介護の緊急時対応マニュアルの作り方|急変時の連絡順・救急要請の目安・記録と訓練(2026)
更新日:2026-11-04・約26分で読めます
介護の緊急時対応マニュアルは、利用者の急変や事故の時に、その場の職員が何をどの順で行うかを決めた手順書です。運営基準は、訪問介護・通所介護などに、サービスの提供中に利用者の病状の急変が生じた場合などは速やかに主治の医師への連絡を行う等の必要な措置を講じること、運営規程に「緊急時等における対応方法」を定めることを求めています。特養には、配置医師と協力医療機関の協力を得て対応方法を定め、1年に1回以上見直すことを求めています。この記事は、省令・解釈通知・運営指導の確認項目・事故予防のガイドライン(令和7年11月)・消防庁の「救急車を上手に使いましょう」(令和7年12月発行)をページ番号つきで確かめ、根拠の条文、観察から救急要請・連絡・記録・事故報告への接続までの流れ、救急要請の判断の目安と119番の伝え方、マニュアルに入れる項目、訓練(シミュレーション)の回し方を整理しました(2026年11月時点)。心肺蘇生やAEDの使い方などの手技は書いていません。消防署や日本赤十字社などの講習で身につけてください。
この記事に関連する無料キット・一覧
研修キット(レジュメ・確認テスト・記録様式)
まず結論:緊急時対応マニュアルは、運営規程の「緊急時等における対応方法」を現場の手順にしたもの
利用者の急変(呼びかけへの反応がおかしい、のどに物を詰まらせた、転倒して強く頭を打った、など)は、いつ、誰の前で起きるか分かりません。運営基準は、訪問・通所・短期入所・多機能系などのサービスに、提供中に利用者の病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、速やかに主治の医師への連絡を行う等の必要な措置を講じることを求め、運営規程にも「緊急時等における対応方法」を定めることを求めています。特養には、配置医師と協力医療機関の協力を得て緊急時等における対応方法を定め、1年に1回以上見直すことが求められています。
マニュアルは、この「対応方法」を、その場にいる職員が迷わず動ける手順に書き直したものです。中身を、観察→応急手当→救急要請→連絡→記録→事故報告への接続、の順にそろえ、作った後は訓練(シミュレーション)で確かめて直す、という形にすると、運営指導での説明にも、夜勤や一人で対応する時の支えにも使えます。
早見表(2026年11月時点):
- 根拠:運営基準の「緊急時等の対応」の条(訪問介護は第27条、通所介護は第105条で第27条を準用、短期入所生活介護は第136条、特養は第20条の2など)と、運営規程の記載事項「緊急時等における対応方法」(訪問介護は第29条第6号、通所介護は第100条第8号)。
- 特養:配置医師と協力医療機関の協力を得て、連携方法その他の緊急時等における対応方法を定め、1年に1回以上見直す(第20条の2)。
- 運営指導:確認項目は「緊急事態が発生した場合、速やかに主治の医師に連絡しているか」(訪問介護・通所介護)、「配置医師との連携方法その他の緊急時等における対応方法が定められているか」「当該対応方法は年1回以上見直されているか」(特養)。
- 救急要請の判断の目安:消防庁の「救急車を上手に使いましょう」(令和7年12月発行)にある、高齢者の「ためらわず救急車を呼んでほしい症状」を出典つきで貼り、判断に迷った時の相談先も決めておきます。
- 応急手当の手技(心肺蘇生・AEDの使い方など):この記事では書きません。消防署や日本赤十字社などの講習で身につけてください。
- マニュアルの中身(当社の整理):連絡先一覧(夜間・休日も)、役割分担、観察すること、救急要請の目安と119番の伝え方、持っていくもの、連絡の順番、記録の様式、事故報告への接続、見直しの時期。
根拠:サービスごとの「緊急時等の対応」の条文
在宅系・多機能系のサービスの運営基準には、ほぼ同じ形の「緊急時等の対応」の条があります。訪問介護の条文は「訪問介護員等は、現に指定訪問介護の提供を行っているときに利用者に病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、速やかに主治の医師への連絡を行う等の必要な措置を講じなければならない」です。訪問入浴介護・短期入所生活介護・小規模多機能型居宅介護では、連絡先に「あらかじめ…定めた協力医療機関」が加わります。訪問看護などでは、看護職員について、必要に応じて臨時応急の手当を行うことが定められています。
