定期巡回・随時対応型訪問介護看護の研修 必須項目 2026|年何回・認知症介護基礎研修の規定がない理由・一体型と連携型・減算2つとさかのぼり
更新日:2026-10-27・約27分で読めます
定期巡回・随時対応型訪問介護看護(地域密着型サービス)で運営基準が研修・訓練の実施を義務づけているのは、高齢者虐待防止・感染症の予防とまん延の防止・業務継続計画(BCP)の3分野で、回数はいずれも年1回以上です。身体的拘束等は「禁止と記録」、ハラスメントは「措置」の義務で、通所系と違い、無資格者に認知症介護基礎研修を受講させる措置を求める文言は条文に見つかりませんでした。条番号(平成18年厚生労働省令第34号の第一章の二)、新規採用時の3段階、減算2つ(いずれも1%)とさかのぼり、一体型・連携型・夜間対応型ごとの考え方を、省令・解釈通知・算定構造・国のQ&Aの原文で整理しました(2026年10月時点)。
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まず結論:研修・訓練の義務は3分野で年1回以上。認知症介護基礎研修の規定は置かれていない
定期巡回・随時対応型訪問介護看護(以下「定期巡回」)は、介護保険法第8条第15項に定める地域密着型サービスで、事業者を指定するのは市町村長です(同法第42条の2第1項)。運営基準は平成18年厚生労働省令第34号の第一章の二(第3条の2から第3条の42)にあり、運営に関する基準が第四節(第3条の7から第3条の40)、連携型の特例が第五節(第3条の41・第3条の42)です。夜間対応型訪問介護は同じ省令の第二章(第4条から第18条)で、章が別です。
研修や訓練の実施が条文に書かれているのは、①高齢者虐待防止(第3条の38の2第3号)、②感染症の予防とまん延の防止(第3条の31第3項第3号)、③業務継続計画(BCP)(第3条の30の2第2項)の3分野です。条文には「定期的に」とあるだけで、回数は解釈通知(老計発第0331004号)が年1回以上と示しています。国のQ&A(介護保険最新情報 Vol.1345)は、虐待防止の研修を年に1回以上とするサービスの一覧に「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」と「夜間対応型訪問介護」を入れています。感染症とBCPは、研修に加えて訓練(シミュレーション)も年1回以上です。
通所系や施設系と大きく違う点があります。勤務体制の確保等(第3条の30)は、研修の機会の確保(第4項)とハラスメント防止の措置(第5項)までで、介護に直接携わる無資格者に認知症介護基礎研修を受講させる措置を求める文言は、e-Gov の現行版(令和7年4月1日施行の版)の条文に見つかりませんでした。理由として読める条文の構造は、後の節で説明します。
研修の義務ではないものも先に押さえておくと迷いません。身体的拘束等は「原則禁止と記録」だけが義務で、委員会・指針・研修の義務はありません。事故防止の委員会・指針・研修・担当者も、定期巡回の運営基準に規定が見つかりません(事故が起きた後の連絡・記録・賠償は義務です)。減算は2つで、高齢者虐待防止措置未実施減算と業務継続計画未策定減算が、どちらも所定単位数の1%です。BCPの減算が始まったのは、通所系の施行(令和6年4月)より1年遅い令和7年4月です。
早見表:条番号・回数・新規採用時・減算
条番号は平成18年厚生労働省令第34号です。回数と新規採用時の扱いは解釈通知、減算は令和6年度介護報酬改定によります。虐待防止・感染症・BCPは、令和3年度改定で義務づけられた後の3年間の経過措置が令和6年3月31日で終わり、令和6年4月から完全義務です。
- 高齢者虐待防止【義務】第3条の38の2:委員会(定期的)・指針・研修(定期的)・担当者の4つ。研修は年1回以上と、新規採用時に必ず。どれかが欠けると所定単位数の1%減算。運営規程にも「虐待の防止のための措置に関する事項」を定めます(第3条の29第8号)。
- 感染症の予防とまん延の防止【義務】第3条の31第3項:委員会(おおむね6月に1回以上)・指針・研修と訓練(定期的)。研修と訓練は各年1回以上で、新規採用時の研修は「望ましい」。研修・訓練の未実施そのものへの減算は、確認した範囲ではなし。
- 業務継続計画(BCP)【義務】第3条の30の2:感染症と災害の計画の策定、周知、研修・訓練(各年1回以上)、定期的な見直し。新規採用時は別に研修を実施するのが「望ましい」。未策定は所定単位数の1%減算(始まりは令和7年4月)。
