認知症対応型通所介護の研修 必須項目 2026|年何回・第61条の準用の読み方・共用型の注意・減算2つとさかのぼり
更新日:2026-10-27・約25分で読めます
認知症対応型通所介護(地域密着型サービス)で運営基準が研修・訓練の実施を義務づけているのは、高齢者虐待防止・感染症の予防とまん延の防止・業務継続計画(BCP)の3分野で、回数はいずれも年1回以上です。ほかに、無資格で介護に直接携わる職員へ認知症介護基礎研修を受講させる措置が義務で、身体的拘束等は「禁止と記録」、ハラスメントは「措置」の義務です。条番号(平成18年厚生労働省令第34号の第61条による準用)、新規採用時の3段階、減算2つ(いずれも1%)とさかのぼり、単独型・併設型・共用型ごとの実施の考え方を、省令・解釈通知・算定構造・国のQ&Aの原文で整理しました(2026年10月時点)。
まず結論:研修・訓練の義務は3分野で年1回以上。条文は第61条の「準用」で読む
認知症対応型通所介護は地域密着型サービスの一つで、事業者を指定するのは市町村長です(介護保険法第42条の2第1項、第78条の2)。運営基準は平成18年厚生労働省令第34号の第3章(第41条から第61条)にあり、人員と設備が第42条から第47条、運営が第50条から第61条(削除の条を除く)です。研修や委員会の多くは、この章に直接は書かれておらず、第61条が他のサービスの条文を準用する形で義務づけています。
研修や訓練の実施が書かれているのは、①高齢者虐待防止(第3条の38の2)、②感染症の予防とまん延の防止(第33条第2項)、③業務継続計画(BCP)(第3条の30の2)の3分野です。条文には「定期的に」とあるだけで、回数は解釈通知(老計発第0331004号)が年1回以上と示しています。国のQ&A(Vol.1345)は、虐待防止の研修の回数を示す一覧で「(介護予防)認知症対応型通所介護」を年に1回以上のグループに入れています。感染症とBCPは、研修に加えて訓練(シミュレーション)も年1回以上です。
もう一つの柱が、第30条第3項後段の認知症介護基礎研修です。看護師・介護福祉士などの資格を持たない従業者全員に、受講させるために必要な措置を講じる義務があります。認知症の方が利用するサービスなので、資格の有無と受講の状況の管理が、実務の中心になります。
研修の義務ではないものも先に押さえておくと迷いません。身体的拘束等は「原則禁止と記録」だけが義務で、委員会・指針・研修の義務はありません。事故防止の委員会・指針・研修も、準用される条文の一覧に入っていません。減算は2つで、高齢者虐待防止措置未実施減算と業務継続計画未策定減算が、どちらも所定単位数の1%です。
早見表:条番号・回数・新規採用時・減算
条番号は平成18年厚生労働省令第34号です。第61条が準用し、条文中の「定期巡回・随時対応型訪問介護看護従業者」「地域密着型通所介護従業者」を「認知症対応型通所介護従業者」に読み替えます。回数と新規採用時の扱いは解釈通知、減算は令和6年度介護報酬改定によります。虐待防止・感染症・BCPは、3年の経過措置が令和6年3月31日で終わり、令和6年4月から完全義務です。
- 高齢者虐待防止【義務】第3条の38の2(第61条で準用):委員会(定期的)・指針・研修(定期的)・担当者の4つ。研修は年1回以上と、新規採用時に必ず。どれかが欠けると所定単位数の1%減算。運営規程にも「虐待の防止のための措置に関する事項」を定めます(第54条第10号)。
- 感染症の予防とまん延の防止【義務】第33条第2項(第61条で準用):委員会(おおむね6月に1回以上)・指針・研修と訓練(定期的)。研修と訓練は各年1回以上で、新規採用時の研修は「望ましい」。研修・訓練の未実施そのものへの減算は、確認した範囲ではなし。
- 業務継続計画(BCP)【義務】第3条の30の2(第61条で準用):感染症と災害の計画の策定、周知、研修・訓練(各年1回以上)、定期的な見直し。新規採用時は別に研修を実施するのが「望ましい」。未策定は所定単位数の1%減算。
- 認知症介護基礎研修【受講させる措置が義務】第30条第3項後段(第61条で準用):医療・福祉関係の資格を持たない従業者が対象。新規採用の無資格者には採用後1年間の猶予。回数は受講1回の整理。
- 研修の機会の確保・ハラスメント対策【措置義務】第30条第3項前段・第4項(第61条で準用):倫理・法令遵守の研修はこの枠。回数の定めなし。
- 身体的拘束等【禁止と記録が義務】第51条第5号・第6号:行う場合は態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録。委員会・指針・研修の規定なし、減算なし。
