身体拘束適正化の研修は年2回?回数の根拠と対象サービス、減算との関係、年2回の組み方(新規採用時・虐待防止研修との関係)2026
更新日:2026-10-26・約11分で読めます
身体的拘束等の適正化の研修は、運営基準(省令)では「定期的に実施」とされ、回数は国の解釈通知が「定期的な教育(年2回以上)」と「新規採用時には必ず」実施することが重要だと示しています。対象は委員会・指針・研修が義務の施設系・居住系・短期入所系・多機能系で、訪問系・通所系などには研修の義務がありません(「年1回以上」は虐待防止研修の回数です)。どの通知のどこに書いてあるか、研修が欠けたときの減算、通知に書かれていないこと、年2回と新規採用時の組み方を、省令・通知・告示・国のQ&Aの原文で整理しました(2026年10月時点)。
まず結論:「年2回以上+新規採用時」は解釈通知の目安。対象は委員会・指針・研修が義務の類型
運営基準(厚生労働省令)は、施設系・居住系・短期入所系・多機能系に、身体的拘束等の適正化のための委員会(3か月に1回以上)・指針・研修の3つの措置を義務づけています。研修についての条文の文言は「介護職員その他の従業者に対し、身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に実施すること」で、回数は書かれていません。
回数は、サービスごとの解釈通知(国の通知)に「研修プログラムを作成し、定期的な教育(年2回以上)を開催するとともに、新規採用時には必ず身体的拘束等の適正化の研修を実施することが重要である」と書かれています。
- 研修が義務の類型:介護老人福祉施設(特養)・地域密着型特養・介護老人保健施設(老健)・介護医療院・特定施設・地域密着型特定施設・認知症対応型共同生活介護(グループホーム)・短期入所生活介護・短期入所療養介護・小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護(介護予防を含む)。
- 回数の目安:年2回以上と、新規採用時に必ず1回(解釈通知)。研修の実施内容は記録します。
- 研修の義務がない類型:訪問系・通所系・福祉用具貸与・特定福祉用具販売・居宅介護支援。原則禁止と、拘束した場合の記録だけが義務です。
- 減算:研修を含む措置が欠けると身体拘束廃止未実施減算。施設系・居住系は所定単位数の10%、短期入所系・多機能系は1%です。
根拠:省令は「定期的に」、回数は解釈通知に書かれている
e-Gov の法令API(v2)で各運営基準の全文を取得し、研修の条文を確かめました。文言はどれも「定期的に実施すること」で同じです。
「年2回以上」の文言がある解釈通知は次のとおりです。施設系・居住系は平成30年度、短期入所系・多機能系は令和6年度の改正で書き加えられました。介護医療院は平成30年度に創設された時の通知に入っています。
- 特養(老企第43号):平成30年度改正(ユニット型は令和6年度改正で同文を新設)。省令は第11条第6項第3号、ユニット型は第42条第8項第3号。
- 老健(老企第44号):平成30年度改正。省令は第13条第6項第3号、ユニット型は第43条第8項第3号。
- 特定施設(老企第25号):平成30年度改正。省令は第183条第6項第3号。
- 短期入所生活介護・短期入所療養介護(老企第25号):令和6年度改正で新設(ユニット型を含む)。省令は第128条第6項第3号、第146条第6項第3号ほか。
- グループホーム・地域密着型特定施設・地域密着型特養(地域密着型サービスの解釈通知):平成30年度改正。省令は第97条第7項第3号、第118条第6項、第137条第6項ほか。
- 小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護(同):令和6年度改正で新設。省令は第73条第7号ハ、第177条第7号ハ。
- 介護医療院(老老発0322第1号):平成30年の創設時から。省令は第16条第6項第3号、ユニット型は第47条第8項第3号。
訪問介護・デイサービスに身体拘束の研修義務はない:「年1回」は虐待防止研修の回数
令和6年度の改定で、訪問系・通所系・福祉用具貸与・特定福祉用具販売・居宅介護支援の運営基準に加わったのは、身体的拘束等の原則禁止と、拘束した場合の態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由の記録です。委員会・指針・研修の規定はなく、減算もありません。