確認した条文(e-Gov法令検索・2026年11月4日):
- 訪問介護(平成11年厚生省令第37号):第27条。運営規程の記載事項は第29条第6号「緊急時等における対応方法」。
- 通所介護:第105条で第27条を準用(「訪問介護員等」を「通所介護従業者」と読み替え)。運営規程の記載事項は第100条第8号。
- 訪問入浴介護:第51条(主治の医師又はあらかじめ定めた協力医療機関への連絡)。訪問看護:第72条(必要に応じて臨時応急の手当を行うとともに、速やかに主治の医師への連絡を行い指示を求める等)。短期入所生活介護:第136条。
- 地域密着型サービス(平成18年厚生労働省令第34号):定期巡回・随時対応型訪問介護看護は第3条の27(第2項=看護職員は必要に応じて臨時応急の手当て)。夜間対応型訪問介護は第12条で、地域密着型通所介護は第37条で第12条を準用。療養通所介護は第40条の10(主治の医師とともに、緊急時等の対応策を利用者ごとに検討してあらかじめ定め、利用者と家族に十分に説明する)。小規模多機能型居宅介護は第80条で、認知症対応型共同生活介護は第108条で第80条を準用。看護小規模多機能型居宅介護は第180条。
- 施設系:介護老人福祉施設(平成11年厚生省令第39号)は第20条の2、地域密着型介護老人福祉施設は第145条の2。介護老人保健施設(平成11年厚生省令第40号)と介護医療院(平成30年厚生労働省令第5号)には同じ題の条はなく、「協力医療機関等」の条(第30条・第34条)で、入所者の病状の急変等に備えて協力医療機関を定めることを求めています。
- その他のサービス:お使いのサービスの条番号は、それぞれの運営基準で確認してください。運営基準は条例で定められているため、指定権者(都道府県・市区町村)の条例も確認します。
解釈通知:運営規程に定めた対応方法に基づいて、速やかに連絡する
訪問介護の解釈通知(老企第25号)は、この条を、訪問介護員等が現に指定訪問介護の提供を行っているときに利用者に病状の急変が生じた場合その他必要な場合は、運営規程に定められた緊急時の対応方法に基づき速やかに主治の医師(主治医)への連絡を行う等の必要な措置を講じなければならないこととしたもの、と説明しています。訪問入浴介護の項は、協力医療機関について、事業の通常の実施地域内にあることが望ましいこと、緊急時において円滑な協力を得るため、協力医療機関との間であらかじめ必要な事項を取り決めておくこと、に留意するとしています。
つまり、運営規程に「緊急時等における対応方法」を一行書くだけでなく、その対応方法に基づいて実際に連絡できる状態にしておくことが前提です。マニュアルは、運営規程の一行と現場の動きをつなぐ書類だと考えると、書く中身がはっきりします(当社の整理)。
- 運営規程との関係(当社の整理):運営規程の「緊急時等における対応方法」と、マニュアルの手順・連絡先が食い違わないようにします。どちらかを変えた時は、もう一方も見直します。
- 利用者・家族への説明(当社の整理):重要事項説明書などに緊急時の対応を書いている場合は、マニュアルと同じ内容にそろえます。
特養:配置医師・協力医療機関と対応方法を決め、1年に1回以上見直す
介護老人福祉施設の基準第20条の2は、入所者の病状の急変が生じた場合その他必要な場合のため、あらかじめ、配置医師及び協力医療機関の協力を得て、医師及び協力医療機関との連携方法その他の緊急時等における対応方法を定めること(第1項)、1年に1回以上、対応方法の見直しを行い、必要に応じて変更すること(第2項)を求めています。
解釈通知(老企第43号)の令和6年度改正後の説明は、対応方針に定める規定の例として、緊急時の注意事項や病状等についての情報共有の方法、曜日や時間帯ごとの医師や協力医療機関との連携方法、診察を依頼するタイミング等を挙げています。見直しの検討に当たっては、施設内の急変対応の事例について関係者で振り返りを行うことなどが望ましいとし、基準第28条第2項の協力医療機関との1年に1回以上の確認とあわせて行うことも考えられる、としています(新旧対照表 印字7ページ)。改正前の説明は配置医師による対応方針を定めることで、協力医療機関の協力と1年に1回以上の見直しは、改正後の説明に加わったものです。