- 事故発生時の対応【連絡・記録・賠償が義務】第35条(第61条で準用):委員会・指針・研修・担当者の規定なし。
- 非常災害対策【計画・訓練が義務】第32条(第61条で準用):具体的計画、関係機関への通報・連携体制、定期的な避難・救出などの訓練。
根拠:第61条の準用の範囲と、解釈通知の参照先
第61条は、第3条の7から第3条の11まで、第3条の13から第3条の16まで、第3条の18、第3条の20、第3条の26、第3条の30の2、第3条の32から第3条の36まで、第3条の38の2、第3条の39、第12条、第23条、第24条、第28条、第30条から第35条までを準用すると書いています。BCPの第3条の30の2と、虐待防止の第3条の38の2は、この一覧に名指しで入っています。第30条から第35条までには、勤務体制の確保等(第30条)、定員の遵守(第31条)、非常災害対策(第32条)、衛生管理等(第33条)、地域との連携等(第34条)、事故発生時の対応(第35条)が含まれます。
準用された条文の主語は読み替えられます。第3条の30の2第2項、第3条の38の2第1号・第3号、第30条第3項・第4項、第33条第2項第1号・第3号の従業者は、いずれも「認知症対応型通所介護従業者」になります。認知症対応型通所介護従業者とは、単独型・併設型は第42条第1項、共用型は第45条第1項の従業者です(第51条第4号)。
解釈通知(老計発第0331004号)の認知症対応型通所介護の項(令和6年度改正の新旧対照表)は、準用される条文について、定期巡回・随時対応型訪問介護看護の項(第3の一の4)と、地域密着型通所介護の項(第3の二の二の3)の該当部分を参照するよう書く形です。参照先の書き方は、虐待防止が「定期的な研修(年1回以上)を実施するとともに、新規採用時には必ず虐待の防止のための研修を実施することが重要」、感染症が「定期的な教育(年1回以上)を開催するとともに、新規採用時には感染対策研修を実施することが望ましい」、BCPが「定期的(年1回以上)な教育を開催するとともに、新規採用時には別に研修を実施することが望ましい」です。感染症とBCPの訓練も「定期的(年1回以上)」です。
通所介護(居宅サービス)の解説をそのまま当てはめるのは避けてください。通所介護の根拠は平成11年厚生省令第37号、認知症対応型通所介護は第34号で、条番号が違います。内容が近い部分は多いものの、地域密着型サービスは指定も指導も市町村が行うため、細かな取扱いは市町村の案内で確認するのが確実です。
研修ごとの原文:委員会・指針・研修・訓練の中身
3分野の中身を、解釈通知の言葉で並べます。委員会、指針の整備、研修と訓練は、事業所に実施が求められるものですが、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えないとされています。
- 虐待防止の委員会:管理者を含む幅広い職種で構成し、構成メンバーの責務と役割分担を明確にして、定期的に開催します。テレビ電話装置等を活用して開催でき、他の会議体を設置している場合は一体的に設置・運営して差し支えありません。
- 虐待防止の指針:事業所における虐待の防止に関する基本的考え方、委員会その他の組織、職員研修の基本方針、発生時の対応方法、相談・報告体制、成年後見制度の利用支援、苦情解決方法、利用者等への閲覧、その他の9項目を盛り込みます。
- 虐待防止の研修:虐待等の防止に関する基礎的内容の普及・啓発と、事業所の指針に基づく虐待防止の徹底を行います。指針に基づく研修プログラムを作成し、定期的な研修(年1回以上)と新規採用時の研修を行い、実施内容を記録します。事業所内での研修で差し支えありません。
- 虐待防止の担当者:委員会・指針・研修を適切に実施するための担当者を置きます。委員会の責任者と同一の従業者が務めることが望ましいとされています。令和6年度の改正で解釈通知の「専任の担当者」は「担当者」に改められ、担当者としての職務に支障がなければ、同じ事業所内の身体的拘束等適正化・感染対策などの担当との兼務や、ほかの事業所・施設等との兼務も差し支えないとされました。
- 感染症の委員会:感染対策の知識を有する者を含む幅広い職種での構成が望ましく、外部の者の参画も望ましいとされています。感染対策担当者を決めておくことが必要で、おおむね6月に1回以上、定期的に開催し、感染症が流行する時期等を勘案して必要に応じて随時開催します。
- 感染症の指針:平常時の対策(事業所内の衛生管理、ケアにかかる感染対策)と、発生時の対応(状況の把握、感染拡大の防止、関係機関との連携、行政等への報告)を定めます。
