デイサービス(通所介護)の研修 必須項目 2026|「14項目」は全部義務?義務6分野・回数・減算
更新日:2026-10-22・約11分で読めます
デイサービス(通所介護)の研修で、運営基準上の義務は6分野と3つの訓練です。ネットで見る「必須14項目」のような一覧には、介護サービス情報公表制度の調査票の項目を数えたものがあり、全部が義務ではありません。条番号・回数・新規採用時・未実施時の減算と遡り、2026年の変更(処遇改善加算の拡充・カスハラ対策の義務化)を一次資料で仕分けました。
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まず結論:「必須14項目」は全部が義務ではない。運営基準で義務なのは6分野と訓練
デイサービス(通所介護)の研修まわりで、運営基準(平成11年厚生省令第37号)が義務づけているのは、①高齢者虐待防止の研修、②感染症の予防とまん延防止の研修、③業務継続計画(BCP)の研修、④認知症介護基礎研修を受講させる措置、⑤ハラスメント対策の措置(研修は手段の一つ)、⑥資質向上のための研修機会の確保(倫理・法令遵守など)の6分野です。訓練は、感染症・BCP・非常災害の3つが義務です。
ネットで見かける「デイサービスの研修 必須14項目」のような一覧には、介護サービス情報公表制度の調査票(運営情報)に並ぶ研修の項目を数えたものがあります。その中には、身体的拘束・事故防止・緊急時対応・プライバシー保護など、通所介護では研修の実施までは運営基準で義務づけられていない項目も入っています。これらは、公表制度で「実施記録があるか」を報告・公表する項目です。
未実施が減算につながるのは2つです。虐待防止は、研修を含む4つの措置のどれか一つでも欠けると所定単位数の1%減算。BCPは、計画が未策定だと1%減算です(研修・訓練をしていないこと自体は、この減算の要件ではありません)。感染症対策や認知症介護基礎研修などは、確認した一次資料の範囲では減算はありませんが、運営指導の確認項目に入っています。
「14項目」の出どころ:介護サービス情報公表制度の調査票
介護サービス情報の公表制度は、介護保険法第115条の35にもとづき、事業所が運営の状況を都道府県に報告し、その内容が公表される仕組みです。厚生労働省の施行通知(最終改正 令和8年8月14日)は、計画の基準日前の1年間に介護報酬の支払いを受けた金額が100万円を超える事業者に、基本情報・運営情報の調査票などの報告を求めています。
調査票は、記録が「あり」か「なし」かを答える様式で、研修の回数は書かれていません。施行通知も、この調査は「事業者の取組の良し悪しを評価する仕組みではない」としています。義務かどうかと回数は、運営基準(省令)と解釈通知で決まります。
令和8年度版の「運営情報調査票(通所介護)」から、研修・訓練の記録を問う項目を抜き出すと次のとおりです。数え方によって項目数は変わり、「研修14項目」という数え方は調査票にも法令にも書かれていません(確認した範囲)。
- 認知症及び認知症ケアに関する研修の実施記録
- 利用者のプライバシーの保護の取組に関する研修の実施記録
- 身体的拘束等の廃止のための取組に関する研修を、従事者だけでなく管理者も受講している記録
- 高齢者虐待防止研修を、従事者だけでなく管理者も受講している記録(あわせて、研修を企画し実施する職員を養成する取組の記録)
- 倫理及び法令遵守に関する研修の実施記録
- 事故の発生予防又はその再発の防止に関する研修の実施記録
- 事故の発生等緊急時の対応に関する研修の実施記録
- 非常災害時の対応に関する研修の実施記録と、避難・救出等に関する訓練の実施記録
- 感染症及び食中毒の発生の予防及びまん延の防止に関する研修の実施記録
- 業務継続計画(BCP)に関する研修の実施記録と、BCPに基づく訓練の実施記録
- 全ての新任の従業者・全ての現任の従業者を対象とする研修の計画と実施記録
早見表:調査票の項目を運営基準で仕分け(義務か・条文・回数・新規採用時・減算)
通所介護について、上の項目とハラスメント対策を運営基準で仕分けると次のとおりです。条番号は平成11年厚生省令第37号のもので、「準用」は第105条で訪問介護の条文を通所介護に当てはめているものです。回数と新規採用時の扱いは解釈通知(介護保険最新情報 Vol.934)、減算は令和6年度介護報酬改定によります。虐待防止・感染症・BCPは令和3年度改定で義務化され、3年の経過措置を経て令和6年4月から完全義務です。地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護は別の省令(平成18年厚生労働省令第34号)で定められているため、条番号が異なります。
このうち義務の6分野は、感染症とBCPの研修・訓練を別の行に分けて、通所系の年間計画表にまとめられます。年度と開始月を選ぶと実施予定月が入る、編集できる Excel の計画表は有料の全11研修パックに入っています(表のすぐ下の案内から)。無料でも、サービス類型「通所系」のページで義務研修の一覧と計画表の例を表示・印刷できます。
- 高齢者虐待防止【義務】準用第37条の2:委員会・指針・研修・担当者の4つ。研修は年1回以上と、新規採用時に必ず。4つのどれかが欠けると所定単位数の1%減算。