- 協力医療機関(特養 第28条):入所者の病状が急変した場合等に医師又は看護職員が相談対応を行う体制を常時確保していること、施設からの診療の求めがあった場合に診療を行う体制を常時確保していること、入院を要すると認められた入所者の入院を原則として受け入れる体制を確保していること、の要件を満たす協力医療機関を定めます(第1項)。1年に1回以上、協力医療機関との間で病状が急変した場合等の対応を確認し、協力医療機関の名称等を指定権者に届け出ます(第2項)。
- 経過措置:第28条第1項は、令和9年3月31日までは「定めておくよう努めなければ」と読み替える経過措置があります(令和6年厚生労働省令第16号 附則第6条。介護老人保健施設の第30条第1項、介護医療院の第34条第1項、地域密着型介護老人福祉施設の第152条第1項なども同じ)。
- 居住系:認知症対応型共同生活介護(地域密着型サービス基準 第105条)と特定施設入居者生活介護(居宅サービス等基準 第191条)も、利用者の病状の急変等に備えて協力医療機関を定め、1年に1回以上、病状が急変した場合等の対応を確認して届け出ることとされています(相談対応・診療の体制の要件を満たす協力医療機関を定めることは努力義務)。
- マニュアルに書くこと(当社の整理):曜日・時間帯ごとの連絡先(配置医師、協力医療機関、オンコールの看護職員)、診察を依頼する目安、情報共有に使う書式、見直した日と参加者。
運営指導で見られる点:確認項目と確認文書
介護保険施設等運営指導マニュアル(令和6年7月改訂)の別添「確認項目及び確認文書」は、緊急時等の対応について、次の項目を挙げています。
- 訪問介護(101・印字2ページ):「緊急事態が発生した場合、速やかに主治の医師に連絡しているか」→ 確認文書「運営規程」「サービス提供記録」。運営規程の確認項目には「6.緊急時等における対応方法」があります。通所介護(106・印字20ページ)も同じ確認項目・確認文書です(運営規程の項目は「8.緊急時等における対応方法」)。
- 介護老人福祉施設(301・印字58ページ):「配置医師との連携方法その他の緊急時等における対応方法が定められているか」「当該対応方法は年1回以上見直されているか」→ 確認文書「緊急時等における対応方法を定めたもの」。
- 準備の例(当社の整理):運営規程、マニュアル(対応方法を定めたもの)、見直しの記録(日付・参加者・変えた点)、実際に急変があった時のサービス提供記録や経過記録を、すぐ出せる場所にまとめておきます。
事故の手順・BCPとの違い:このマニュアルで扱う範囲
急変の多くは、事故の対応とも重なります。転倒して頭を打った、食事中にのどに詰まらせた、という場面は、緊急時の対応であると同時に、事故として記録し、条件に当たれば市町村へ報告するものです。運営基準は、事故が発生した場合の市町村・家族等への連絡と、事故の状況及び事故に際して採った処置の記録を、別の条で求めています(訪問介護は第37条、特養は第35条)。特養の「事故発生の防止のための指針」には、「介護事故等発生時の対応に関する基本方針」を盛り込むこととされています(老企第43号)。
一方、業務継続計画(BCP)は、感染症や災害が起きても業務を続けるための計画で、利用者一人の急変に職員がどう動くかとは目的が違います。この記事は、利用者一人の急変・事故の「その場の初動」を扱います。
- 緊急時対応マニュアル(この記事):急変・事故の発見から、救急要請・連絡・記録までの初動。
- 事故発生の防止のための指針(施設):事故防止の基本的考え方、委員会、研修、報告の方法、介護事故等発生時の対応に関する基本方針など。マニュアルは、この基本方針を具体的な手順にしたもの、と位置づけられます(当社の整理)。
- 事故報告書:市町村へ出す報告。報告の対象・期限・標準様式の書き方は、事故報告書の記事で整理しています。
- ヒヤリハット:事故に至らなかった場面の、施設の中での報告と分析。書き方はヒヤリハット報告書の記事で整理しています。
- BCP:感染症・自然災害の時の業務継続。訓練のやり方はBCP訓練の記事で整理しています。
全体の流れ:発見→観察→応急手当→救急要請→連絡→記録