- 感染症の研修と訓練:研修は感染対策の基礎的内容の普及・啓発と、指針に基づく衛生管理の徹底が目的で、年1回以上行い、実施内容を記録します。厚生労働省の研修教材等を使い、事業所内で行って差し支えありません。訓練は、発生を想定して定期的(年1回以上)に行い、机上を含め手法は問わないものの、机上と実地を適切に組み合わせるのが適切とされています。
- BCPの策定と研修・訓練:感染症に係る計画と災害に係る計画の両方を作り、従業者に周知します。研修は計画の具体的内容を職員間で共有し、平常時と緊急時の対応の理解を促すもので、年1回以上行います。訓練も年1回以上で、感染症のBCPの研修・訓練は、感染症の予防とまん延の防止の研修・訓練と一体的に実施して差し支えありません。研修・訓練は、全ての従業者が参加できるようにすることが望ましいとされています。
新規採用時の研修:必ず行うのは虐待防止だけ。感染症とBCPは「望ましい」
認知症対応型通所介護の研修を、新規採用時の扱いで分けると、次の3段階になります。省令は新規採用時の研修を書いていないため、この区別は解釈通知の書き方によります。
別に、認知症介護基礎研修は、研修というより受講させる措置の義務で、新規採用の無資格者については採用後1年間の猶予があります(次の節)。グループホームや特別養護老人ホームの資料を流用する場合は、書き方の違いに注意してください。施設系・居住系では、感染対策研修の新規採用時の扱いが「必ず…実施することが重要」と書かれている種類があります。認知症対応型通所介護は、通所介護などと同じ「望ましい」の側です。
- 「必ず…実施することが重要」:高齢者虐待防止。新しく採用した従業者に、早い時期に虐待防止の研修を行います。
- 「望ましい」:感染症(新規採用時には感染対策研修を実施することが望ましい)とBCP(新規採用時には別に研修を実施することが望ましい)。
- 新規採用時の定めがないもの:身体的拘束等(研修自体が義務ではありません)、事故発生時の対応、秘密保持、ハラスメント対策、研修の機会の確保。措置は義務ですが、「新規採用時に研修」という定めはありません。
認知症介護基礎研修:第30条第3項後段。対象外の資格と、採用後1年の猶予
第30条第3項後段は、全ての認知症対応型通所介護従業者(看護師、准看護師、介護福祉士、介護支援専門員、介護保険法第8条第2項に規定する政令で定める者等の資格を有する者その他これに類する者を除く)に、認知症介護に係る基礎的な研修を受講させるために必要な措置を講じることを求めています。
解釈通知(地域密着型通所介護の項)は、義務づけの対象にならない者を、各資格のカリキュラム等で認知症介護に関する基礎的な知識及び技術を習得している者とし、条文の列挙に加えて次の例を挙げています。実務者研修修了者、介護職員初任者研修修了者、生活援助従事者研修修了者、介護職員基礎研修課程又は訪問介護員養成研修課程一級課程・二級課程修了者、社会福祉士、医師、歯科医師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、精神保健福祉士、管理栄養士、栄養士、あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師等です。
新たに採用した従業者(医療・福祉関係資格を有さない者に限る)には、採用後1年間の猶予期間があり、採用後1年を経過するまでに受講させることとされています。令和3年改正省令の3年間の経過措置は令和6年3月31日までで、令和6年4月からは完全に義務です。
機能訓練指導員を柔道整復師などが務めている事業所について、柔道整復師と歯科衛生士は対象外として差し支えないとされています(令和6年度 介護保険最新情報 Vol.1225 のQ&A 問156)。それ以外の、上の例示に名前が出ない資格の人が対象外になるのかは、解釈通知の「等」の範囲として市町村に確認しておくと安心です。当サイトのキットは、受講の案内と受講記録の様式です。
身体的拘束等は研修の義務ではなく「禁止と記録」:第51条第5号・第6号
第51条第5号は、利用者または他の利用者等の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならないとし、第6号は、行う場合にその態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録することを求めています。委員会の設置・指針の整備・研修の実施は、条文にありません。
解釈通知(令和6年度改正)は、緊急やむを得ない理由について、切迫性、非代替性及び一時性の3つの要件を満たすことを、組織等として確認する手続きを極めて慎重に行い、その具体的な内容を記録しておくことが必要だとしています。この記録は、第60条第2項により、その完結の日から2年間保存します。
