認知症介護基礎研修の義務化とは?対象・免除と、受けさせないとどうなるか(減算・指導・外国人職員/2026年版)
更新日:2026-10-22・約14分で読めます
認知症介護基礎研修(認知症基礎研修)は、無資格で介護に直接携わる職員に受講させるための措置が事業所の義務です(令和6年4月から完全義務化)。対象・免除、採用後1年の猶予、受けさせない場合の扱い(減算の有無・運営指導での指摘・勧告から指定取消しまでの流れ)、外国人職員の扱いを、国の通知・Q&Aの原文で整理しました。
まず結論:受講させる「措置」が事業所の義務。未受講は減算ではなく運営基準の問題
認知症介護基礎研修は、運営基準(省令)により、介護に直接携わる職員のうち医療・福祉関係の資格を持たない人に「受講させるために必要な措置を講じる」ことが事業所に義務づけられている研修です(例:通所介護=平成11年厚生省令第37号 第101条第3項。条番号はサービス種別ごとに異なります)。令和3年度の介護報酬改定で導入され、3年間の経過措置が令和6年3月31日で終わったため、令和6年(2024年)4月から完全義務化されています。
「受けさせないとどうなるか」を先にまとめると、確認できた一次資料の範囲では、未受講を理由に介護報酬が減算される仕組みは見当たりません。一方で、国のQ&A(令和6年3月)は、介護に直接携わる職員が受講していない場合を「運営基準違反にあたる」と答えています。運営指導の確認項目にも入っており、指摘されれば改善を求められ、基準違反が続けば介護保険法にもとづく勧告・命令・指定の取消し等の対象になり得ます。
ただし、新たに採用した無資格の職員には採用後1年の猶予があり、未受講の人を雇うこと自体は違反ではありません。以下、対象と免除、減算と指導の扱い、受講管理の記録、猶予の数え方、外国人職員の順に整理します。
対象になる職員・ならないサービス
対象は「医療・福祉関係の資格を持たず、介護に直接携わる」職員です。国のQ&Aでは、人員基準より多く配置している(加配の)職員でも、介護に直接携わるなら人員配置基準上の員数に数えるかどうかにかかわらず対象とされています。逆に、直接介護に携わる可能性がない人や、現在介護現場で就業していない人は対象外です(受講すること自体は差し支えないとされています)。
判断は「サービス類型が対象か」→「その職員が資格を持っているか」の2段階で行うと取り違えを防げます。対象の類型でも介護福祉士などの有資格者は個人として対象外になり、対象外の類型(訪問系など)なら無資格の職員でも義務はかかりません。
- 対象の職員:介護に直接携わる、医療・福祉関係の資格を持たない職員(人員配置基準上の員数に数えるかどうかを問わない)。
- 対象外の職員:直接介護に携わる可能性がない人(事務職など)、現在介護現場で就業していない人、介護保険の対象外の施設(特定施設ではない有料老人ホームなど)や病院に勤務する職員。
- 対象外のサービス:訪問系(訪問入浴介護を除く)・福祉用具貸与・特定福祉用具販売・居宅介護支援。
- 対象のサービス:施設系・通所系・短期入所系・多機能系・認知症グループホーム・特定施設など。
免除される資格・免除にならない資格
資格のカリキュラムで認知症介護の基礎的な知識・技術を学んでいる人は、義務づけの対象外(いわゆる免除)です。解釈通知に挙がっている資格と、国のQ&Aで個別に示された扱いは次のとおりです。
- 対象外(解釈通知):看護師・准看護師、介護福祉士、介護支援専門員、実務者研修・介護職員初任者研修・生活援助従事者研修の修了者、介護職員基礎研修課程・訪問介護員養成研修一級課程・二級課程の修了者、社会福祉士、医師、歯科医師、薬剤師、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士、精神保健福祉士、管理栄養士・栄養士、あん摩マッサージ師・はり師・きゅう師など。
- 対象外として差し支えない(Q&A):柔道整復師・歯科衛生士、認知症介護実践者研修・実践リーダー研修・指導者研修などの修了者、福祉系高校の卒業者(卒業証明書で確認)、養成施設で認知症に係る科目を受講した人(卒業証明書と履修科目証明書で事業所・自治体が確認できることが条件)。
- 免除にならない(Q&A):日本以外の国の医療・福祉系の資格、訪問介護員(ヘルパー)研修3級課程の修了者、社会福祉主事、民間事業者が実施する認知症関連の資格、認知症サポーター等養成講座の修了者。
受けさせないとどうなる?(1) 報酬の減算の対象か
確認できた一次資料の範囲では、認知症介護基礎研修の未受講を理由とする減算は見当たりません。根拠にした資料と、そこで確認できたことは次のとおりです。