事故予防のガイドライン(令和7年11月)は、事故発生時の対応のポイントとして、利用者の救命や安全確保をした上で迅速に上司やリーダー、管理者に報告し被害の拡大防止を図ること、看護職員と連携し利用者の状況をできる限り早く正確に把握し応急処置等を行うこと、事故報告や原因分析に備え可能な限り記録を取ること、を挙げています(印字22ページ)。事故が発生したら、まずは利用者の救命や安全確保を第一に行動する、としています(印字25ページ)。
同じガイドラインは、いざというときに職員が迷わず適切な行動がとれるよう、施設内での報告ルートや、医療機関との連携方法、利用者家族・行政への報告タイミングなど、基本的な対応手順をわかりやすいマニュアルやフロー図で作成し、平時から職員に周知し訓練しておくことが大切だとしています。「いつ」「どこで」「誰が」「どのように」「何を」するべきか、その際の判断基準や確認ポイントは何かなど、具体的にわかりやすく示すよう述べています(印字26ページ)。
この流れを、次の順に1枚のフロー図にしておくと、掲示にも研修にも使えます(当社の整理)。
- 1 発見・安全確保:その場を離れず、周りの危険を取り除き、声を出して人を呼ぶ。
- 2 観察:意識・呼吸の様子、けがの有無、いつから・何があったか。
- 3 応急手当:講習で身につけた範囲で行う。看護職員がいる事業所では看護職員を呼び、不在の時は電話などで指示を仰ぐ(ガイドライン 印字25ページ)。
- 4 救急要請の判断:目安に当たるか、迷う時は誰に相談するか、誰が通報を決めるか。
- 5 連絡:主治医・配置医師、管理者、家族、ケアマネジャーなど、決めた順に。
- 6 記録:時刻と事実を残し、事故に当たる時は事故報告の手順へ。
観察:何を確かめて、誰にどう伝えるかを決めておく
ガイドラインは、事故発生時の状況確認はルール化しておくとよいとし、「事故かもしれない」という判断がつきにくい場合の事実確認もルール化しておくと判断に迷いがなくなる、としています。例として、転倒・転落事故の際は本人に状況を聞く他、目撃者がいた場合はその人からも話を聞く、頭を打っている場合は即受診する、といったことをルールで定めておくとよい、と挙げています(印字25ページ)。
同じページは、正確な状態把握には医学的知見が不可欠なため、看護職員を呼ぶか、不在の場合は電話連絡等で指示を仰ぐこと、その際に確認すべき項目や基準を定めておくと看護職員の状態把握がスムーズになることを挙げ、該当する項目として、意識や呼吸の有無、血圧・脈拍・体温・酸素飽和度などのバイタルサインを挙げています。
- 伝える順番(当社の整理):「誰が(利用者名・年齢)、いつ・どこで、何があって、いまどうか(意識・呼吸・痛み・出血)、何をしたか」の順にそろえておくと、看護職員や医師にも、119番の指令員にも同じ形で伝えられます。
- 時刻を2つ控える(当社の整理):発見した時刻と、最後に普段どおりだった時刻を分けて控えます。救急隊や医師に伝える時にも、事故報告書の詳細欄にも使います。
- 測れる範囲で(当社の整理):バイタルサインを測る機器の有無と、誰が測るかは事業所ごとに違います。測ろうとして連絡が遅れないよう、測れない時の動き方も書いておきます。
応急手当は講習で身につける(この記事では手技を書きません)
消防庁の「救急車を上手に使いましょう」は、救える命を救うためには応急手当が重要であること、応急手当が必要な場合は119番通報を受けた通信指令員等から適切な応急手当のお願いと口頭での指導を行う場合があること、お近くの消防署では応急手当の講習を行っていることを案内しています(印字1ページ)。日本赤十字社も、全国の支部や赤十字施設などで救急法などの講習を行っています。
心肺蘇生の手順やAEDの使い方などの手技は、講習で実際に体を動かして身につけるものです。本サイトは医療の助言をしていないため、この記事では手技を書きません。マニュアルには、手技そのものではなく、講習を受けた職員、AEDの場所、119番の指令員の指示に従うことを書いておきます(当社の整理)。
- 講習の受講状況(当社の整理):受講した職員と受講日を一覧にし、夜勤や一人で対応する時間帯に受講者がいるかを確かめます。
- AEDの場所:消防庁の資料は、救急通報のポイントの中で、AEDを誰かに持ってきてもらうよう案内しています(印字1ページ)。事業所内に設置している場合は、その場所をフロー図に入れます。消防庁の救急お役立ちポータルサイトは、参考として日本救急医療財団のAEDマップを案内しています。
