誤嚥・窒息を防ぐ研修の組み立て方|食事介助の事故予防・観察ポイント・起きた時の連絡(2026)
更新日:2026-11-04・約9分で読めます
誤嚥・窒息を防ぐ研修は、事故防止の研修のうち「食事の場面」に絞って、要因の分け方、食事中の観察ポイント、食形態を多職種で決めて全員で守る仕組み、起きた時の報告と医療職への連絡の流れ、研修後の確認までを1回で通すものです。この記事は、運営基準・解釈通知・事故予防のガイドライン(令和7年11月)・事故報告の標準様式をページ番号つきで確かめ、60〜90分の研修の組み立て方を整理しました(2026年11月時点)。救急の手当ての手順、吸引、嚥下の評価方法などの医療的な内容は書いていません。これらは所定の研修と、看護師・言語聴覚士・医師などの医療職に確認してください。
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研修キット(レジュメ・確認テスト・記録様式)
まず結論:事故防止の研修の1回を「食事の場面」に絞って組み立てる
事故予防のガイドライン(令和7年11月)は、介護施設等でよく起きる事故として、転倒・転落、誤嚥・窒息、異食、誤薬・与薬漏れなどを挙げ(印字8ページ)、食事の際は誤嚥や窒息が発生しやすいとしています(印字34ページ)。
確認した法令には、「誤嚥・窒息予防研修」という名前の研修の義務はありません。施設系の運営基準が求める事故発生の防止のための研修の1回を、食事の場面に絞って組むと、事故防止の研修の記録としても、現場の改善の材料としても使えます(当社の整理)。
- 組み立て(当社の整理):①要因の分け方 ②観察ポイントのチェック作り ③食形態と介助の方法の決め方・守り方 ④起きた時の報告と連絡 ⑤確認テストと記録。
- 書かないこと:救急の手当ての手順、吸引、嚥下の評価方法、医療的な判断。これらは所定の研修と医療職(看護師・言語聴覚士・医師など)に確認します。
根拠:施設は事故防止の研修、在宅系は事故発生時の連絡と記録
特養の基準(平成11年厚生省令第39号)第35条第1項は、事故発生の防止のための指針、委員会と従業者に対する研修を定期的に行うことなどを求めています。解釈通知(老企第43号)は、定期的な教育(年2回以上)と新規採用時の研修、実施内容の記録を求めています。
同じ基準は、食事(第14条)、栄養管理(第17条の2)、口腔衛生の管理(第17条の3)も定めています。訪問介護(平成11年厚生省令第37号)第37条・通所介護 第104条の3などは、事故が起きた時の連絡と記録を定めています。
研修の前提:「口から食べる」を支えながら事故を防ぐ
ガイドラインは、すべての転倒や誤嚥等が施設の過失による事故であるとは限らないとし(印字8ページ)、「口から食べられる」を支えるケアは利用者の自立支援、尊厳の保持につながるとしています(印字34ページ)。経口摂取を再び試みる方針を決めた時は、誤嚥が発生する可能性や肺炎などにつながるリスクを本人・家族に事前に十分説明する必要がある、としています(印字7ページ)。
冒頭でこれを共有すると、「食べさせない」方向でなく、対策を取り得る誤嚥・窒息を減らす方向で話し合えます(当社の整理)。
60〜90分の時間割(当社の整理)
ガイドラインは、講義形式だけでなくワークショップ等の職員参加型の研修も有用で、施設内の実事例を用いると対策を自分事として考えられるとしています(印字15ページ)。講義と演習を半分ずつにした例です。
| 区分 | 時間 | 内容 |
|---|---|---|
| 導入 | 5分 | 研修の目的と前提(口から食べることを支える)。 |
| 講義1 | 10〜15分 | 誤嚥・窒息の要因の分け方。 |
| 演習1 | 15〜20分 | 食事中の観察ポイントのチェックを、自分の担当フロアで作る。 |
| 講義2 | 10〜15分 | 食形態と介助の方法を多職種で決め、全員で同じに行う仕組み。 |
| 講義3 | 10〜15分 | 起きた時の報告と医療職への連絡、記録の流れ。 |
| まとめ | 5〜10分 | 確認テスト、宿題を決める、振り返り。 |