- 感染症の予防とまん延防止【義務】第104条第2項:委員会(おおむね6か月に1回以上)・指針・研修・訓練。研修と訓練は各年1回以上で、新規採用時の研修は「望ましい」。減算なし。
- 業務継続計画(BCP)【義務】準用第30条の2:感染症と災害の計画の策定、従業者への周知、研修・訓練(各年1回以上)、定期的な見直し。新規採用時は別に研修するのが「望ましい」。計画の未策定は所定単位数の1%減算。
- 非常災害時の対応【訓練が義務】第103条:具体的計画と通報・連携体制を定期的に従業者へ周知し、避難・救出その他の訓練を定期的に実施。回数の記載はなし。研修という形の義務規定はなし。減算なし。
- 認知症・認知症ケア【認知症介護基礎研修が義務】第101条第3項:医療・福祉の資格を持たず介護に直接携わる職員に、受講させるために必要な措置。受講は1回で、新規採用者は採用後1年の猶予。調査票の「認知症ケアの研修」全般には回数の定めなし。減算なし。
- 倫理・法令遵守【研修機会の確保が義務】第101条第3項:従業者の資質向上のため、外部の研修や事業所内の研修に参加する機会を計画的に確保する義務(解釈通知)。研修を実施する回数の定めはなく、倫理・法令遵守の研修はこの枠で計画に入れます。
- 新任・現任の研修計画【研修機会の確保の範囲】第101条第3項:研修の機会は計画的に確保することとされていますが、新任・現任別の研修計画を作れという形の規定はなし。新規採用時は、虐待防止が「必ず」、感染症・BCPが「望ましい」。
- ハラスメント対策(調査票の研修項目にはなし)【措置義務】第101条第4項:職場のハラスメントを防ぐための方針の明確化等の措置。研修は周知・啓発の手段の一つで、回数の定めなし。
- 身体的拘束等【記録が義務・研修は義務ではない】第98条第3号・第4号:緊急やむを得ない場合を除き禁止。行う場合は態様・時間・心身の状況・理由を記録。通所介護は委員会・指針・研修の義務なし、減算なし。
- 事故防止・緊急時対応【研修は義務ではない】第104条の3:事故時の市町村・家族等への連絡、必要な措置、記録、賠償が義務。委員会・研修・担当者の義務は介護保険施設だけ。
- プライバシー保護【研修は義務ではない】準用第33条:従業者の秘密保持は義務。研修の義務規定はなし。
未実施だとどうなる?減算は2つ。虐待防止はさかのぼらず、BCPは事実が生じた時点までさかのぼる
令和6年度の介護報酬改定で、研修・訓練にかかわる減算が2つ新設され、どちらも通所介護が対象です。BCPには令和7年3月31日までの経過措置(感染症の指針と非常災害の計画があれば減算しない)がありましたが、すでに終わっています。
感染症対策・認知症介護基礎研修・ハラスメント対策・研修機会の確保・非常災害の訓練は、確認した一次資料の範囲では減算の対象ではありません。ただし、減算がないことは「やらなくてよい」という意味ではありません。いずれも厚生労働省の運営指導の確認項目に入っており、守れていなければ運営基準違反として指摘の対象になります。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算(所定単位数の1%):委員会の開催・指針の整備・研修の定期的な実施・担当者の配置のうち一つでも講じていなければ、虐待が起きていなくても減算の対象(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問167)。
- 虐待防止の減算の始まり:運営指導などで把握した事実が過去のものでも、さかのぼっては適用されず、発見した日の属する月が「事実が生じた月」になります(問168)。減算はその翌月から始まり、事実が生じた月から3か月以降に、改善計画にもとづく改善が認められた月まで続きます(問169)。
- 業務継続計画未策定減算(通所介護は所定単位数の1%。施設・居住系は3%):感染症・災害のどちらか、または両方の計画が未策定で、計画に従った措置も講じていない場合が対象。BCPの周知・研修・訓練・見直しをしているかどうかは、この減算の要件ではありません(問164)。
- BCPの減算の始まり:運営指導で見つかった時点ではなく、「基準を満たさない事実が生じた時点」までさかのぼります。Q&Aは、通所介護で令和7年10月の運営指導で未策定が判明し、感染症の指針・非常災害の計画もなかった場合、令和6年4月から減算の対象になる例を示しています(問166)。
2026年の変更:処遇改善加算の拡充(6月)とカスハラ対策の義務化(10月1日)
2026年(令和8年)6月から、介護職員等処遇改善加算が拡充されました。厚生労働省の改定資料によると、加算の対象が介護職員から介護従事者に広がって加算率が引き上げられ、生産性向上や協働化に取り組む事業者向けの上乗せ区分(加算Ⅰロ・Ⅱロ)が設けられました。通所介護の加算率は、加算Ⅰイ11.1%、Ⅰロ12.0%、Ⅱイ10.9%、Ⅱロ11.8%、Ⅲ9.9%、Ⅳ8.3%です。
研修との関係では、加算Ⅳ以上のどの区分でも「賃金体系等の整備及び研修の実施等(キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ)」が要件に入っています。これは運営基準の義務研修とは別の、加算を算定するための要件です。なお、令和8年度の特例要件(訪問・通所サービス等はケアプランデータ連携システムへの加入と実績報告など)を満たす場合、キャリアパス要件Ⅰ〜Ⅳと職場環境等要件は、令和8年度中の対応の誓約でも可とされています。