- 介護職員と医療職の分担(当社の整理):介護職員が行うことと、看護職員・医師の判断や指示が要ることの分け方は、配置医師・協力医療機関・主治医と相談して決め、マニュアルに書いておきます。
救急要請の判断の目安:消防庁の資料を出典つきで貼っておく
救急車を呼ぶかどうかの判断を、その場の職員一人に任せると、迷っている間に時間がたちます。消防庁の「救急車を上手に使いましょう~救急車 必要なのはどんなとき?~」(令和7年12月発行)は、高齢者について「突然のこんな症状の時にはすぐ119番!!」として、ためらわず救急車を呼んでほしい症状を挙げています。高齢者は自覚症状が出にくい場合もあるので注意すること、その他いつもと違う場合・様子がおかしい場合も挙げています(印字2ページ)。主な例は次のとおりです。
- 意識がない(返事がない)またはおかしい(もうろうとしている)。けいれんが止まらない。
- 物をのどにつまらせた。急な息切れ、呼吸困難。
- 顔半分が動きにくい・しびれる、ろれつがまわりにくい、突然片方の腕や足に力が入らなくなる、突然の激しい頭痛、急にふらつき立っていられない。
- 突然の激痛、突然の激しい腹痛、血を吐く、冷や汗を伴うような強い吐き気。
- 交通事故や転落、転倒で強い衝撃を受けた。大量の出血を伴うけが。広範囲のやけど。
- 迷った時:同じページは、迷ったらかかりつけ医に相談すること、119番通報などの判断に迷った時は救急相談窓口(#7119等)に相談することを案内しています。#7119を使える地域は資料に一覧があり(令和7年12月現在)、地域によって窓口が違います。
- マニュアルに書くこと(当社の整理):この目安を出典と発行年月つきで貼ること、迷った時に誰に相談するか(看護職員・配置医師・オンコール・#7119等)、管理者の許可を待たずにその場の職員が119番に通報してよいか。事業所としての判断の目安は、配置医師・協力医療機関・主治医と相談して決めてください。
119番の伝え方と、救急隊に伝えること・持っていくもの
同じ資料は、119番通報をすると指令員が救急車の出動に必要なことを順番に聞くとして、次の流れを示しています。緊急性が高い場合は、すべて聞く前でも救急車が出動すること、あわてずゆっくり答えることも案内しています(印字5ページ)。
- 通報の順番:①「救急です」と伝える。②救急車に来てほしい住所を、必ず市町村名から伝える(分からない時は近くの大きな建物、交差点など目印)。③具合の悪い方の症状を、誰が、どのようにして、どうなったと簡潔に、分かる範囲で意識・呼吸の有無も伝える。④具合の悪い方の年齢(分からない時はおおよそ)。⑤通報した人の名前と、通報後も連絡がつく電話番号。
- 救急車が来たら伝えること(印字1ページ):事故や具合が悪くなった状況、救急隊が到着するまでの変化、行った応急手当の内容、具合の悪い方の情報(持病、かかりつけの病院やクリニック、普段飲んでいる薬、医師の指示等)。
- 用意しておくと便利な物(印字1ページ):マイナ保険証または資格確認書、診察券、お金、靴、普段飲んでいる薬(おくすり手帳)など。応急手当をしている人以外にも人手がある場合は、救急車の音が近づいてきたら案内に出て誘導すると到着が早くなる、としています。
- 通報メモ(当社の整理):事業所の住所(市町村名から)・目印・電話番号を、電話のそばに貼っておきます。訪問系では、利用者宅の住所と目印を、訪問先ですぐ見られるようにしておきます。
- 利用者ごとの情報(当社の整理):持病、かかりつけ医、服薬、緊急連絡先、医師の指示などを1枚にまとめておくと、救急隊に「伝えること」がそろいます。個人情報なので、保管場所、持ち出し、救急隊に渡した記録の残し方も決めておきます。
- 付き添い(当社の整理):救急車に誰が付き添うか、付き添えない時に誰が何を伝えるか、残った利用者の見守りを誰がするかを、時間帯ごとに決めておきます。
連絡の順番:主治医・管理者・家族・ケアマネジャー
運営基準が連絡先として定めているのは、緊急時等の対応の条では「主治の医師」(サービスによって「あらかじめ定めた協力医療機関」)、事故発生時の対応の条では「市町村、当該利用者の家族、当該利用者に係る居宅介護支援事業者等」(訪問介護 第37条第1項。特養は市町村と入所者の家族等)です。誰から順に連絡するかは、確認した法令には決まっていません。事業所の体制に合わせて決め、マニュアルに書いておきます。