60分に収める時:演習1を宿題に回します。
講義1:誤嚥・窒息の要因を4つに分ける
ガイドラインの事例では、前かがみになりすぎた姿勢と、嚥下機能に合わない食事内容が原因として分析されています(印字35ページ)。要因は次の4つに分けると話し合いやすくなります(当社の整理)。
- 食形態:噛む力や嚥下機能に合った形か。基本食でも切り方にばらつきがあると発生要因となりうる。きざみ食は口の中や喉の奥でばらけやすい(印字34ページ)。
- 食べ方:一口の量とペース。食べるペースが早い利用者には少量ずつ提供する、水分が少ない食材では水やお茶を一緒に摂ることを促す(印字34ページ)。
- 姿勢と環境:食事を摂る際の姿勢(印字34・35ページ)。配膳・下膳時など職員の業務がひっ迫する時間帯は事故が起きやすい(印字20ページ)。
- 体と口の状態:口腔機能・嚥下機能は加齢に伴い低下する(印字34ページ)。変化に気づくのは介護職員、評価は専門職です(当社の整理)。
演習1:食事中の観察ポイントのチェックを作る
ガイドラインは、口腔機能・嚥下機能は介護職員のみで判断することは困難で、医師・歯科医師などの専門職による評価が重要だとしています(印字34ページ)。作るのは判断の基準ではなく、「いつもと違う」に気づいて伝えるためのチェックです(当社の整理)。
チェック項目の例(当社の整理・各項目に「気づいたら誰に伝えるか」を書く欄を付けます):
- 姿勢:前かがみになりすぎていないか、体が傾いていないか、足が床や台に着いているか。
- 食形態:配られた食事が、その人に決められた食形態ととろみになっているか。
- 一口量とペース:一口が多すぎないか、飲み込む前に次を口に入れていないか。
- むせ・声:むせや咳き込みが増えていないか、食事中や食後に声の様子が変わっていないか。
- 食事中の様子:動きが止まっていないか(確認すべき例=印字25ページ)、食事時間が長くなっていないか(印字35ページの事例)。
- 見守り:配膳・下膳の時間帯に、食事中の利用者から目が離れていないか。
講義2:食形態と介助の方法は多職種で決め、全員で同じに行う
ガイドラインは、看護職員・管理栄養士・リハビリテーション専門職・歯科衛生士などの多職種が連携してスクリーニングを行い、結果を会議等で共有して食事形態やケアの注意事項を検討することが未然防止策として有効だとしています。食材の切り方を統一するマニュアル作成も挙げています(印字34ページ)。歯科医療機関と連携した口腔アセスメントの例もあります(印字18ページ)。
研修では評価の方法ではなく、決まった食形態と介助の方法が手順に書かれ、全員が同じに行えているかを確かめます(当社の整理)。
- 確かめること(当社の整理):食形態・とろみ・姿勢・介助の方法が、食事を出す職員まで伝わっているか。変更が全員へ伝わる流れがあるか。
- 食前・食後(印字34ページ):食事前の口腔体操、食後や就寝前の口腔ケアを取り入れることが挙げられています。やり方は歯科衛生士などの指導で身につけます。
講義3:起きた時の報告と、医療職への連絡の流れ
ガイドラインは、事故が発生したらまず利用者の救命や安全確保を第一に行動し、状況確認の方法をルール化しておくとよいとしています。正確な状態把握には医学的知見が不可欠なため、看護職員を呼ぶか、不在の場合は電話連絡等で指示を仰ぐこと、口頭でもよいので現場のリーダーや上司へ迅速に報告することを挙げています(印字25ページ)。
その場の手当ての手順は扱いません。消防署などの講習や、看護職員・医師の指導で身につけてください。地域の消防署と連携して窒息事故時の対応を学んでいる施設もあります(ガイドライン 印字15ページ)。
- 研修で確かめる流れ(当社の整理):人を呼ぶ→看護職員へ連絡(不在時の連絡先、救急要請を誰が判断するか)→上司へ報告→家族・市町村へ連絡→記録。判断の基準は配置医師・協力医療機関・主治医と相談して決めておきます。
- 連絡と記録:市町村・家族等への連絡(特養 第35条第2項、訪問介護 第37条第1項)と、事故の状況及び採った処置の記録(同第3項・第2項)が必要です。