訪問系・通所系でよく見る「年1回以上+新規採用時」は、令和3年度に全サービスで義務になった虐待防止の研修の回数です。たとえば訪問介護の解釈通知は虐待防止の研修を「定期的な研修(年1回以上)」、特養・特定施設・グループホームの解釈通知は「年2回以上」としています。身体拘束の研修と虐待防止の研修は、別の条文に基づく別の研修です。
解釈通知が研修に求めていること
研修の中身について、解釈通知は次のように示しています。どのサービスの通知もほぼ同じ文言です。
- 内容:身体的拘束等の適正化の基礎的内容等の適切な知識を普及・啓発するとともに、自事業所の指針に基づき、適正化の徹底を行うもの。
- 研修プログラム:指針に基づいた研修プログラムを作り、定期的な教育(年2回以上)を開催する。
- 新規採用時:新規採用時には必ず身体的拘束等の適正化の研修を実施する。
- 記録:研修の実施内容についても記録する。
- 場所:事業所内(施設内)での研修で差し支えない。
- 指針との関係:指針には「身体的拘束等の適正化のための職員研修に関する基本方針」を盛り込みます。研修の回数や時期の考え方は、ここに書いておくと説明しやすくなります。
研修が欠けると減算:委員会・指針・記録とセットで見られる
身体拘束廃止未実施減算の基準は告示(平成27年厚生労働省告示第95号)で、運営基準の記録と3つの措置の規定に適合していることです。留意事項通知は、拘束が行われていた場合ではなく、記録を行っていない、委員会を3か月に1回以上開いていない、指針を整備していない、または「身体的拘束等の適正化のための定期的な研修を実施していない」事実が生じた場合に、利用者全員について減算するとしています。
減算は、改善計画を出し、事実が生じた月から3か月後に改善状況を報告し、事実が生じた月の翌月から改善が認められた月まで続きます。運営指導マニュアルは減算期間は最低3か月とし、国のQ&A は、拘束をしていなくても措置がすべて講じられていなければ減算になること、過去にさかのぼらないことを示しています。
- 特養・地域密着型特養・老健:平成30年度に5単位/日から所定単位数の10%/日に引き上げ。
- 特定施設・グループホーム・介護医療院:平成30年度に10%/日で新設。
- 短期入所系・多機能系:令和6年度に所定単位数の100分の1で新設。経過措置を経て令和7年4月1日から適用。平均すると1日9単位程度の減算です。
- 訪問系・通所系など:減算はありません。ただし、3要件を満たした記録が確認できなければ指導の対象です。
一次資料に書かれていないこと
次の点は、確認した省令・解釈通知・告示・留意事項通知・Q&A・運営指導マニュアルに定めが見当たりませんでした。迷う点は指定権者(都道府県・市町村)に確認するのが確実です。
- 「年2回」の数え方:年度か暦年か、2回の間をどれだけ空けるか。
- 新規採用時の研修:採用から何日以内か、年2回のうちに数えてよいか。
- 欠席者の扱い:補講や資料での個別実施をどう扱うか。
- 形式:動画やオンラインで行ってよいか(通知が明示するのは「事業所内での研修で差し支えない」ことだけです)。
- 年1回しか実施していない場合:減算の要件の文言は「定期的な研修を実施していない」で、年2回に満たないことが直ちに減算に当たるかを書いた資料は見当たりませんでした。解釈通知が年2回以上を示している以上、年2回以上を確実に実施し、記録しておくのが安全です。
年2回の組み方の例:1回目は基礎、2回目は事例検討と記録レビュー
以下は当社からの構成提案で、法令が定めた進め方ではありません。年2回が同じレジュメの読み上げの繰り返しになると、2回目に新しい気づきが得られにくくなります。解釈通知が求める「基礎的内容の普及・啓発」と「指針に基づく適正化の徹底」を、回ごとに分けて担う形にしています。
- 上半期(例:4〜9月)=基礎:原則禁止、3要件、緊急やむを得ない場合の手続き、自事業所の指針を確認する回。年度の途中で入った職員にも同じ内容を新規採用時研修として行えます。
- 下半期(例:10〜3月)=事例検討と記録レビュー:実際に拘束した際の記録や、委員会で分析した事例を持ち寄り、「後から3要件を説明できる書き方になっているか」を点検する回。
- 間隔:2回を同じ月に寄せず、半年ほど空けると、委員会での検討の結果を2回目に反映しやすくなります。
- 記録:回ごとに別の実施記録と出席簿を作り、「基礎」「事例検討」のどちらの回かが分かるように書きます。
委員会(3か月に1回以上)との連動
解釈通知は、委員会が行うこととして、報告の様式の整備、事例の集計と分析、発生原因や適正化策の検討、報告された事例と分析結果の従業者への周知徹底、適正化策の効果の評価を挙げています。研修は、このうち「周知徹底」を確実に行う場として使えます(研修を周知の手段とすること自体は当社の提案です)。