事故予防のガイドラインは、利用者の救命や安全確保をした上で迅速に上司やリーダー、管理者に報告すること、事故の発生を家族に対してできる限り早く連絡すること、利用者本人や家族に対し管理者等が正確に説明すること、を挙げています(印字22ページ)。家族対応の窓口となる職員(管理者等)を決めておくことも効果的だとしています(印字26ページ)。
- 連絡の順番の例(当社の整理):①119番(目安に当たる時)→②看護職員・主治医・配置医師(指示を求める)→③管理者(夜間はオンコール)→④家族→⑤ケアマネジャー(在宅系)→⑥事故に当たる時は市町村への報告の手順へ。人手があれば、119番と看護職員への連絡は同時に行います。
- 連絡先一覧(当社の整理):主治医・配置医師・協力医療機関・管理者・看護職員の電話番号を、曜日・時間帯ごとに1枚にまとめます。家族の連絡先は、第1・第2連絡先と、つながらない時にどうするかまで聞いておきます。
- 連絡した記録(当社の整理):誰が、何時に、誰に、何を伝えたか(つながらなかった時も)を残します。事故に当たる場合は、事故報告書の「家族等への報告」の欄(報告した家族等の続柄・報告年月日)にも使います。
記録と事故報告への接続
急変の対応が落ち着いたら、その場で控えた時刻と事実を、介護記録や経過記録に清書します。事故に当たる場合は、運営基準が事故の状況及び事故に際して採った処置の記録を求めており(訪問介護は第37条第2項、特養は第35条第3項)、死亡に至った事故と、医師の診断を受け投薬、処置等何らかの治療が必要となった事故は、原則として全て市町村へ報告します(令和6年11月29日の通知)。
病気による急変で事故に当たらない場合も、何を見て、何をして、誰に連絡したかを残しておくと、見直しの材料になります。特養の解釈通知は、緊急時等の対応方法の見直しの検討に当たって、施設内の急変対応の事例について関係者で振り返りを行うことなどが望ましいとしています(老企第43号 新旧対照表 印字7ページ)。
- 記録に残すこと(当社の整理):発見した時刻と最後に普段どおりだった時刻、観察したこと、行った応急手当、119番の時刻、救急隊の到着・出発の時刻、搬送先、連絡した相手と時刻、付き添った職員。
- 事故報告書へ:報告の対象・期限(第1報は遅くとも5日以内が目安)・標準様式の書き方は、事故報告書の記事で整理しています。
- ヒヤリハットへ:大事に至らなかった場面(のどに詰まりかけたが自分で出せた、など)は、ヒヤリハットとして施設の中で報告・共有します。書き方はヒヤリハット報告書の記事で整理しています。
- 振り返り(当社の整理):急変があった時は、記録をもとに「連絡先は合っていたか」「迷った所はどこか」を確かめ、マニュアルの見直しにつなげます。
訪問・通所(送迎)・夜勤で足しておくこと
在宅系では、職員が一人で利用者宅にいる時や、送迎の途中に急変や事故が起きることがあります。事故予防のガイドラインは、外出や送迎時に発生する事故は施設・事業所内とは異なり対応が難しい場合が多いこと、介護職員よりも介護に関する知識が薄いドライバーが事故発生後に適切な措置を行えず、結果として事業所の過失として判断されたケースも存在することを挙げています。そのうえで、細かなマニュアルの作成によるルール化が有効で、マニュアル等を整備してどの職員も同じ対応がとれるようにする、としています(印字44ページ)。
- 訪問系(当社の整理):一人で対応する前提で、119番、事業所(サービス提供責任者・管理者)、家族の順を決めます。事業所から指示を受けた時刻と内容を記録する欄を用意し、利用者宅の住所・目印、家族の連絡先、主治医をすぐ見られるようにしておきます。
- 通所系・送迎(当社の整理):運転する職員にも同じ手順を配り、車内での急変や乗降時の転倒の時に、車をどこに止め、誰に連絡するかを決めます。他の利用者を乗せている時の見守りも決めておきます。
- 夜勤・宿直(当社の整理):職員が少ない時間帯を前提に、オンコールの連絡先、応援を呼ぶ相手、救急車に付き添う間の他の利用者の見守りを書きます。
- 短期入所・居住系(当社の整理):利用開始時に、主治医・服薬・家族の連絡先を確かめ、利用者ごとの情報の1枚を作っておきます。