国のQ&A(Vol.1345 問3)は、3要件の意味を、切迫性は「利用者本人又は他の利用者の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと」、非代替性は「身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと」、一時性は「身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること」と示しています。同じ問は、訪問系サービス及び通所系サービス等では減算の適用はないが、要件を満たした記録の確認ができない場合は指導の対象になることに留意するよう書いています。認知症対応型通所介護はこの「通所系」にあたると読めますが、Q&Aが個別の名前を挙げているわけではありません(当社の整理)。
認知症の利用者が多いサービスなので、虐待防止の研修の中で、身体的拘束等に当たる行為と、記録の手順を一緒に確認しておくと、抜けを防げます。これは法令の定めではなく、当サイトの編集上の提案です。
研修以外の義務:研修の機会・ハラスメント・事故・秘密保持・非常災害・運営推進会議
次の6つは、研修の回数の定めがない、または研修の義務ではないものです。年間計画に一緒に入れておくと漏れを防げます。
- 研修の機会の確保【第30条第3項前段・義務】:認知症対応型通所介護従業者の資質の向上のために、その研修の機会を確保します。解釈通知は、研修機関が実施する研修や事業所内の研修への参加の機会を計画的に確保することとしています。回数の定めはありません。
- ハラスメント対策【第30条第4項・措置義務】:職場において行われる性的な言動または優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、従業者の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じます。研修は措置の手段の一つです。解釈通知(定期巡回の項)は、セクシュアルハラスメントについて、上司や同僚に限らず、利用者やその家族等から受けるものも含まれると書いています。
- 事故発生時の対応【第35条・義務】:事故が起きた場合に、市町村、家族、居宅介護支援事業者等へ連絡し、必要な措置を講じ、事故の状況と処置を記録し、賠償すべき事故では損害賠償を速やかに行います。事故防止の委員会・指針・研修・担当者の規定は、準用される条文の一覧にありません。
- 秘密保持等【第3条の33・義務】:従業者が正当な理由なく業務上知り得た利用者やその家族の秘密を漏らさないこと、従業者でなくなった後も漏らさないよう必要な措置を講じること、サービス担当者会議等で個人情報を用いる場合に、あらかじめ文書により同意を得ることが定められています。研修の義務規定は、確認した範囲では見当たりません。
- 非常災害対策【第32条・義務】:非常災害に関する具体的計画を立て、関係機関への通報・連携体制を整備し、それらを定期的に従業者に周知するとともに、定期的に避難、救出その他必要な訓練を行います。解釈通知は、計画を消防計画(これに準ずる計画を含む)と、風水害・地震等の災害に対処する計画としています。災害のBCPの訓練とは別の条文なので、年間計画では別の枠で確認します。
- 運営推進会議【第34条・義務】:利用者、家族、地域住民の代表者、市町村の職員または地域包括支援センターの職員、認知症対応型通所介護について知見を有する者等で構成する会議を設置し、おおむね6月に1回以上、活動状況を報告して評価を受け、要望・助言を聴く機会を設けます。報告、評価、要望、助言等の記録は作成して公表します(第2項)。研修の義務ではありませんが、避難訓練への地域の協力を得る場としても位置づけられています(解釈通知)。
しないとどうなる?減算は2つ(各1%)。BCPは令和6年4月からさかのぼる
率は介護報酬の算定構造(認知症対応型通所介護費に「−1/100」)、算定の考え方は留意事項通知(老計発第0331005号。令和6年度改正)、さかのぼりと始まり方は国のQ&A(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問164〜問170)によります。減算は利用者全員が対象で、虐待があったかではなく、措置を講じているかで判定されます。