- 例:年4回の委員会のうち2回を研修の前に置き、研修で扱う事例やテーマを決める。
- 研修で出た疑問や、記録の書き方の課題を次の委員会の議題にする。
- 委員会は、関係する職種や取り扱う事項が近いほかの会議体と一体的に設置・運営しても差し支えないとされています(解釈通知)。研修についての同じ趣旨の記述は見当たりません。
新規採用時の研修の組み方
新規採用時の研修は、入職者が出るたびに全体研修を開く必要はなく、上半期の基礎の回と同じ内容を個別に行う形が組みやすい方法です(当社の提案)。時期の定めは見当たりませんが、通知が「必ず」としているため、配属前後の早い時期に行い、実施日・内容・講師・受講者を、全体研修とは別の記録に残しておくと説明しやすくなります。
虐待防止研修と一緒に行えるか
身体拘束の研修と虐待防止の研修を同じ日にまとめて行ってよいとする記述は、確認した解釈通知・Q&A に見当たりませんでした(明文なし)。一方で、国の手引きは、適正な手続きを経ていない身体的拘束等は原則として高齢者虐待に当たるとしており、内容が重なる部分はあります。
同じ日に続けて行う場合は、それぞれの研修として成り立つ内容と時間を確保し、実施記録を研修ごとに分けておくと、運営指導でどちらの研修を何回行ったかを説明できます。回数は類型で違い、たとえば短期入所生活介護は身体拘束の研修が年2回以上、虐待防止の研修は年1回以上です。扱いに迷う場合は指定権者に確認してください。
運営指導で見られる書類
国の運営指導マニュアルの別添「確認項目及び確認文書」は、研修が義務の類型について、次の項目と文書を挙げています。
- 確認項目:「身体的拘束等の適正化のための研修を定期的に開催しているか」(特養・老健・介護医療院・短期入所・特定施設・グループホーム・小規模多機能など)。
- 確認文書:「身体的拘束等の適正化のための研修の開催状況及び結果がわかるもの」。あわせて、委員会の開催状況及び結果がわかるもの、指針、身体的拘束等の記録(拘束がある場合)が並びます。
- 残しておくもの(当社の提案):開催日時、テーマ(基礎か事例検討か)、講師、使った資料、出席者と欠席者、欠席者への対応、確認テストや振り返りの結果。
2回目に使う記録の扱いと、拘束の実績がない期間
2回目の記録レビューで実際の記録を教材にする場合は、利用者名を伏せたコピーを使い、研修後に回収して処分するなど、個人情報の扱いに配慮します。
拘束を行った実績がない期間は、想定事例(特定の利用者を連想させない、一般化した場面)を用意し、「この場面で3要件の記録をどう書くか」を練習する回にできます。国の手引きは、拘束を行わない方法について事前に研修等で検討することも有用で、代替方法を考える力を事業所全体で高め合うことが重要だとしています。実績がないことは望ましい状態で、研修の質を下げる理由にはなりません。
研修の義務がない類型が研修の形をとる場合
訪問系・通所系・福祉用具貸与・居宅介護支援でも、3要件を満たした記録が確認できなければ指導の対象になります。記録の書き方を共有する目的で任意に研修を行う場合、年2回という回数にとらわれず、必要なタイミングで行えば十分です。実施記録には、身体拘束の研修は任意で行っていることを書き添えておくと、義務の虐待防止研修と混同せずに管理できます。
無料で使える身体拘束適正化研修キット
本記事でご案内した年2回の組み分け(1回目=基礎、2回目=事例検討と記録レビュー)は、本サイトの「身体的拘束等の適正化研修キット」にある約30分のレジュメと確認テスト10問を1回目と新規採用時に、実施記録様式を2回目の記録レビューにそのまま使う前提で組んでいます。登録不要・無料で、入力内容はお使いのブラウザ内にのみ保存され、外部には送信されません。
この記事で確認した一次資料
2026年10月26日に、下の「出典」に挙げた運営基準(省令)、解釈通知(平成30年度・令和3年度・令和6年度の改正と介護医療院の通知)、告示、留意事項通知、平成30年度・令和6年度の改定事項、介護報酬の算定構造、国のQ&A、運営指導マニュアルと確認文書、国の手引き(令和7年3月)を取得し、該当箇所を確かめました。法令・介護報酬は改定されます。最終的な取扱いは指定権者(都道府県・市町村)にご確認ください。
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出典(一次資料)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)
- 厚生労働省「平成30年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)
