとともに、新規採用時には別に研修を実施することが望ましい」です。
令和6年度の改正(Vol.1213)で、訪問看護の項に身体的拘束等の取扱い(第3の三・3⑶④)が加わりました。また、Vol.1345 の問1は、虐待防止の研修の回数を、年2回以上の施設・居住系と、年1回以上の区分に分けて示し、「(介護予防)訪問看護」を年1回以上の区分に挙げています。
介護予防訪問看護の解釈通知で、感染症やBCPの研修の回数を直接書いた箇所は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。条文の構造は居宅の訪問看護と同じ(介護予防訪問入浴介護の規定を準用)ですが、回数の根拠として確認できたのは、虐待防止についてのVol.1345だけです。
研修ごとの原文:委員会・指針・研修・訓練の中身
3分野の中身を、解釈通知の言葉で並べます。虐待防止と感染症の委員会、感染症とBCPの研修・訓練は、事業所に実施が求められるものですが、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えないとされています。
- 虐待防止の委員会:管理者を含む幅広い職種で構成し、構成メンバーの責務と役割分担を明確にして、定期的に開催します。虐待防止の専門家を委員として積極的に活用することが望ましいとされています。他の会議体を設置している場合は、一体的に設置・運営して差し支えありません。テレビ電話装置等を活用して開催できます。虐待等の事案は機微な情報を含むため、従業者への共有は個別の状況に応じて慎重に対応するとされています。
- 虐待防止の指針:事業所における虐待の防止に関する基本的考え方、委員会その他の組織、職員研修の基本方針、発生時の対応方法、相談・報告体制、成年後見制度の利用支援、苦情解決方法、利用者等への閲覧、その他の9項目を盛り込みます。
- 虐待防止の研修:虐待等の防止に関する基礎的内容の普及・啓発と、事業所の指針に基づく虐待防止の徹底を行います。指針に基づく研修プログラムを作成し、定期的な研修(年1回以上)と新規採用時の研修を行い、実施内容を記録します。事業所内での研修で差し支えありません。
- 虐待防止の担当者:委員会・指針・研修を適切に実施するための担当者を置きます。委員会の責任者と同一の従業者が務めることが望ましいとされています。令和6年度の改正で解釈通知の「専任の担当者」は「担当者」に改められ、担当者としての職務に支障がなければ、同じ事業所内の身体的拘束等適正化・感染対策などの担当との兼務や、ほかの事業所・施設等との兼務も差し支えないとされました。
- 感染症の委員会:感染対策の知識を有する者を含む幅広い職種での構成が望ましく、外部の者の参画も望ましいとされています。感染対策担当者を決めておくことが必要で、おおむね6月に1回以上、定期的に開催し、感染症が流行する時期等を勘案して必要に応じて随時開催します。
- 感染症の指針:平常時の対策(事業所内の衛生管理、ケアにかかる感染対策)と、発生時の対応(状況の把握、感染拡大の防止、関係機関との連携、行政等への報告)を定めます。
- 感染症の研修と訓練:研修は感染対策の基礎的内容の普及・啓発と、指針に基づく衛生管理の徹底が目的で、年1回以上行い、実施内容を記録します。厚生労働省の研修教材等を使い、事業所内で行って差し支えありません。訓練は、発生時を想定して年1回以上行い、机上を含め手法は問わず、机上と実地を適切に組み合わせて行うのが適切とされています。
- BCPの策定と研修・訓練:感染症に係る計画と災害に係る計画の両方を作り、従業者に周知します。研修は計画の具体的内容を共有し、平常時と緊急時の対応の理解を促すもので、年1回以上行い、実施内容を記録します。訓練は年1回以上で、感染症のBCPの研修・訓練は、感染症の予防とまん延防止の研修・訓練と一体的に実施しても差し支えありません。研修・訓練は、全ての従業者が参加できるようにすることが望ましいとされています。
新規採用時の研修:必ず行うのは虐待防止だけ。感染症とBCPは「望ましい」
訪問看護の研修を、新規採用時の扱いで分けると、次の3段階になります。省令は新規採用時の研修を書いていないため、この区別は解釈通知の書き方によります。
- 「必ず…実施することが重要」:高齢者虐待防止。新しく採用した従業者に、早い時期に虐待防止の研修を行います。
- 「望ましい」:感染症(新規採用時には感染対策研修を実施することが望ましい)とBCP(新規採用時には別に研修を実施することが望ましい)。