- 研修の機会の確保・ハラスメント対策【措置義務】第3条の30第4項・第5項:倫理・法令遵守の研修はこの枠。回数の定めなし。
- 身体的拘束等【禁止と記録が義務】第3条の22第8号・第9号:行う場合は態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録。委員会・指針・研修の規定なし、減算なし。
- 認知症介護基礎研修【規定が見つからない】第3条の30にも他の条にも、受講させる措置の文言なし。
- 事故発生時の対応【連絡・記録・賠償が義務】第3条の38:委員会・指針・研修・担当者の規定なし。
- 秘密保持等【義務】第3条の33:従業者でなくなった後も漏らさないための措置、個人情報を用いる場合の文書同意。研修の義務規定は、確認した範囲では見当たりません。
根拠:第一章の二の構造。一体型・連携型・夜間対応型の位置づけ
介護保険法第8条第15項は、定期巡回を2つに分けています。第1号は、定期的な巡回訪問や随時の通報による介護と、看護師等による療養上の世話・診療の補助を行うもの(事業所が看護も担う、いわゆる一体型)、第2号は、訪問看護を行う事業所と連携しつつ介護を行うもの(連携型)です。
省令第3条の41は、連携型について、看護職員に関する人員の規定(第3条の4第1項第4号・第9項・第10項・第12項)、主治の医師との関係(第3条の23)、訪問看護サービスの利用者に係る計画の記載等(第3条の24第4項・第5項)、訪問看護報告書(同条第10項から第12項まで)、記録の保存のうち主治の医師の指示の文書と訪問看護報告書(第3条の40第2項第3号・第4号)を適用しないと定めています。研修に関わる第3条の22(具体的取扱方針)、第3条の30(勤務体制)、第3条の30の2(BCP)、第3条の31(衛生管理等)、第3条の38の2(虐待の防止)は、この除外の列挙に入っていません。条文を読む限り、研修・訓練の義務は一体型も連携型も同じ型です。
連携型は、第3条の42により、訪問看護事業者と連携し、契約に基づいてアセスメント、随時対応サービスの連絡体制の確保、介護・医療連携推進会議への参加などの協力を得ることが求められます。連携先の看護職員は、連携先の訪問看護事業所の従業者です。その研修は連携先の運営基準(訪問看護)で整理されるため、この記事の範囲は自事業所の従業者に限ります(訪問看護の整理は、同じ類型まとめの訪問看護の記事を参照してください)。
解釈通知(老計発第0331004号)は、定期巡回の項に、勤務体制の確保等・業務継続計画・衛生管理等・虐待の防止などの留意点を個別に書いています。地域密着型通所介護や認知症対応型通所介護の項とは別なので、通所系の記事の条番号や解説をそのまま当てはめるのは避けてください。夜間対応型訪問介護は、省令第18条が定期巡回の条文を準用する形で、後の節で説明します。
研修ごとの原文:委員会・指針・研修・訓練の中身
3分野の中身を、解釈通知の言葉で並べます。委員会の開催、指針の整備、研修と訓練は、事業所に実施が求められるものですが、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えないとされています。
- 虐待防止の委員会:管理者を含む幅広い職種で構成し、構成メンバーの責務と役割分担を明確にして、定期的に開催します。テレビ電話装置等を活用でき、他の会議体を設置している場合は一体的に設置・運営して差し支えありません。事業所外の虐待防止の専門家を委員として活用することが望ましいとされています。検討事項には、研修の内容、従業者が相談・報告できる体制、市町村への通報が迅速かつ適切に行われる方法、発生時の原因分析と再発防止策、その効果の評価が挙がっています。
- 虐待防止の指針:事業所における虐待の防止に関する基本的考え方、委員会その他の組織、職員研修の基本方針、発生時の対応方法、相談・報告体制、成年後見制度の利用支援、苦情解決方法、利用者等への閲覧、その他の9項目を盛り込みます。
- 虐待防止の研修:虐待等の防止に関する基礎的内容の普及・啓発と、事業所の指針に基づく虐待防止の徹底を行います。指針に基づく研修プログラムを作成し、定期的な研修(年1回以上)を実施するとともに、新規採用時には必ず虐待の防止のための研修を実施することが重要とされ、実施内容は記録します。事業所内での研修で差し支えありません。