ただし、介護報酬の算定基準(告示)の全文と、各自治体の独自の運用までは本記事で照合できていません。また、減算がないことは「受けさせなくてよい」という意味ではありません。次に述べるとおり運営基準違反として指導の対象になります。名前の似た「研修」がからむ減算(高齢者虐待防止措置未実施減算は、委員会・指針・研修・担当者の措置が要件)とは別のものとして管理してください。
- 令和3年度改定の「改定事項」:この義務は【省令改正】(運営基準の改正)として示され、単位数(報酬)の記載はありません。
- 令和6年度改定の「主な事項」「改定事項」:新設された高齢者虐待防止措置未実施減算・業務継続計画未策定減算をはじめ、載っている減算に認知症介護基礎研修を要件とするものはなく、この研修についての記載自体が見当たりません。
- 国のQ&A(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問159・問160):未受講の扱いを「運営基準違反にあたるか」という形で答えており、報酬の減算には触れていません。
受けさせないとどうなる?(2) 運営指導での指摘から、勧告・命令・指定取消しまで
介護事業所への行政の関わりは、大きく「指導」と「監査」に分かれます。厚生労働省の運営指導マニュアルによると、運営指導は介護保険法第23条・第24条の権限にもとづく行政指導です。マニュアルが参考として示す整理では、法令や基準に違反していれば期限を定めて改善報告を求める「文書指導」、違反が軽微な場合などは「口頭指導」となり、違反がない場合の「助言」もあります(実際の運用は行政機関によって異なります)。
認知症介護基礎研修は、運営指導の確認項目に入っています。通所介護などの「勤務体制の確保等」の項目に「認知症介護に係る基礎的な研修を受講させるため必要な措置を講じているか」とあり、確認文書として「研修の計画及び実績がわかるもの」が挙げられています。
基準違反が疑われる場合などは、介護保険法第76条等の報告・立入検査の権限にもとづく「監査」になります。厚生労働省の監査指針は、指定基準違反が確認された場合の措置を次のように定めています。
これは運営基準違反全般に共通する手続きの流れで、認知症介護基礎研修の未受講だけで直ちに取消しになると定めたものではありません。どの段階の措置をとるかは、違反の内容や改善の状況をみて指定権者(都道府県・市町村)が判断します。運営指導の時点で「誰が対象で、誰がいつ受講したか(いつまでに受講させるか)」を示せる状態にしておくのが現実的な備えです。
- 勧告:期限を定めて、文書で基準の遵守などの措置をとるよう勧告する。期限内に従わないときは、その旨を公表できる。
- 命令:正当な理由なく勧告に係る措置をとらなかったときは、期限を定めて措置をとるよう命令し、その旨を公示する。
- 指定の取消し等:違反の内容等が介護保険法第77条第1項各号など(サービスの種類によって条が異なる)に当たるときは、指定の取消し、または期間を定めた指定の全部・一部の効力の停止。
「受講させるための必要な措置」とは何をすればよいか
義務の中身は「受講させること」そのものではなく、「受講させるために必要な措置を講じること」です。国のQ&A(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問161)は、例として次の3つを挙げ、ほかにも様々な措置を想定しているとしています。
研修は都道府県や指定を受けた法人が実施するもので、受講方法(eラーニング、双方向のオンライン研修、集合研修)、料金(補助の有無など)、受講枠は実施主体によって異なる場合があります(令和3年度改定 Q&A Vol.3 問9)。所在地の都道府県の案内で、申込方法(事業所としての登録が必要な場合があります)と費用を確認しておきましょう。
- 受講料の負担。
- 勤務時間内に受講できるような配慮(シフトの調整など)。
- インターネット環境の整備など。
運営指導で見られる受講管理の記録
運営指導では、確認文書として「研修の計画及び実績がわかるもの」が求められます(運営指導マニュアル別添「確認項目及び確認文書」)。認知症介護基礎研修は外部で受ける研修なので、事業所内研修の実施記録とは別に、職員ごとの受講状況を一覧で示せるようにしておくのが実務的です。次の4点をそろえておくと説明しやすくなります。
本サイトの無料キット「認知症介護基礎研修の受講案内」には、氏名・職種・受講方法(実施主体)・修了(受講)日・修了番号/備考の欄がある受講記録様式があり、登録不要で画面表示・印刷できます(採用日や受講期限は備考欄に書き添えてください)。事業所名を毎回書く手間を省きたい場合は、受講案内(Word)と受講記録様式(Excel)を編集できる版(有料)もあり、事業所名を一度入れると両方のファイルに入った状態で受け取れます。無料版はこのすぐ下のキットから、編集できる版は同じキットのページから選べます。