- 新規採用時の定めがないもの:身体的拘束等(研修自体が義務ではありません)、事故発生時の対応、秘密保持、ハラスメント対策、研修の機会の確保。措置は義務ですが、「新規採用時に研修」という定めはありません。
- 施設系の資料を流用する場合の注意:特別養護老人ホームやグループホームの資料では、感染症やBCPの新規採用時の研修が「実施すること」「必ず」と書かれている種類があります。訪問看護は、訪問系・通所系などと同じ「望ましい」の側です。
- 認知症介護基礎研修:新規採用の従業者に採用後1年以内に受講させる措置が他のサービスでは義務ですが、訪問看護には受講させる措置の条文がないため、この年間計画には入りません。
身体的拘束等は研修の義務ではなく「禁止と記録」:第68条第3号・第4号
訪問看護の運営基準は、第68条(具体的取扱方針)の第3号と第4号で、身体的拘束等について次の2つを定めています。第3号は、利用者または他の利用者等の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならない、第4号は、行う場合に、その態様と時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録しなければならない、です。介護予防訪問看護は、予防基準の第76条第8号・第9号が同じ内容です。施設系や短期入所系にある委員会・指針・研修の義務は、訪問看護の基準にはありません。
解釈通知(令和6年度改正・Vol.1213)は、緊急やむを得ない理由について、切迫性・非代替性・一時性の3つの要件を満たすことを、組織等として確認する手続きを極めて慎重に行い、その具体的な内容を記録しておくことが必要だとしています。この記録は、第73条の2第2項(第5号)により、完結の日から2年間の保存が義務です。介護予防訪問看護は、予防基準の第73条第2項第5号です。
3つの要件の意味は、国のQ&A(Vol.1345 問3)が、切迫性は「利用者本人又は他の利用者の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと」、非代替性は「身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと」、一時性は「身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること」と示しています。この問は短期入所・小規模多機能などが対象で、訪問看護は対象サービスに挙がっていません。ただし、同じ問の注は、訪問系サービスと通所系サービス等について、減算の適用はないが、3つの要件を満たした記録が確認できない場合は指導の対象になることに留意するよう求めています。
記録を求める条文がある以上、「行わない」ことと「万一行った場合に記録する」ことを、虐待防止の研修の中で一緒に確認しておくと、抜けを防げます。これは法令の定めではなく、当サイトの編集上の提案です。
研修の義務ではないが押さえる8つ:研修の機会・一般原則・ハラスメント・事故・秘密保持・運営規程・緊急時の対応・認知症介護基礎研修
次の8つは、研修の回数の定めがない、または研修の義務ではないものです。年間計画に一緒に入れておくと漏れを防げます。
- 研修の機会の確保【第30条第3項の準用・義務】:訪問看護事業者は、看護師等の資質の向上のために、その研修の機会を確保しなければなりません。回数の定めはありません。看護技術や医療的ケアなどの専門的な研修は、この枠で計画に入れておくと整理できます(当サイトの整理です)。
- 一般原則【第3条第3項・義務】:居宅サービス事業者は、利用者の人権の擁護、虐待の防止等のため、必要な体制の整備を行うとともに、その従業者に対し、研修を実施する等の措置を講じなければなりません。研修の名称・回数の指定はありません。
- ハラスメント対策【第30条第4項の準用・措置義務】:職場において行われる性的な言動または優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、看護師等の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じます。研修は、周知・啓発の手段の一つです。
- 事故発生時の対応【第37条の準用・義務】:事故が起きた場合に、市町村、家族、居宅介護支援事業者等へ連絡し、必要な措置を講じ、事故の状況と処置を記録し、賠償すべき事故では損害賠償を速やかに行います。事故防止の委員会・指針・研修・担当者の規定は、訪問看護の運営基準(第4章)にもこの第37条にもありません。事故の状況と処置の記録は、完結の日から2年間の保存が義務です(第73条の2第2項第8号)。