- 虐待防止の担当者:委員会・指針・研修を適切に実施するための担当者を置きます。委員会の責任者と同一の従業者が務めることが望ましいとされています。令和6年度改正の新旧対照表で、同一事業所内での複数の担当の兼務や、他の事業所・施設等との兼務は、担当者としての職務に支障がなければ差し支えないという記述が加わりました。ただし、日常的に兼務先の業務に従事し、利用者や事業所の状況を適切に把握している者など、職務の遂行に支障がないと考えられる者を選ぶこととされています。
- 感染症の委員会:感染対策の知識を有する者を含む幅広い職種での構成が望ましく、外部の者の参画も望ましいとされています。感染対策担当者を決めておくことが必要で、おおむね6月に1回以上、定期的に開催し、感染症が流行する時期等を勘案して必要に応じて随時開催します。
- 感染症の指針:平常時の対策(事業所内の衛生管理、ケアにかかる感染対策)と、発生時の対応(状況の把握、感染拡大の防止、関係機関との連携、行政等への報告)を定めます。
- 感染症の研修と訓練:研修は感染対策の基礎的内容の普及・啓発と、指針に基づく衛生管理の徹底が目的で、年1回以上行い、実施内容を記録します。厚生労働省の研修教材等を使い、事業所内で行って差し支えありません。訓練は発生を想定して定期的(年1回以上)に行い、机上を含め手法は問わないものの、机上と実地を適切に組み合わせるのが適切とされています。
- BCPの策定と研修・訓練:感染症に係る計画と災害に係る計画の両方を作り、従業者に周知します。研修は計画の具体的内容を職員間で共有し、平常時と緊急時の対応の理解を促すもので、年1回以上行い、記録します。訓練も年1回以上です。感染症のBCPの研修・訓練は、感染症の予防とまん延の防止の研修・訓練と一体的に実施して差し支えありません。研修・訓練は、全ての従業者が参加できるようにすることが望ましいとされています。感染症と災害の計画を一体的に策定することも妨げられていません。
新規採用時の研修:必ず行うのは虐待防止だけ。感染症とBCPは「望ましい」
定期巡回の研修を、新規採用時の扱いで分けると、次の3段階になります。省令は新規採用時の研修を書いていないため、この区別は解釈通知の書き方によります。
- 「必ず…実施することが重要」:高齢者虐待防止。新しく採用した従業者に、早い時期に虐待防止の研修を行います。
- 「望ましい」:感染症(新規採用時には感染対策研修を実施することが望ましい)とBCP(新規採用時には別に研修を実施することが望ましい)。
- 新規採用時の定めがないもの:身体的拘束等(研修自体が義務ではありません)、事故発生時の対応、秘密保持、ハラスメント対策、研修の機会の確保。措置は義務ですが、「新規採用時に研修」という定めはありません。
認知症介護基礎研修の規定が置かれていない——通所系との違いと、条文の構造
認知症介護基礎研修は、介護に直接携わる職員のうち医療・福祉関係の資格を持たない人に、受講させるために必要な措置を講じることを事業者に義務づける仕組みです。地域密着型通所介護の第30条第3項後段が、その例です。解釈通知の地域密着型通所介護の項も、医療・福祉関係の資格を有さない者について認知症介護基礎研修を受講させるために必要な措置を講じることを義務づけたものだと書いています。
これに対し、定期巡回の勤務体制の確保等(第3条の30)は、第1項が勤務の体制、第2項が自事業所の従業者によるサービス提供の原則(一部を他の指定訪問介護事業所等の従業者に行わせる例外つき)、第3項が随時対応サービスの複数事業所での一体的実施、第4項が研修の機会の確保、第5項がハラスメント防止の措置です。認知症介護基礎研修に当たる文言は、この5つの項にありません。第3条の7から第3条の40までの他の条にも、見つかりませんでした。
条文の構造から、理由として読める点が一つあります。第3条の3第1号は、定期巡回サービスを行う「訪問介護員等」を、介護福祉士、または介護職員初任者研修課程を修了した者と定めています。看護師等も、保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士です。オペレーターは、看護師、介護福祉士その他厚生労働大臣が定める者(第3条の4第2項)です。無資格で介護に直接携わる人が、条文上はそもそも想定されていない構成だと読めます(当社の整理)。
当サイトの研修一覧表でも、訪問系は認知症介護基礎研修を「対象外」と表示しています。ただし、同じ法人が通所介護や訪問入浴介護など、受講させる措置が義務づけられているサービスを運営している場合は、そちらの事業所で対象になります。事業所ごとに、どのサービスの従業者かを分けて確認してください。