2026年10月1日からは、改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント対策が全事業主の雇用管理上の措置義務になりました。厚生労働省のリーフレットが挙げる措置は、方針の明確化と労働者への周知・啓発、相談窓口の設置と周知、事後の迅速かつ適切な対応などです。研修は周知・啓発の手段の一つで、パワハラ・セクハラ対策(第101条第4項の措置)とあわせて年間計画に入れておくと漏れを防げます。
記録の残し方と、この記事で確認した一次資料
運営指導では、厚生労働省の確認項目一覧で、通所介護の研修について「研修の計画及び実績がわかるもの」(研修機会の確保・認知症介護基礎研修・BCP・虐待防止)、感染症の研修と訓練の実施状況、BCPの訓練の計画と実績、避難・救出等の訓練の実施状況などが確認文書に挙がっています。
公表制度の調査では、研修会等の実施記録について、少なくとも題目・開催日・出席者・実施内容の概要が確認されます。研修は、自事業所で実施したものか外部研修に参加させたものかを問いません(施行通知)。実施のたびに実施記録・出席簿・使った資料をまとめて保管しておくと、運営指導と公表制度の報告の両方に使えます。身体的拘束を行った場合の記録と事故の記録は、その完結の日から2年間の保存が義務です(第104条の4第2項)。
本文の条番号・回数・減算・Q&Aの問番号は、次の一次資料の原文で2026年10月22日に確認しました。各資料へのリンクは記事末尾の「出典(一次資料)」にあります。法令・介護報酬は改定されます。最終的な適用は指定権者(都道府県・市区町村)へご確認ください。
- 平成11年厚生省令第37号(指定居宅サービス等基準):第98条第3号・第4号、第101条第3項・第4項、第103条、第104条第2項、第104条の3、第104条の4第2項、第105条(第30条の2・第33条・第37条の2の準用)。
- 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年度改定の解釈通知の改正):虐待防止・感染症・BCPの研修と訓練の回数、新規採用時の扱い、経過措置、非常災害の具体的計画の範囲。
- 令和6年度介護報酬改定の主な事項:高齢者虐待防止措置未実施減算(1%)、業務継続計画未策定減算(施設・居住系3%/その他1%)と経過措置。
- 令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)問164〜問169:BCPの減算の要件・施行時期・遡り、虐待防止の減算の要件・遡りの扱い。
- 「介護サービス情報の公表」制度の施行について(最終改正 令和8年8月14日)と、令和8年度の運営情報調査票(通所介護):報告の対象、調査の性格、研修記録の確認点、研修・訓練の項目。
- 介護保険施設等運営指導マニュアルの確認項目一覧:通所介護の研修・訓練に関する確認文書。
- 令和8年度介護報酬改定について(介護給付費分科会資料)と介護保険最新情報 Vol.1478:処遇改善加算の拡充の内容と、令和8年6月1日からの適用。
- 厚生労働省リーフレット(改正労働施策総合推進法):カスタマーハラスメント対策の義務化(令和8年10月1日)と講ずべき措置。
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出典(一次資料)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
- 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年度改定・解釈通知改正)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」(PDF)
- 介護保険最新情報 Vol.1225(令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)・令和6年3月15日)
- 厚生労働省老健局「「介護サービス情報の公表」制度の施行について」(老振発第0331007号・最終改正 令和8年8月14日 老認発0814第1号)
- 厚生労働省「介護サービス情報公表制度」(令和8年度の別添1〜7=別添2 調査票 運営情報〔通所介護〕を収録・2026年10月22日確認)
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」別添 確認項目及び確認文書(令和6年7月改訂・PDF)
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」(社会保障審議会介護給付費分科会 第253回 資料1・令和8年1月16日)
- 介護保険最新情報 Vol.1478(「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」の一部改正=令和8年6月1日から適用・令和8年3月13日)
- 厚生労働省リーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」
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