- 秘密保持等【第33条の準用・義務】:従業者が、正当な理由なく業務上知り得た利用者やその家族の秘密を漏らさないこと、従業者でなくなった後も漏らさないよう必要な措置を講じること、サービス担当者会議等で個人情報を用いる場合に、あらかじめ文書により同意を得ることが定められています。研修の定めはありません。
- 運営規程【第73条第7号・義務】:訪問看護事業所ごとに定める運営規程に、「虐待の防止のための措置に関する事項」を入れます。虐待防止の指針や委員会の体制を整えたら、運営規程の記載と合っているかも確かめておくと整理できます(当サイトの整理です)。
- 緊急時等の対応【第72条・義務】:看護師等は、サービスの提供中に利用者の病状の急変等が生じた場合、必要に応じて臨時応急の手当を行うとともに、速やかに主治の医師へ連絡して指示を求める等の必要な措置を講じます。条文は研修の回数を定めていないため、対応の流れを事業所内で確認する場を設けるかどうかは、事業者が決めます。
- 認知症介護基礎研修【対象外】:通所介護などの基準にある「受講させるために必要な措置」(通所介護の第101条第3項)は、訪問看護が準用する第30条第3項にはありません。令和3年度改定の改定事項も、受講の義務づけの対象から「無資格者がいない訪問系サービス(訪問入浴介護を除く)」を除いています。
しないとどうなる?減算は虐待防止とBCPの2つ(各1%)。さかのぼるのはBCPだけ
率は令和6年度介護報酬改定の改定事項、算定の考え方は留意事項通知(老企第36号。令和6年度改正・Vol.1213)、さかのぼりと始まり方は国のQ&A(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問164〜169、Vol.1345)によります。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算【所定単位数の1%】:改定事項は、居宅療養管理指導と特定福祉用具販売を除く全サービスについて、虐待の発生または再発を防止する措置(委員会の開催・指針の整備・研修の実施・担当者を置くこと)が講じられていない場合に、所定単位数の100分の1を減算すると示しています。留意事項通知は、訪問看護費の項(第2の4⑼)で「訪問介護と同様」とし、訪問介護の項(第2の2⑽)は、虐待が発生した場合ではなく、措置を講じていない場合に、利用者全員について減算するとしています。具体的には、委員会を定期的に開催していない、指針を整備していない、年1回以上の研修を実施していない、担当者を置いていない事実が生じた場合です。虐待が起きていなくても、4つのどれか一つでも欠ければ対象です(問167)。
- 虐待防止の減算の始まりと終わり:訪問看護費に係る改正は令和6年6月施行です(改定事項の「施行時期」、留意事項通知の第2の1⑽)。この減算は訪問看護費に新設された減算なので、訪問看護では令和6年6月1日からと読めます。この始まりの日を直接書いた箇所は、確認した範囲では見つかりませんでした。運営指導などで把握した事実が過去のものでも、さかのぼっては適用されず、発見した日の属する月が「事実が生じた月」になります(問168)。減算は、事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月まで続きます。改善計画の提出の有無にかかわらず、翌月から減算して差し支えなく、事実が生じた月から3か月以降に改善計画に基づく改善が認められた月まで継続します(問169)。
- 業務継続計画未策定減算【所定単位数の1%・令和7年4月1日から適用】:改定事項は「その他のサービス」を100分の1とし、訪問系サービスは令和7年3月31日まで減算を適用しないとしています。感染症または災害のいずれか、または両方の計画が未策定で、かつ、その計画に従った措置も講じられていない場合が対象です(問164)。計画の周知・研修・訓練・見直しをしているかどうかは、減算の要件ではありません(同)。訪問看護と介護予防訪問看護は、令和7年4月が施行月の区分(訪問介護・訪問入浴介護・訪問リハビリテーション・福祉用具貸与・居宅介護支援などと同じ)で、令和7年3月31日までは適用しない経過措置がありました(問165)。