身体的拘束等は研修の義務ではなく「禁止と記録」:第3条の22第8号・第9号
第3条の22第8号は、利用者または他の利用者等の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならないとし、第9号は、行う場合にその態様及び時間、その際の利用者の心身の状況並びに緊急やむを得ない理由を記録することを求めています。委員会の設置・指針の整備・研修の実施は、条文にありません。
解釈通知(令和6年度改正)は、緊急やむを得ない理由について、切迫性、非代替性及び一時性の3つの要件を満たすことを、組織等としてこれらの要件の確認等の手続きを極めて慎重に行い、その具体的な内容を記録しておくことが必要だとしています。この記録は、第3条の40第2項第5号により、その完結の日から2年間保存します。
国のQ&A(Vol.1345 問3)は、3要件の意味を、切迫性は「利用者本人又は他の利用者の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと」、非代替性は「身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと」、一時性は「身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること」と示しています。同じ問は、訪問系サービス及び通所系サービス等では減算の適用はないが、要件を満たした記録の確認ができない場合は指導の対象になることに留意するよう書いています。国の算定構造の定期巡回の欄にも、身体拘束廃止未実施減算の列は見当たりません。
訪問先では、施設のように複数の職員が常に同じ場にいるとは限りません。虐待防止の研修の中で、身体的拘束等に当たる行為と、記録の手順を一緒に確認しておくと、抜けを防げます。これは法令の定めではなく、当サイトの編集上の提案です。
研修以外の義務:研修の機会・ハラスメント・事故・秘密保持・連携推進会議・掲示
次の項目は、研修の回数の定めがない、または研修の義務ではないものです。年間計画に一緒に入れておくと漏れを防げます。
- 研修の機会の確保【第3条の30第4項・義務】:定期巡回従業者の資質の向上のために、その研修の機会を確保します。回数の定めはありません。定期巡回の項に、この項の趣旨を述べた解釈通知の文は抄の範囲で確認できませんでした。地域密着型通所介護の項は、研修機関が実施する研修や事業所内の研修への参加の機会を計画的に確保することと書いており、同じ趣旨と読むのが自然です(当社の整理)。
- ハラスメント対策【第3条の30第5項・措置義務】:職場において行われる性的な言動または優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、従業者の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じます。研修は措置の手段の一つです。解釈通知は、事業主の方針の明確化と周知・啓発、相談への対応のための窓口をあらかじめ定めることを挙げ、介護現場では利用者やその家族等からのカスタマーハラスメントの防止が求められているとして、国の「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」等を参考にした取組が望ましいとしています。
- 事故発生時の対応【第3条の38・義務】:事故が起きた場合に、市町村、家族、居宅介護支援事業者等へ連絡し、必要な措置を講じ、事故の状況と処置を記録し、賠償すべき事故では損害賠償を速やかに行います。事故防止の委員会・指針・研修・担当者は、定期巡回の運営基準に規定が見つかりません。
- 秘密保持等【第3条の33・義務】:従業者が正当な理由なく業務上知り得た利用者や家族の秘密を漏らさないこと、従業者でなくなった後も漏らさないための措置、サービス担当者会議等で個人情報を用いる場合にあらかじめ文書により同意を得ることが定められています。研修の義務規定は、確認した範囲では見当たりません。
- 介護・医療連携推進会議【第3条の37・義務】:利用者、家族、地域住民の代表者、地域の医療関係者、市町村職員または地域包括支援センター職員、定期巡回について知見を有する者等で構成する会議を設置し、おおむね6月に1回以上、提供状況等を報告して評価を受け、要望・助言を聴く機会を設けます。報告、評価、要望、助言等の記録を作成して公表します(第2項)。研修の義務ではありませんが、毎年の運営の計画に入れる項目です。