感染症の研修・訓練、ハラスメント対策、研修の機会の確保、認知症介護基礎研修、事故発生時の対応は、確認した国の資料の範囲では減算の対象ではありませんが、運営基準の義務なので、していなければ運営指導で改善を求められます。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算【所定単位数の1%】:虐待が発生した場合ではなく、第3条の38の2の措置を講じていない場合に、利用者全員について減算します。委員会を定期的に開催していない、指針を整備していない、年1回以上の研修を実施していない、担当者を置いていない事実が生じたとき、速やかに改善計画を市町村長に提出し、事実が生じた月から3月後に改善状況を報告します。減算は、事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで続きます(留意事項通知)。
- 虐待防止の減算の注意点:4つの措置の一つでも欠ければ減算の対象です(問167)。運営指導で把握した事実が過去のものでも、さかのぼって適用はされず、発見した日の属する月が「事実が生じた月」です(問168)。改善計画の提出の有無にかかわらず事実が生じた月の翌月から減算でき、3か月以降に改善が認められた月まで続きます(問169)。
- 業務継続計画未策定減算【所定単位数の1%】:感染症または災害のどちらか、または両方の計画が未策定で、かつ計画に従った措置も講じられていない場合に、利用者全員について減算します(問164)。周知・研修・訓練・見直しの有無は、この減算の要件ではありません。事実が生じた月の翌月(初日なら当該月)から、解消された月まで続きます(留意事項通知)。
- BCP減算の始まりと経過措置:施行は、認知症対応型通所介護を含む通所介護などのグループで令和6年4月です。ただし令和7年3月31日までは、感染症の予防及びまん延の防止のための指針と、非常災害に関する具体的計画を策定していれば、減算を適用しませんでした(問165、算定構造、留意事項通知)。令和7年4月からは、この条件なしで適用されています(当社の整理)。
- BCP減算のさかのぼり:行政機関が運営指導で未策定を見つけた時点ではなく、「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡って適用します(問166)。
- 虐待防止の減算の始まり:令和6年度改定の施行日(4月)からと読んでいます。算定構造の認知症対応型通所介護費に、この減算の適用を遅らせる注記は確認した範囲で見当たりませんでした。この減算だけについて認知症対応型通所介護の施行日を個別に書いた国の資料は確認できていません(当社の整理)。
数え方の例:BCPは大きくさかのぼり、虐待防止は発見した月から
令和8年10月の運営指導で、虐待防止検討委員会が一度も開かれていないと分かった場合を考えます。さかのぼらないので「事実が生じた月」は令和8年10月、減算は11月分から始まります。3か月後にあたる令和9年1月に改善状況を報告し、改善が認められた月まで減算が続くため、少なくとも3か月分(11月・12月・1月分)は減算される計算です(問168・問169、当社の計算例)。
同じ運営指導で、感染症と災害のBCPが未策定で、計画に従った措置もないと分かった場合は、問166の「事実が生じた時点」まで遡及します。問166の通所介護の例は、感染症の指針と非常災害の具体的計画の策定もない場合を、令和6年4月から減算の対象としています。指針と具体的計画があった場合は、経過措置が終わった令和7年4月からと読めます(認知症対応型通所介護は問165で通所介護と同じグループ。当社の整理)。いずれも、運営指導の時点よりはるか前までさかのぼる点が、虐待防止の減算との違いです。
また、BCPを作ってあるのに研修も訓練もしていなかった場合は、減算の要件(計画が未策定で、かつ措置もない)には当てはまらないと読めます(問164)。ただし、研修・訓練は第3条の30の2第2項の義務なので、減算がなくても運営指導では改善を求められます(当社の整理)。
事業所の形ごとの実施:単独型・併設型・共用型
認知症対応型通所介護には、3つの形があります。研修の義務の中身は同じですが、集まり方と、誰が従業者かが違います。
夜間・深夜に宿泊サービス(いわゆるお泊まりデイ)を行う単独型・併設型の事業所では、第44条第4項により、その内容を提供開始前に指定した市町村長へ届け出ます。宿泊サービスで事故が起きたときは、第35条第4項の読み替えで、第1項・第2項に準じた措置(連絡・必要な措置・記録)を講じます。宿泊に携わる職員も含めて、事故の連絡と記録の手順を研修の題材に入れておく例があります(当社の整理)。
- 単独型・併設型(第42条):生活相談員、看護職員または介護職員、機能訓練指導員が従業者です。単位ごとに看護職員または介護職員が常時1人以上必要で、利用定員は12人以下です(第42条第2項・第4項)。少人数のため、全員が同じ日時に集まりにくい日があります。併設型は、特別養護老人ホーム、養護老人ホーム、病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、社会福祉施設、特定施設のいずれかに併設されている事業所です。