- BCPの減算のさかのぼり:行政機関が運営指導で未策定を見つけた時点ではなく、「基準を満たさない事実が生じた時点」までさかのぼって適用します(問166)。留意事項通知(第2の2⑾)は、基準を満たさない事実が生じた月の翌月(その日が月の初日なら当該月)から、解消された月まで、利用者全員について減算するとしています。
- 介護予防訪問看護:留意事項通知は、介護予防訪問看護費の項(⑻⑼)で、2つの減算を「介護予防訪問入浴介護と同様」としています。BCPの始まりは令和7年4月です(問165)。
- 算定構造との関係:令和6年度の介護報酬の算定構造では、訪問介護費の図に2つの減算の欄がありますが、同じ資料の訪問看護費の図には、この2つの欄が見つかりませんでした。当社が確認した算定構造は令和6年4月改定箇所の版で、6月施行の訪問看護費は改定前の形のまま載っているためと読めます。この記事の減算の根拠は、改定事項・留意事項通知(訪問看護費の項が「訪問介護と同様」)・Q&A(問165)です。
- ほかの研修:感染症の研修・訓練、ハラスメント対策、研修の機会の確保、事故発生時の対応は、確認した国の資料の範囲では減算の対象ではありません。身体的拘束等も、訪問系サービスには減算の適用がありません(Vol.1345 問3の注)。ただし、どれも運営基準の義務なので、していなければ指導の対象になります。
数え方の例:BCPは令和7年4月までさかのぼり、虐待防止は発見した月から
令和8年10月の運営指導で、訪問看護の事業所に感染症と災害のBCPがなく、計画に従った措置も講じられていないことが分かった場合を考えます。問166は、発見した時点ではなく、基準を満たさない事実が生じた時点まで遡及するとしています。事実がずっと続いていたなら、施行月の令和7年4月分からさかのぼる計算になります(問166の例も、訪問介護事業所が令和7年10月の運営指導で未策定が判明した場合に、令和7年4月から減算の対象としています)。BCPは、計画の有無を最優先で確かめてください。
虐待防止の減算の数え方も見ておきます。令和8年10月の運営指導で、年1回以上の研修が行われていなかったと分かった場合、さかのぼらないので「事実が生じた月」は令和8年10月で、減算は翌月の11月分から始まります。事実が生じた月から3か月以降の令和9年1月以降に、改善計画に基づく改善が認められた月まで続きます(留意事項通知と問168・問169による数え方の例で、当サイトの計算例です)。虐待が起きていなくても、委員会・指針・研修・担当者のどれかが欠けていれば対象です。
事業所規模別の実施:看護職員は常勤換算2.5以上、合同開催と日を分ける実施、病院・診療所の訪問看護
訪問看護ステーションに置く看護職員(保健師・看護師・准看護師)は、常勤換算方法で2.5以上で、そのうち1名は常勤です(第60条第1項第1号イ・第2項)。理学療法士・作業療法士・言語聴覚士は、実情に応じた適当数です。最低ラインがこの規模で、利用者宅への訪問や待機で全員が同じ時間にそろいにくい事業所もあります。
国のQ&A(Vol.1 問170)は、居宅療養管理指導や居宅介護支援などの小規模な事業者を例に、規模の大小にかかわらず、虐待防止の委員会と研修を定期的に実施するよう求めています。例として、法人内の複数事業所による合同開催、感染症対策の委員会などほかの委員会との合同開催、関係機関等の協力を得た開催を挙げ、研修では都道府県や市町村が実施する研修会への参加、複数の小規模事業所による外部講師を活用した合同開催なども挙げています。合同で行う場合は、参加した各事業所の従事者と実施した内容等が、記録で確認できるようにしておくこととされています。
虐待防止と感染症の研修は、事業所内で行って差し支えないと解釈通知にあります。BCPの研修・訓練は、全ての従業者が参加できるようにすることが望ましいとされています。全員がそろわない場合は、同じ内容を複数回に分けて行い、回ごとに出席者を記録しておくと、全員が受けたことを示しやすくなります(当サイトの編集上の提案です)。どのような形で行えば研修の実施として扱われるかは、事業所の指針や指定権者の案内も合わせて確認してください。
研修の相手は、条文では看護師等で、看護職員のほか、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士も含みます(第60条)。事務を担当する職員など、看護師等以外の従業者が事業所にいる場合は、同じ機会に参加してもらえば、事業所の取り組みがそろいます。当サイトのキットは、全職員向けに作ってあります。