- 運営規程・掲示【第3条の29・第3条の32・義務】:運営規程に、緊急時等における対応方法、合鍵の管理方法と紛失した場合の対処方法、虐待の防止のための措置に関する事項などを定めます。重要事項は事業所の見やすい場所に掲示し、原則としてウェブサイトにも掲載します(第3条の32第1項・第3項)。
- 合鍵の管理【第3条の22第11号・義務】:利用者から合鍵を預かる場合は、管理を厳重に行い、管理方法、紛失した場合の対処方法その他必要な事項を記載した文書を利用者に交付します。訪問が中心のサービスなので、研修の題材に入れる例があります(当社の整理)。
- 自己評価・結果の公表【第3条の21第2項・義務】:自らそのサービスの質の評価を行い、結果を公表し、常に改善を図ります。
しないとどうなる?減算は2つ(各1%)。BCPは令和7年4月からさかのぼる
率は、厚生労働省の「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(高齢者虐待防止措置未実施減算は所定単位数の100分の1、業務継続計画未策定減算は施設・居住系サービスが100分の3、その他のサービスが100分の1)と、介護報酬の算定構造(定期巡回・随時対応型訪問介護看護費の欄に「-1/100」が2つ並ぶ)によります。算定の考え方は留意事項通知(老計発第0331005号。令和6年度改正)、始まりとさかのぼりは国のQ&A(令和6年度介護報酬改定 Q&A Vol.1〔介護保険最新情報 Vol.1225〕問164〜問170)によります。減算は利用者全員が対象で、虐待があったかではなく、措置を講じているかで判定されます。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算【所定単位数の1%】:虐待が発生した場合ではなく、第3条の38の2の措置を講じていない場合に、利用者全員について減算します。委員会を定期的に開催していない、指針を整備していない、年1回以上の研修を実施していない、担当者を置いていない、という事実が生じたとき、速やかに改善計画を市町村長に提出し、事実が生じた月から3月後に改善状況を報告します。減算は、事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで続きます(留意事項通知)。
- 虐待防止の減算の注意点:4つの措置の一つでも欠ければ減算の対象です(問167)。運営指導で把握した事実が過去のものでも、さかのぼって適用はされず、発見した日の属する月が「事実が生じた月」です(問168)。改善計画の提出の有無にかかわらず、事実が生じた月の翌月から減算でき、3か月以降に改善が認められた月まで続きます(問169)。
- 業務継続計画未策定減算【所定単位数の1%】:感染症または災害のどちらか、または両方の計画が未策定で、かつ計画に従った措置も講じられていない場合に、利用者全員について減算します(問164)。周知・研修・訓練・見直しの有無は、この減算の要件ではありません。事実が生じた月の翌月(初日なら当該月)から、解消された月まで続きます(留意事項通知)。
- BCP減算の始まり:施行時期の表(問165)で、定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護は、訪問介護・訪問看護などと同じ「令和7年4月」のグループです。通所介護などの「令和6年4月」(令和7年3月31日までは感染症の指針と非常災害の具体的計画があれば適用しない)とは別の時期です。留意事項通知は、定期巡回について、令和7年3月31日までの間は減算を適用しないと書いています。
- BCP減算のさかのぼり:行政機関が運営指導で未策定を見つけた時点ではなく、「基準を満たさない事実が生じた時点」まで遡って適用します(問166)。問166は、訪問介護事業所が令和7年10月の運営指導で未策定が判明した場合を、令和7年4月から減算の対象としています。
- 虐待防止の減算の始まり:令和6年度改定の施行日(4月)からと読んでいます。算定構造の定期巡回の欄に、この減算の適用を遅らせる注記は確認した範囲で見当たらず(BCPの欄にだけ「令和7年4月1日から適用」の注記があります)、定期巡回だけについて施行日を個別に書いた国の資料は確認できていません(当社の整理)。