- 共用型(第45条・第46条):認知症対応型共同生活介護(グループホーム)の居間・食堂、地域密着型特定施設・地域密着型介護老人福祉施設の食堂・共同生活室で、本体事業所等の利用者・入居者・入所者と一緒に行います。従業者の員数は、本体の利用者等と共用型の利用者を合計した数について、本体の基準を満たすために必要な数以上とされています(第45条)。利用定員は、共同生活住居ごと、または施設ごとに1日3人以下です(第46条第1項。ユニット型地域密着型介護老人福祉施設は別の定め)。
- 共用型の注意:従業者が本体事業所等の従業者と重なるため、研修の日程は本体と合わせる運営になりやすい形です。本体がグループホームの場合、Vol.1345は、グループホームの虐待防止の研修を年に2回以上としており、認知症対応型通所介護の年に1回以上とは別の基準です。共用型の研修を本体事業所の研修で兼ねてよいかを直接示した国の資料は、確認した範囲では見つかりませんでした。兼ねる場合は、共用型の従業者が参加したことと、共用型の利用者に関わる内容を含めたことが、記録で分かるようにしておくと安心です(当社の整理)。
- 合同開催:国のQ&A(Vol.1 問170)は、小規模事業所でも規模の大小に関わりなく虐待防止の委員会と研修を定期的に実施するよう求め、例に、法人内の複数事業所による合同開催、感染症対策委員会等ほかの委員会との合同開催、都道府県や市町村の研修会への参加、複数の小規模事業所による外部講師を活用した合同開催を挙げています。合同で行う場合は、参加した各事業所の従事者と実施内容が記録で確認できるようにします。
介護予防認知症対応型通所介護を一体で行う場合
認知症対応型通所介護の事業所は、介護予防認知症対応型通所介護の指定を併せて受けて、同じ事業所で一体的に運営していることがあります(第42条第4項など)。介護予防は、平成18年厚生労働省令第36号に、同趣旨の条文が直接書かれています。e-Gov の条文で確認できたのは、勤務体制の確保等(第28条。第3項に認知症介護に係る基礎的な研修を受講させる措置、第4項にハラスメント対策)、業務継続計画の策定等(第28条の2)、衛生管理等(第31条第2項)、虐待の防止(第37条の2)、身体的拘束等の禁止と記録(第42条第10号・第11号)です。
研修の対象や回数は、一体運営ならそろえて考えるのが自然です。ただし、介護予防側の解釈通知と減算の取扱いは、この記事では確認していません。介護予防を併せて指定を受けている事業所は、市町村の案内で確認してください。
2026年の変更:カスハラ対策が10月1日から義務。認知症対応型通所介護の研修の要件を変える記載は見つからず
- カスタマーハラスメント対策(令和8年10月1日から):改正労働施策総合推進法により、事業主が必ず講じなければならない措置になりました。厚生労働省のリーフレットは、方針の明確化と周知・啓発、あらかじめ定めた対処の内容の周知、相談窓口の整備、事実関係の確認、被害者への配慮、再発防止などを措置とし、対処の内容の例に、管理監督者にその場の対応の方針について指示を仰ぐこと、可能な限り労働者を一人で対応させないことなどを挙げています。パワハラ・セクハラ対策(第30条第4項の措置)とあわせて、年間計画に入れておくと漏れを防げます。
- 令和8年度の介護報酬改定(期中改定):厚生労働省の資料(令和8年1月16日の分科会資料)は、処遇改善の拡充と食費の基準費用額の見直しを内容とし、改定率を+2.03%としています。確認した範囲では、認知症対応型通所介護の研修や減算(虐待防止・BCP)の要件を変える記載は見つかりませんでした。処遇改善加算の要件にある「研修の実施等」は、加算を算定するための要件で、運営基準の義務研修とは別です。
記録の残し方と、無料の研修キット
解釈通知は、虐待防止・感染症・BCPのいずれの研修も、実施内容を記録するよう求めています。日時、テーマ、講師、使った資料、出席者を残し、従業者の名簿と対応させておくと、実施状況を後から説明しやすくなります。認知症介護基礎研修は、対象職員を一覧にして、資格の有無と受講日、採用日を並べておくと、採用後1年の猶予の管理がしやすくなります。
第60条第2項は、認知症対応型通所介護計画、提供した具体的なサービスの内容等の記録、身体的拘束等の記録、市町村への通知の記録、苦情の内容等の記録、事故の状況と処置の記録、運営推進会議の報告・評価・要望・助言等の記録を、その完結の日から2年間保存するよう求めています。研修の実施記録そのものの保存年限を定めた条文は、確認した範囲では見当たりませんでした。保存期間は事業所で決めておくと運用しやすくなります(当社の整理)。