マニュアルのひな形:入れておく項目(当社の整理)
確認した法令・通知には、緊急時対応マニュアルの決まった様式はありません。以下は、ここまでの条文・解釈通知・ガイドライン・消防庁の資料をもとに当社が整理した項目の例です。事業所の体制に合わせて、数枚の手順とフロー図1枚に収まる量にすると、掲示や研修で使いやすくなります。
- 1 目的と根拠:運営規程の「緊急時等における対応方法」との関係、対象とする場面(急変・事故など)。
- 2 連絡先一覧:曜日・時間帯ごとの主治医・配置医師・協力医療機関・看護職員・管理者、家族の第1・第2連絡先、地域で使える救急相談窓口(#7119等)。
- 3 役割分担:その場にいる職員、応援に来る職員、119番をかける職員、付き添う職員、残る利用者を見守る職員。
- 4 観察と伝え方:意識・呼吸・けが・いつから何があったか、伝える順番、控える2つの時刻。
- 5 救急要請の目安:消防庁の資料の症状の例(出典・発行年月つき)、迷った時の相談先、通報を決める人。
- 6 119番の伝え方と持っていくもの:事業所の住所・目印・電話番号、利用者ごとの情報の1枚、保険証類・おくすり手帳など。
- 7 応急手当:講習を受けた職員の一覧、AEDの場所、指令員の指示に従うこと。
- 8 連絡の順番と記録:連絡の順番、連絡した記録、経過記録の様式、事故に当たる時の事故報告の手順。
- 9 見直し:見直す時期(特養は1年に1回以上)、急変があった時の振り返り、改訂した日と変えた点。
研修(シミュレーション)の回し方と、無料の事故防止研修キット
マニュアルは、読んだだけでは動けません。ガイドラインは、基本的な対応手順をマニュアルやフロー図で作成し、平時から職員に周知し訓練しておくことが大切だとしています(印字26ページ)。特養では、対応方法を1年に1回以上見直すことが求められ、急変対応の事例の振り返りが望ましいとされているので、訓練で見つかった課題を見直しの材料にすると、記録が一度にそろいます(当社の整理)。
本サイトの「事故防止(安全管理)研修キット」は、事故の類型、ヒヤリハットの活用、事故発生時の対応(対応の優先順位)と報告を扱う読み上げ用レジュメ・確認テスト・実施記録様式・出席簿を、無料で表示・印刷できます。前半の講義をキットで行い、後半でこの記事のマニュアルを使った短い訓練を行う、という組み合わせ方ができます。
法令や国の資料は改訂されます(本記事は2026年11月時点)。対応方法の最終的な扱いは指定権者(都道府県・市区町村)に、救急要請や応急手当を含む医療的な判断の基準は配置医師・協力医療機関・主治医にご確認ください。応急手当の手技は、消防署や日本赤十字社などの講習で身につけてください。本記事は法的助言・医療の助言ではありません。
- 20分の訓練の例(当社の整理・架空の場面):「夜勤帯、居室で利用者が床に座り込んでいて、呼びかけへの反応が鈍い」という場面カードを配ります。①発見役・応援役・通報役・記録役を決める、②通報役は119番の伝え方の順に読み上げる(実際には電話しない)、③記録役は時刻を控える、④連絡先一覧を使い、夜間に誰へ何の順で連絡するかをたどる。
- 振り返りの問いの例(当社の整理):「連絡先一覧の番号は今も正しいか」「住所を市町村名から言えたか」「救急車に付き添う間、他の利用者は誰が見るか」「迷った所はどこか」。出た課題と直した点を記録し、マニュアルの改訂につなげます。
- 在宅系の場面(当社の整理):「訪問中に一人で発見した」「送迎車の中で急変した」の場面カードを作ると、在宅系の手順の抜けが見つかりやすくなります。
- 訓練の範囲(当社の整理):心肺蘇生やAEDの練習は講習で行い、この訓練は「誰が、何を、どの順で」に絞ります。研修として行った回は、日時・参加者・内容・出た課題を実施記録に残します。
この記事で確認した一次資料
2026年11月4日に、次の資料の本文を取得し、該当箇所を確かめました。ページ番号は本文の印字ページです。
- 省令(e-Gov法令検索):平成11年厚生省令第37号 第27条・第29条・第37条・第51条・第72条・第100条・第105条・第136条・第191条、平成11年厚生省令第39号 第20条の2・第28条・第35条と附則(令和6年厚生労働省令第16号)第6条、平成11年厚生省令第40号 第30条、平成30年厚生労働省令第5号 第34条、平成18年厚生労働省令第34号 第3条の27・第12条・第37条・第40条の10・第80条・第105条・第108条・第145条の2・第152条・第180条。