数え方の例:BCPは大きくさかのぼり、虐待防止は発見した月から
令和8年10月の運営指導で、虐待防止検討委員会が一度も開かれていないと分かった場合を考えます。さかのぼらないので「事実が生じた月」は令和8年10月、減算は11月分から始まります。3か月後にあたる令和9年1月に改善状況を報告し、改善が認められた月まで減算が続くため、少なくとも3か月分(11月・12月・1月分)は減算される計算です(問168・問169、当社の計算例)。
同じ運営指導で、感染症と災害のBCPが未策定で、計画に従った措置もないと分かった場合は、問166の訪問介護の例と同じ考え方で、「事実が生じた時点」まで遡及します。定期巡回の施行は令和7年4月なので、少なくとも令和7年4月分から減算の対象になり、運営指導の月の前月(令和8年9月分)までで18か月分に当たります(当社の計算例。解消された月までさらに続きます)。虐待防止の減算が「発見した月」から始まるのに対し、運営指導の時点よりはるか前までさかのぼる点が違いです。
また、BCPを作ってあるのに研修も訓練もしていなかった場合は、減算の要件(計画が未策定で、かつ措置もない)には当てはまらないと読めます(問164)。ただし、研修・訓練は第3条の30の2第2項の義務なので、減算がなくても運営指導では改善を求められます(当社の整理)。
事業所の形ごとの実施:一体型・連携型・複数事業所・勤務帯が分かれる場合
研修の義務の中身は同じですが、従業者の集まり方と、誰が自事業所の従業者かが形によって違います。
- 一体型(看護職員も自事業所の従業者):オペレーター、定期巡回サービスと随時訪問サービスの訪問介護員等、訪問看護サービスの看護師等のすべてが、研修・訓練の対象になる従業者です(第3条の4第1項)。職種が分かれるため、研修の題材は、全職種に共通する虐待防止・感染症・BCPを中心に組むと、日程を合わせやすくなります(当社の提案)。
- 連携型:訪問看護は連携先の事業所が行うため、看護職員は自事業所の従業者ではありません(第3条の41・第3条の42)。連携先との合同開催や、連携先が行う研修への参加を研修とする場合は、参加者と内容が記録で確認できるようにしておくと説明しやすくなります。連携先の研修の扱いを直接示した国の資料は、確認した範囲では見つかりませんでした。
- 勤務帯が分かれる事業所:定期巡回は、オペレーターと随時訪問サービスの訪問介護員等を、提供時間帯を通じて確保する仕組みです(第3条の4第1項第1号・第3号)。夜間や早朝の担当者は、日中の研修に参加しにくいことがあります。全員が同じ日時に集まれない場合に、同じ内容を複数回に分けて開き、回ごとに出席者を記録して全員の受講を示す方法は、当サイトの提案です。どこまでを実施に数えるかは、市町村の案内で確認してください。
- 随時対応サービスを複数の事業所で一体的に行う場合:第3条の30第3項は、市町村長が地域の実情を勘案して適切と認める範囲内で、契約に基づき、随時対応サービスを複数の事業所が一体的に行うことを認めています。この場合の研修を、どの事業所の従業者としてどう数えるかを直接定めた条文は、確認した範囲では見つかりませんでした。一体的実施をしている事業所は、市町村に確認してください。
- 他の事業所の従業者に一部を行わせる場合:第3条の30第2項ただし書により、市町村長が適切と認める範囲内で、契約に基づき、事業の一部を他の指定訪問介護事業所等の従業者に行わせることができます。委託先の従業者の研修を直接定めた条文は、確認した範囲では見つかりませんでした。
- 小規模な事業所:国のQ&A(Vol.1 問170)は、小規模でも虐待防止の委員会と研修を定期的に実施するよう求め、法人内の複数事業所による合同開催、感染症対策委員会等ほかの委員会との合同開催、都道府県や市町村の研修会への参加、複数の小規模事業所による外部講師を活用した合同開催を例に挙げています。合同で行う場合は、参加した各事業所の従事者と実施内容が記録で確認できるようにします。
夜間対応型訪問介護も同じ考え方:第18条が準用する範囲
夜間対応型訪問介護は、省令第二章(第4条から第18条)に定められています。第18条は、第3条の7から第3条の20まで、第3条の25、第3条の26、第3条の30の2から第3条の36まで、第3条の38から第3条の39までの規定を準用しています。BCP(第3条の30の2)、衛生管理等(第3条の31)、秘密保持等(第3条の33)、事故発生時の対応(第3条の38)、虐待の防止(第3条の38の2)が含まれるため、研修・訓練の義務の中身は定期巡回と同じ型です。