当サイトの「義務研修一覧表」でサービス類型に「通所系」を選ぶと、この類型に当てはまる研修だけを絞り込んだ一覧と、頻度に応じて月を配置した年間計画表が作れます(無料・登録なし。入力内容はお使いの端末の中にとどまり、外部へは送信されません)。虐待防止・感染症対策・BCP・ハラスメントの各キットには、読み上げ用のレジュメ、確認テスト、実施記録様式、出席簿を一式ご用意しています。認知症介護基礎研修は受講の案内と記録の様式です。なお、一覧表の「通所系」は通所介護(平成11年厚生省令第37号)を基準にした表示です。認知症対応型通所介護は、この記事のとおり省令第34号の第61条の準用ですが、頻度・対象・減算の整理は同じです。
この記事で確認した一次資料
本文の条番号・回数・新規採用時の扱い・減算の率と適用開始日・Q&Aの問番号は、2026年10月27日に次の原文で確認しました(リンクは記事末尾の「出典(一次資料)」)。法令や介護報酬は改定されることがあります。実際の適用は、事業所を指定した市町村の最新の案内でご確認ください。
- 省令:平成18年厚生労働省令第34号(e-Gov の現行版)の第41条〜第61条と、準用される第3条の30の2・第3条の33・第3条の38の2・第30条〜第35条。介護予防は平成18年厚生労働省令第36号(e-Gov の現行版)の条の存在のみ。
- 法律:介護保険法(e-Gov の現行版)第8条第18項(認知症対応型通所介護の定義)、第42条の2第1項、第78条の2。
- 解釈通知:老計発第0331004号の令和3年度改正(介護保険最新情報 Vol.934)の定期巡回・随時対応型訪問介護看護の項(虐待の防止)と地域密着型通所介護の項(業務継続計画・勤務体制の確保等・衛生管理等・非常災害対策)。令和6年度改正の新旧対照表(別紙11・抄)の認知症対応型通所介護の項(身体的拘束等・準用)。
- 報酬:介護報酬の算定構造(認知症対応型通所介護費の2つの減算と経過措置の注)。留意事項通知(老計発第0331005号)の令和6年度改正抄の認知症対応型通所介護費の項。
- Q&A:令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1。介護保険最新情報 Vol.1225)の問164〜問170と、介護保険最新情報 Vol.1345(身体的拘束等の3要件、虐待防止の研修の回数)。
- 2026年の変更:厚生労働省のカスタマーハラスメント対策リーフレット(令和8年10月1日施行)、令和8年度介護報酬改定について(令和8年1月16日の分科会資料)。
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出典(一次資料)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)
- 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年度改定・解釈通知改正)
- 厚生労働省「指定地域密着型サービス及び指定地域密着型介護予防サービスに関する基準について」(老計発第0331004号ほか)令和6年度改正の新旧対照表(別紙11・抄)
- 厚生労働省「指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準及び指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(老計発第0331005号ほか)令和6年度改正の新旧対照表(別紙5・抄)
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造」(令和6年4月改定・PDF)
- 介護保険最新情報 Vol.1225(令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)・令和6年3月15日)
- 介護保険最新情報 Vol.1345(令和6年度改定 Q&A)
- 厚生労働省リーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」(社会保障審議会介護給付費分科会 第253回 資料1・令和8年1月16日)
【免責事項】本キットは研修実施の参考資料です。法令・運営基準・介護報酬の内容は改定されることがあります。実際の運用にあたっての最終確認は、指定権者(都道府県・市区町村等の自治体)へのご確認をおすすめします。本キットの利用により生じた損害について、当社の損害賠償責任は、故意・重過失を除き購入代金の額を上限とします。