- 介護保険最新情報 Vol.1213(令和6年度改定・解釈通知等改正)
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)
- 介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成11年厚生省令第40号)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)
- 指定地域密着型サービスの事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成18年厚生労働省令第34号)
- 介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準(平成30年厚生労働省令第5号)
- 厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について」(老企第43号)平成30年度改正の新旧対照表(PDF)
- 厚生労働省「介護老人保健施設の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について」(老企第44号)平成30年度改正の新旧対照表(PDF)
- 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(老企第25号)平成30年度改正の新旧対照表(別紙5・PDF)(全文)
- 厚生労働省「指定地域密着型サービス及び指定地域密着型介護予防サービスに関する基準について」(老計発第0331004号ほか)平成30年度改正の新旧対照表(別紙6・抄)
- 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(老企第25号)令和6年度改正の新旧対照表(別紙10・抄)
- 厚生労働省「指定地域密着型サービス及び指定地域密着型介護予防サービスに関する基準について」(老計発第0331004号ほか)令和6年度改正の新旧対照表(別紙11・抄)
- 厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について」(老企第43号)令和6年度改正の新旧対照表(別紙14・抄)
- 厚生労働省「介護医療院の人員、施設及び設備並びに運営に関する基準について」(老老発0322第1号・平成30年3月22日)
- 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(老企第25号)令和3年度改正の新旧対照表(PDF)
- 厚生労働省「指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準について」(老企第43号)令和3年度改正の新旧対照表(PDF)
- 厚生労働省「厚生労働大臣が定める基準」(平成27年厚生労働省告示第95号・法令等データベース)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(短期入所サービス及び特定施設入居者生活介護に係る部分)及び指定施設サービス等に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(老企第40号)令和6年度改正の新旧対照表(別紙2・抄)
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造」(令和6年4月改定・PDF)
- 介護保険最新情報 Vol.952(令和3年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.3)・令和3年3月26日)
- 介護保険最新情報 Vol.1345(令和6年度改定 Q&A)
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」(令和6年7月改訂)
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」別添 確認項目及び確認文書(令和6年7月改訂・PDF)
- 厚生労働省老健局「介護施設・事業所等で働く方々への身体拘束廃止・防止の手引き」(令和7年3月・PDF)
【免責事項】本キットは研修実施の参考資料です。法令・運営基準・介護報酬の内容は改定されることがあります。実際の運用にあたっての最終確認は、指定権者(都道府県・市区町村等の自治体)へのご確認をおすすめします。本キットの利用により生じた損害について、当社の損害賠償責任は、故意・重過失を除き購入代金の額を上限とします。