- 市町村への報告:死亡に至った事故と、医師の診断を受け投薬、処置等何らかの治療が必要となった事故は、原則として全て報告します。標準様式の事故の種別には「誤嚥・窒息」の欄があります(令和6年11月29日の通知)。
- つなぎ先:急変時の連絡順は緊急時対応マニュアル、報告書は事故報告書の記事で整理しています。
研修後の確認・記録・在宅系で足すこと
確認テストの例(当社の整理・○×):「誤嚥・窒息はすべて職員の過失による事故である」(×)、「きざみ食は、口の中でばらけやすいことがある」(○)、「嚥下の評価は介護職員だけで判断する」(×)、「食事中に動きが止まっている時は、誤嚥が起きていないか確かめる」(○)。宿題は、演習1のチェックを1週間使い、気づいた点を次の委員会で共有する形にします。
在宅系では、1人でケアをしている時に誤嚥等が起きた時の対応方針を事業所で定めて身に付けておくこと、デイサービスで変更した食形態が訪問介護事業所に伝わらず誤嚥につながるケースへの注意が挙げられています(ガイドライン 印字46ページ)。
本サイトの「事故防止(安全管理)研修キット」は、事故の類型、ヒヤリハットの活用、事故発生時の対応と報告を扱う読み上げ用レジュメ・確認テスト・実施記録様式・出席簿を、無料で表示・印刷できます(30分)。前半の講義をキットで行い、後半でこの記事の演習を行う組み合わせ方ができます。研修の扱いは指定権者に、医療的な判断の基準は医療職にご確認ください。本記事は法的助言・医療の助言ではありません。
- 実施記録に残すこと(当社の整理):日時、参加者、講師、資料、内容、確認テストの結果、宿題。
この記事で確認した一次資料
2026年11月4日に、次の資料の本文を取得し、該当箇所を確かめました。ページ番号は本文の印字ページです。
- 省令(e-Gov法令検索):平成11年厚生省令第39号 第14条・第17条の2・第17条の3・第35条、平成11年厚生省令第37号 第37条・第104条の3。
- 解釈通知:老企第43号の「事故発生の防止及び発生時の対応(基準省令第三十五条)」の項。
- ガイドライン:介護保険最新情報 Vol.1436(令和7年11月7日)で周知された「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」の印字7・8・15・18・20・25・34・35・46ページ。
- 事故報告:介護保険最新情報 Vol.1332(令和6年11月29日)の通知本文(報告の対象)と別紙の標準様式(事故の種別の欄)。
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出典(一次資料)
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
- 厚生労働省 法令等データベース「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について」(平成12年3月17日 老企第43号)=「事故発生の防止及び発生時の対応」(基準省令第35条)の本文
- 厚生労働省老健局「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」(令和7年11月/介護保険最新情報 Vol.1436 令和7年11月7日の別添・PDF・2026年11月4日確認)
- 介護保険最新情報 Vol.1332「介護保険施設等における事故の報告様式等について(通知)」(老高発1129第1号・老認発1129第1号・老老発1129第1号・令和6年11月29日/別紙 事故報告書の標準様式・PDF・2026年11月4日確認)
【免責事項】本キットは研修実施の参考資料です。法令・運営基準・介護報酬の内容は改定されることがあります。実際の運用にあたっての最終確認は、指定権者(都道府県・市区町村等の自治体)へのご確認をおすすめします。本キットの利用により生じた損害について、当社の損害賠償責任は、故意・重過失を除き購入代金の額を上限とします。