夜間対応型に固有の条文は次のとおりです。身体的拘束等の禁止と記録は第10条第5号・第6号、研修の機会の確保とハラスメント防止の措置は第15条第4項・第5項、記録の保存(身体的拘束等の記録を含む)は第17条にあります。認知症介護基礎研修の規定は、これらにもありません。第3条の37(介護・医療連携推進会議)は準用の範囲に入っておらず、第16条は苦情に関する市町村の事業への協力などを定めています。
Q&A(Vol.1345)は、夜間対応型訪問介護も虐待防止の研修を年に1回以上とするグループに入れています。BCPの減算の施行時期(問165)は、定期巡回と同じ令和7年4月のグループです。
2026年の変更:カスハラ対策が10月1日から義務。定期巡回の研修の要件を変える記載は見つからず
カスタマーハラスメント対策は、令和8年10月1日から、改正労働施策総合推進法により、事業主が必ず講じなければならない措置になりました。厚生労働省のリーフレットは、カスタマーハラスメントを毅然とした態度で対応し労働者を保護する旨の方針の明確化と周知・啓発、あらかじめ定めた対処の内容の周知、相談窓口の整備、事実関係の確認、被害者への配慮、再発防止などを措置とし、対処の内容の例に、管理監督者にその場の対応の方針について指示を仰ぐこと、可能な限り労働者を一人で対応させないことなどを挙げています。パワハラ・セクハラ対策(第3条の30第5項の措置)とあわせて、年間計画に入れておくと漏れを防げます。
訪問先で職員が一人になる場面の多い定期巡回では、リーフレットが例に挙げる「可能な限り一人で対応させない」を、夜間の随時訪問を含めてどう実現するかを、方針や手順に書いておくと、研修でも説明しやすくなります(当社の提案)。
令和8年度の介護報酬改定(期中改定)は、厚生労働省の資料(令和8年1月16日の分科会資料)で、処遇改善の拡充と食費の基準費用額の見直しを内容とし、改定率を+2.03%としています。定期巡回・随時対応型訪問介護看護と夜間対応型訪問介護は、処遇改善加算のサービス区分に載っています。確認した範囲では、定期巡回の研修や減算(虐待防止・BCP)の要件を変える記載は見つかりませんでした。処遇改善加算の要件にある「研修の実施等」は、加算を算定するための要件で、運営基準の義務研修とは別です。
記録の残し方と、無料の研修キット
解釈通知は、虐待防止・感染症・BCPのいずれの研修も、実施内容を記録するよう求めています。日時、テーマ、講師、使った資料、出席者を残し、従業者の名簿と対応させておくと、実施状況を後から説明しやすくなります。身体的拘束等を行った場合は、態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由とあわせて、3要件を組織として確認した手続きの内容も記録します。
第3条の40第2項は、定期巡回・随時対応型訪問介護看護計画、提供した具体的なサービスの内容等の記録、主治の医師の指示の文書、訪問看護報告書、身体的拘束等の記録、市町村への通知の記録、苦情の内容等の記録、事故の状況と処置の記録を、その完結の日から2年間保存するよう求めています。研修の実施記録そのものの保存年限を定めた条文は、確認した範囲では見当たりませんでした。保存期間は事業所で決めておくと運用しやすくなります(当社の整理)。
当サイトの「義務研修一覧表」でサービス類型に「訪問系」を選ぶと、この類型に当てはまる研修だけを絞り込んだ一覧と、頻度に応じて月を配置した年間計画表が作れます(無料・登録なし。入力内容はお使いの端末の中にとどまり、外部へは送信されません)。虐待防止・感染症対策・BCP・ハラスメントの各キットには、読み上げ用のレジュメ、確認テスト、実施記録様式、出席簿を一式ご用意しています。なお、一覧表の「訪問系」は訪問介護(平成11年厚生省令第37号)を基準にした表示です。定期巡回は、この記事のとおり省令第34号の第一章の二に条文がありますが、頻度・対象・減算の整理は同じです。
この記事で確認した一次資料
本文の条番号・回数・新規採用時の扱い・減算の率と適用開始日・Q&Aの問番号は、2026年10月27日に次の原文で確認しました(リンクは記事末尾の「出典(一次資料)」)。法令や介護報酬は改定されることがあります。実際の適用は、事業所を指定した市町村の最新の案内でご確認ください。
- 省令:平成18年厚生労働省令第34号(e-Gov の現行版・令和7年4月1日施行)の第3条の2〜第3条の42と第4条〜第18条(夜間対応型訪問介護)。