病院または診療所である指定訪問看護事業所(指定訪問看護を担当する医療機関)は、看護職員を適当数置くものとされています(第60条第1項第2号)。解釈通知は、同条により整備すべき記録のうち、指示書・訪問看護計画書・訪問看護報告書については、診療録・診療記録の保存でも差し支えないとしています(第3の三・3⑼)。医療機関全体で行う研修で、訪問看護の研修を兼ねてよいかを直接示した国の資料は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。介護予防訪問看護と訪問看護を同じ事業所で一体的に運営している場合も(第60条第3項)、研修を1回で兼ねてよいかを直接示した資料は見つかりませんでした。兼ねる場合は、記録に両方の従事者が参加したことが分かるように書いておくと、説明しやすくなります。
医療保険の訪問看護との関係:研修義務の範囲だけ整理
この記事は、介護保険の指定を受けた訪問看護の運営基準にもとづく整理です。医療保険の指定訪問看護には、別の省令(平成12年厚生省令第80号「指定訪問看護の事業の人員及び運営に関する基準」)があります。介護保険と医療保険の両方の指定を受けている事業所は、両方の基準を確かめる必要があります。
e-Gov の現行版(2026年10月27日確認)で、研修に関する条文だけを確かめました。第22条第3項が看護師等の資質向上のための研修の機会の確保、第22条の2が業務継続計画の策定と、研修・訓練の定期的な実施です。身体的拘束等の禁止と記録は第15条第3号・第4号、運営規程に「虐待の防止のための措置に関する事項」を入れることは第21条第7号にあります(附則の経過措置は令和8年5月31日まででした)。一方、虐待防止の委員会・研修や、感染症の委員会・研修を定めた条文は、見つかりませんでした。
介護保険の指定を受けている事業所には、この記事の義務(虐待防止・感染症・BCPの年1回以上など)がかかります。医療保険の省令だけを読むと、虐待防止や感染症の委員会・研修の定めが見当たらないため、介護保険の基準を見落とさないよう注意してください。医療保険側の解釈通知や、地方厚生局の運用は今回確認していません。実際の扱いは、事業所を指定した機関の案内で確認してください。
2026年の変更:カスハラ対策が10月1日から義務。医療保険の運営規程の経過措置は5月末で終了
- カスタマーハラスメント対策(令和8年10月1日から):改正労働施策総合推進法により、事業主が必ず講じなければならない措置になりました。厚生労働省のリーフレットは、方針の明確化と周知・啓発、あらかじめ定めた対処の内容の周知、相談窓口の整備、事実関係の確認、被害者への配慮、再発防止、特に悪質なカスハラへの対処方針の整備などを挙げ、「顧客等」には、顧客、取引の相手方、施設の利用者のほか、事業に関係を有する者が含まれるとしています。電話やSNS上のものも含まれます。あらかじめ定めた対処の例として「可能な限り労働者を一人で対応させない」などが挙がっています。単独で訪問する場面がある事業所は、既存のハラスメント対策の方針に加えておくと整理できます(当サイトの編集上の提案です)。
- 医療保険の指定訪問看護の運営規程(令和8年6月1日から):運営規程に「虐待の防止のための措置に関する事項」を定めることは、令和8年5月31日までは定めるよう努めることとされていました(平成12年厚生省令第80号の附則)。令和8年6月1日からは、その努力義務の読み替えがなくなり、運営規程に入れることが定めどおりの義務になっています。
記録の残し方と、無料の研修キット
解釈通知は、虐待防止・感染症・BCPのいずれの研修も、実施内容を記録するよう求めています。日時、テーマ、講師、使った資料、出席者を残し、従業者の名簿と対応させておくと、実施状況を後から説明しやすくなります。身体的拘束等を行った場合の態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由の記録、事故の状況と処置の記録は、完結の日から2年間の保存が義務です(第73条の2第2項)。研修の実施記録を何年保存するかは、確認した条文・通知には書かれていません。第73条の2第1項が従業者・設備・備品・会計に関する諸記録の整備を求めているので、事業所の記録の管理方針に合わせて、保存期間を決めておくと運用しやすくなります。
訪問先から戻る時間がまちまちの事業所では、記録が後回しになりがちです。研修の終了時にその場で記入する運用にすると、抜けを防げます。