- 対象者の把握:介護に直接携わる職員ごとに、資格の有無と、免除の根拠になる資格証・修了証の写し。
- 受講の実績:氏名・職種・受講方法(実施主体)・修了日・修了番号と、修了証の写し。
- 受講の計画:未受講の人の採用日・受講期限(採用後1年)・受講予定。
- 講じた措置:受講料を事業所で負担した、勤務時間内に受講できるようシフトを調整した、などのメモ。
採用後1年の猶予の数え方
新卒採用・中途採用を問わず、新たに採用した医療・福祉関係の資格を持たない職員には、採用後1年間の猶予期間があります(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問159)。令和3年度改定時の解釈通知では「採用後1年を経過するまでに認知症介護基礎研修を受講させる」とされていました。
期限の具体的な日付の数え方(採用日を1日目に数えるかなど)や、法人内の異動・配置換えで新たに介護に直接携わることになった職員の扱いは、国の資料では確認できませんでした。迷う場合は指定権者に確認し、期限に余裕をもって受講させるのが安全です。
- 起点は採用日:新卒・中途を問わず、事業所が採用した日から1年が猶予の期間。
- 猶予中も働ける:未受講の人を介護に直接携わる職員として雇用しても運営基準違反にはあたらない(同 問159)。期限までに受講させる。
- 猶予があるのは「新たに採用した」職員:以前から在籍している対象職員については、経過措置が令和6年3月31日に終わっており、採用後1年の猶予は当てはまらない。
- 受講済みの人:受講は1回で更新の定めはないため、修了証の写しで受講済みを確認して記録する。
外国人職員の扱い
外国人の職員も対象です。国のQ&A(令和3年度改定 Q&A Vol.3 問7)では、EPA介護福祉士や在留資格「介護」など医療・福祉関係の資格を持つ人を除き、直接介護に携わる可能性がある従業者は、在留資格にかかわらず義務づけの対象とされています。母国の医療・福祉系の資格は免除の理由になりません(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問155)。
国のQ&Aが参考として挙げる、認知症介護研究・研修仙台センターの認知症介護基礎研修eラーニングの受講サイトでは、2026年10月22日に確認した時点で、受講する言語として日本語・やさしい日本語のほか、英語・ベトナム語・インドネシア語・中国語・ビルマ語・タガログ語・ネパール語が選べるようになっており、字幕・音声ガイド付きで受講できることも案内されています。どの実施主体の研修を受けるかは都道府県によって異なる場合があるため、所在地の案内で確認してください。
- 技能実習生:法令等で受講が義務づけられる研修のため、技能実習計画への記載は不要。受講にかかる給与や時間の管理は通常の技能実習と同様に行い、受講状況は技能実習指導員が管理する(令和3年度改定 Q&A Vol.3 問8)。
- 入国後講習中の技能実習生:入国後講習の期間中は業務に従事させないこととされているため、受講させることはできない(同 問9)。
- 日本語以外の教材:国のQ&A(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問163)は、英語・ベトナム語・インドネシア語・中国語・ビルマ語のeラーニングシステムと、日本語能力試験のN4レベルを基準とした教材を整備しているとしている。
受講は1回——虐待防止・BCPのような毎年の反復研修ではない
虐待防止の研修やBCPの研修・訓練が「年1回以上」「年2回以上」と毎年繰り返すものなのに対し、認知症介護基礎研修は対象職員1人につき受講1回で、更新の定めはありません。年間研修計画では「今年度に何回実施したか」ではなく、「まだ受講していない対象職員が何人いて、それぞれの期限はいつか」という残数で管理します。新しく無資格の職員が入るたびに、受講済みかどうかを個別に確認する運用が実務的です。
「認知症介護基礎研修」と、その先の研修との違い
義務化されているのは、無資格の職員が最初に受ける入り口の「認知症介護基礎研修」です。その先に、より実践的な「認知症介護実践者研修」、指導的な立場に向けた「認知症介護実践リーダー研修」「認知症介護指導者養成研修」といった段階があり、これらの修了者は基礎研修の義務づけの対象外として差し支えないとされています(令和3年度改定 Q&A Vol.3 問4)。
一方、認知症サポーター等養成講座は、認知症の人や家族を温かく見守り支援する応援者を養成するもので、目的・内容が異なるため、修了していても義務づけの対象外にはなりません(同 問5)。
2026年時点の状況