- 法律:介護保険法(e-Gov の現行版)第8条第15項(定期巡回・随時対応型訪問介護看護の定義。第1号が一体型、第2号が連携型)、第42条の2第1項、第78条の2。
- 解釈通知:老計発第0331004号の令和3年度改正(介護保険最新情報 Vol.934)の定期巡回・随時対応型訪問介護看護の項(勤務体制の確保等・業務継続計画・衛生管理等・地域との連携等・虐待の防止)と地域密着型通所介護の項(認知症介護基礎研修・研修の機会の確保)。令和6年度改正の新旧対照表(別紙11・抄)の定期巡回の項(身体的拘束等・担当者の兼務・経過措置の記述の整理)。
- 報酬:令和6年度介護報酬改定における改定事項について(2つの減算の率と、訪問系サービスのBCP減算の猶予)。介護報酬の算定構造(定期巡回・随時対応型訪問介護看護費の2つの減算と、BCP減算の注記)。留意事項通知(老計発第0331005号)の令和6年度改正抄の定期巡回・随時対応型訪問介護看護費の項。
- Q&A:令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1。介護保険最新情報 Vol.1225)の問164〜問170と、介護保険最新情報 Vol.1345(身体的拘束等の3要件、虐待防止の研修の回数)。
- 2026年の変更:厚生労働省のカスタマーハラスメント対策リーフレット(令和8年10月1日施行)、令和8年度介護報酬改定について(令和8年1月16日の分科会資料)。
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出典(一次資料)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)(第一章の二・第二章の準用・2026年10月27日確認)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)(第8条第15項・第42条の2・第78条の2・2026年10月27日確認)
- 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年度改定・解釈通知改正)(定期巡回の項・地域密着型通所介護の項・2026年10月27日確認)
- 厚生労働省「指定地域密着型サービス及び指定地域密着型介護予防サービスに関する基準について」(老計発第0331004号ほか)令和6年度改正の新旧対照表(別紙11・抄)(2026年10月27日確認)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)(2つの減算の率・2026年10月27日確認)
- 厚生労働省「指定地域密着型サービスに要する費用の額の算定に関する基準及び指定地域密着型介護予防サービスに要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(老計発第0331005号ほか)令和6年度改正の新旧対照表(別紙5・抄)(2026年10月27日確認)
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造」(令和6年4月改定・PDF)(2026年10月27日確認)
- 介護保険最新情報 Vol.1225(令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)・令和6年3月15日)(問164〜問170・2026年10月27日確認)
- 介護保険最新情報 Vol.1345(令和6年度改定 Q&A)(2026年10月27日確認)
- 厚生労働省リーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」(2026年10月27日確認)
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」(社会保障審議会介護給付費分科会 第253回 資料1・令和8年1月16日)(2026年10月27日確認)
【免責事項】本キットは研修実施の参考資料です。法令・運営基準・介護報酬の内容は改定されることがあります。実際の運用にあたっての最終確認は、指定権者(都道府県・市区町村等の自治体)へのご確認をおすすめします。本キットの利用により生じた損害について、当社の損害賠償責任は、故意・重過失を除き購入代金の額を上限とします。