本サイトの「義務研修一覧表」でサービス類型に「訪問系」(訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・定期巡回など)を選ぶと、この類型に当てはまる研修だけを絞り込んだ一覧と、頻度に応じて月を配置した年間計画表が作れます。訪問系の一覧には訪問入浴介護だけが対象になる認知症介護基礎研修も入るため、訪問看護では「対象外」の行になります。虐待防止・感染症対策・BCP・ハラスメントの各キットには、レジュメ・確認テスト・実施記録様式・出席簿がそろっています。無料・登録なしで、入力内容はお使いのブラウザの中にだけ保存されます。
この記事で確認した一次資料
本文の条番号・回数・新規採用時の扱い・減算の率と適用開始日・Q&Aの問番号は、2026年10月27日に次の原文で確認しました(リンクは記事末尾の「出典(一次資料)」)。法令や介護報酬は改定されることがあります。実際の適用は、事業所を指定した都道府県(指定都市・中核市にある事業所はその市)にご確認ください。
- 省令:平成11年厚生省令第37号(e-Gov の現行版)の第4章(第59条〜第74条)と、準用される第30条・第30条の2・第31条・第33条・第37条・第37条の2、一般原則の第3条。平成18年厚生労働省令第35号の第72条の2・第73条・第74条・第76条と、準用される第53条の2の2・第53条の3・第53条の10・第53条の10の2。
- 解釈通知:老企第25号の令和3年度改正(介護保険最新情報 Vol.934)の第3の三・3⑹〜⑻と、参照先の第3の一の3(31)、第3の二の3⑺⑻。令和6年度改正(Vol.1213)の第3の三・3⑶④(身体的拘束等)。
- 報酬:令和6年度介護報酬改定の改定事項(虐待防止措置未実施減算・BCP未策定減算の率と経過措置、施行時期)。留意事項通知(老企第36号)の令和6年度改正(Vol.1213)の第2の4⑼⑽・第2の2⑽⑾・第2の1⑽と、介護予防訪問看護費の項(⑻⑼)。算定構造(訪問看護費の図)。
- Q&A:令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1。介護保険最新情報 Vol.1225)の問164〜問170と、介護保険最新情報 Vol.1345(虐待防止の研修回数、身体的拘束等の3要件と訪問系の取扱い)。
- 認知症介護基礎研修:令和3年度介護報酬改定における改定事項について(対象外のサービス)。
- 医療保険:平成12年厚生省令第80号(e-Gov の現行版)の研修に関する条文のみ。
- 2026年の変更:厚生労働省のカスタマーハラスメント対策リーフレット(令和8年10月1日施行)。
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出典(一次資料)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
- 指定介護予防サービス等の事業の人員、設備及び運営並びに指定介護予防サービス等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準(平成18年厚生労働省令第35号)
- 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年度改定・解釈通知改正)
- 介護保険最新情報 Vol.1213(令和6年度改定・解釈通知等改正)
- 介護保険最新情報 Vol.1225(令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)・令和6年3月15日)
- 介護保険最新情報 Vol.1345(令和6年度改定 Q&A)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)
- 厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造」(令和6年4月改定・PDF)
- 厚生労働省リーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」
【免責事項】本キットは研修実施の参考資料です。法令・運営基準・介護報酬の内容は改定されることがあります。実際の運用にあたっての最終確認は、指定権者(都道府県・市区町村等の自治体)へのご確認をおすすめします。本キットの利用により生じた損害について、当社の損害賠償責任は、故意・重過失を除き購入代金の額を上限とします。