- 解釈通知:老企第25号の訪問介護・訪問入浴介護「緊急時等の対応」の項と、老企第43号の「事故発生の防止のための指針」の項(いずれも厚生労働省 法令等データベースの掲載版)。老企第43号の令和6年度改正の新旧対照表(別紙14・抄)の「緊急時等の対応」(印字7ページ)。
- 運営指導:介護保険施設等運営指導マニュアル(令和6年7月改訂)の別添「確認項目及び確認文書」の印字2・20・58ページ。
- ガイドライン:介護保険最新情報 Vol.1436(令和7年11月7日)で周知された「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」の印字22・25・26・44ページ。
- 救急:総務省消防庁「救急車を上手に使いましょう~救急車 必要なのはどんなとき?~」(令和7年12月発行)の印字1・2・5ページと、救急お役立ちポータルサイトの掲載ページ。日本赤十字社「講習について」のページ。
- 事故報告:介護保険最新情報 Vol.1332(令和6年11月29日)の通知本文(報告の対象・期限)。
この記事を書いたチームは、note でも介護の仕事で考えたことを書いています。note をフォローする
出典(一次資料)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)
- 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)
- 介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成30年厚生労働省令第5号)
- 厚生労働省 法令等データベース「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準について」(平成11年9月17日 老企第25号)=訪問介護(基準第27条)・訪問入浴介護(基準第51条)の「緊急時等の対応」の本文
- 厚生労働省 法令等データベース「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について」(平成12年3月17日 老企第43号)=「事故発生の防止及び発生時の対応」(基準省令第35条)の本文
- 厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について」(老企第43号)令和6年度改正の新旧対照表(別紙14・抄)
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」別添 確認項目及び確認文書(令和6年7月改訂・PDF)
- 厚生労働省老健局「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」(令和7年11月/介護保険最新情報 Vol.1436 令和7年11月7日の別添・PDF・2026年11月4日確認)
- 介護保険最新情報 Vol.1332「介護保険施設等における事故の報告様式等について(通知)」(老高発1129第1号・老認発1129第1号・老老発1129第1号・令和6年11月29日/別紙 事故報告書の標準様式・PDF・2026年11月4日確認)
- 総務省消防庁「救急車を上手に使いましょう~救急車 必要なのはどんなとき?~」(救急車利用マニュアル・令和7年12月発行・PDF・2026年11月4日確認)
- 総務省消防庁 救急お役立ちポータルサイト「救急車利用マニュアル」(AEDマップ〔一般財団法人日本救急医療財団〕への参考リンクを含む・2026年11月4日確認)
- 日本赤十字社「講習について」(救急法などの講習の案内・2026年11月4日確認)
【免責事項】本キットは研修実施の参考資料です。法令・運営基準・介護報酬の内容は改定されることがあります。実際の運用にあたっての最終確認は、指定権者(都道府県・市区町村等の自治体)へのご確認をおすすめします。本キットの利用により生じた損害について、当社の損害賠償責任は、故意・重過失を除き購入代金の額を上限とします。