経過措置(令和3年改正省令附則第5条・3年間)は令和6年3月31日で終了し、現在は完全義務化された状態です。令和6年度改定の解釈通知の改正(新旧対照表)では、経過措置と採用後1年の猶予を説明していた段落が削除されましたが、同じ令和6年3月に出された国のQ&A(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問155〜問163)で、採用後1年の猶予、「必要な措置」の例、免除の範囲、日本語以外の教材が改めて示されています。
あわせて、令和3年度改定 Q&A Vol.3 の問6(人員配置基準上の員数に数えない職員の扱い)と問10(多言語教材の予定)は削除され、問160・問163に置き換わっています。本記事は2026年10月22日に下の一次資料の原文を確認して更新しました。受講料の補助や申込方法などは自治体ごとに異なるため、指定権者の最新の案内もあわせて確認してください。
一次資料一覧(この記事で確認した箇所)
本文の義務・条番号・Q&Aの問番号は、次の一次資料の原文で確認しました。各資料へのリンクは、記事末尾の「出典(一次資料)」にまとめています。
- 指定居宅サービス等の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)第101条第3項:通所介護の受講措置の義務(他の類型は各基準の該当条)。
- 令和3年度介護報酬改定における改定事項について:義務づけの導入(【省令改正】)、経過措置3年、新入職員の猶予1年。
- 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年度改定の解釈通知の改正):対象外となる資格、採用後1年の猶予。
- 介護保険最新情報 Vol.952(令和3年度改定 Q&A Vol.3 問3〜問9):免除の扱い、外国人職員、技能実習生。
- 介護保険最新情報 Vol.1213(令和6年度改定の解釈通知の改正):経過措置の段落の削除。
- 介護保険最新情報 Vol.1225(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問155〜問163):雇用と運営基準違反、必要な措置、日本語以外の教材。
- 令和6年度介護報酬改定の主な事項について/改定事項について:新設・見直しされた減算。
- 介護保険施設等運営指導マニュアル(本文・別添 確認文書・確認項目一覧):指導の根拠、確認項目と確認文書。
- 介護保険施設等の指導監督について(厚生労働省老健局長通知・別添2 監査指針):勧告・命令・指定の取消し等。
- 認知症介護研究・研修仙台センター「認知症介護基礎研修 eラーニング」:受講言語の選択肢(2026年10月22日確認)。
この記事を書いたチームは、note でも介護の仕事で考えたことを書いています。note をフォローする
出典(一次資料)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
- 厚生労働省「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)
- 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年度改定・解釈通知改正)
- 介護保険最新情報 Vol.952(令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)・令和3年3月26日)
- 介護保険最新情報 Vol.1213(令和6年度改定・解釈通知等改正)
- 介護保険最新情報 Vol.1225(令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)・令和6年3月15日)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定の主な事項について」(PDF)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」(令和6年7月改訂)
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」別添 確認項目及び確認文書(令和6年7月改訂・PDF)
- 厚生労働省老健局長通知「介護保険施設等の指導監督について」(老発0331第6号・最終改正 令和6年3月26日/別添1 介護保険施設等指導指針・別添2 介護保険施設等監査指針)
- 認知症介護研究・研修仙台センター「認知症介護基礎研修 eラーニングのご案内」(受講言語の選択肢・2026年10月22日確認)
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