介護の研修時間は労働時間か|法定研修・自主研修の線引きと、賃金・時間外・記録の実務(2026)
更新日:2026-11-04・約21分で読めます
介護の研修の時間が労働時間に当たるかは、研修の名前ではなく、参加が業務上義務づけられているか、参加しないと不利益があるか、使用者の指示があるか、で判断されます。厚生労働省の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日)は、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講の時間を、労働時間として扱わなければならない時間の例に挙げています。介護向けの通達(訪問介護労働者の法定労働条件の確保について)も、研修時間の考え方を示しています。この記事は、ガイドライン・通達・令和8年6月のリーフレット・労働基準法の条文をページ番号や条番号つきで確かめ、法定研修と自主研修の線引き、賃金と時間外・休日・深夜の割増、勤務時間内に組む研修計画、動画・e-ラーニングの時間の数え方と記録を整理しました(2026年11月時点)。労働時間に当たるかは個別の事情で変わります。個別の判断は、労働基準監督署や社会保険労務士にご相談ください。
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研修キット(レジュメ・確認テスト・記録様式)
まず結論:物差しは「業務上の義務づけ」「不参加の不利益」「使用者の指示」。名前が研修かどうかでは決まらない
労働時間とは、使用者の指揮命令下に置かれている時間のことをいいます。ガイドラインは、使用者の明示又は黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たるとし、労働時間として扱わなければならない時間の例として「参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間」を挙げています(ガイドラインのPDF 1〜2ページ。以下、ページは各PDFの通し番号です)。
反対に、令和8年6月のリーフレットは、業務上義務づけられていない自由参加の研修・教育訓練であれば、その時間は労働時間に該当しないとしています。ただし、不参加が就業規則で減給処分の対象とされていたり、不参加によって業務を行うことができなかったりするなど、事実上参加を強制されている場合は、研修・教育訓練であっても労働時間に該当するとしています(リーフレット「労働時間の考え方:『研修・教育訓練』等の取扱い」1ページ)。
- 業務として命じて受けさせる研修:労働時間に当たるとされています(ガイドライン2ページのウ、介護の通達)。
- 明示の指示がなくても:不参加に就業規則上の制裁などの不利益がある、内容が業務と強く関わり参加しないと本人の業務に具体的な支障が出るなど、実質的に出席の強制があると認められる場合は、労働時間に当たるとされています(介護保険最新情報 Vol.912 の別添2、PDF 8ページ)。
- 自由参加の研修:参加の強制も不利益な取扱いもない勉強会などは、労働時間に該当しない事例として示されています(リーフレット1ページ)。
- 所定時間内の研修:所定時間内など業務中に行われる教育・訓練は、基本的には労働時間に該当するとされています(リーフレット「『研修・教育訓練』に関する労働時間の考え方」2ページ)。
- 決まり方:労働時間に当たるかは、労働契約・就業規則等の定めにかかわらず、客観的に、個別具体的に判断されるとされています(ガイドライン2ページ)。
物差しの原文①:ガイドラインの「労働時間の考え方」
ガイドラインの「3 労働時間の考え方」は、労働時間を「使用者の指揮命令下に置かれている時間」とし、次のアからウのような時間は労働時間として扱わなければならないとしています。ア(準備・後始末)、イ(いわゆる手待時間)と並んで、研修についての記載がウです(1〜2ページ)。
同じ箇所は、労働時間に該当するか否かは、労働契約、就業規則、労働協約等の定めのいかんによらず、労働者の行為が使用者の指揮命令下に置かれたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるとしています。また、使用者の指揮命令下に置かれていると評価されるかどうかは、労働者の行為が使用者から義務づけられ、又はこれを余儀なくされていた等の状況の有無等から、個別具体的に判断されるとしています(2ページ)。就業規則に「研修は労働時間に含めない」と書けば労働時間でなくなる、という考え方は、この文言と合いません。
- ウの原文:「参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間」(2ページ)。
- 自己申告で把握する場合の注意:休憩や自主的な研修、教育訓練、学習等であるため労働時間ではないと報告されていても、実際には使用者の指示により業務に従事しているなど指揮命令下に置かれていたと認められる時間は、労働時間として扱わなければならないとしています(3ページ)。
- 対象者:ガイドラインが労働時間の把握の対象とするのは、労働基準法第41条に定める者(管理監督者など)とみなし労働時間制が適用される労働者を除く全ての者です。適用されない労働者にも、健康確保のため適正な労働時間管理を行う責務があるとしています(1ページ)。
物差しの原文②:介護向けの通達と、介護労働者向けのパンフレット
介護の現場向けには、厚生労働省労働基準局長の通達「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」(平成16年8月27日 基発第0827001号、平成20年7月1日改正)があります。令和3年1月15日の介護保険最新情報 Vol.912 は、労働基準局と老健局の連名の周知徹底の通知に、この通達を別添2として付けています。通達は、移動時間・業務報告書等の作成時間・待機時間と並べて、研修時間を次のように書いています(Vol.912 のPDF 8ページ)。
「研修時間については、使用者の明示的な指示に基づいて行われる場合は、労働時間であること。また、研修を受講しないことに対する就業規則上の制裁等の不利益な取扱いがある場合や研修内容と業務との関連性が強く、それに参加しないことにより、本人の業務に具体的に支障が生ずるなど実質的に使用者から出席の強制があると認められる場合などは、たとえ使用者の明示的な指示がなくとも労働時間に該当するものであること。」
この通達は訪問介護労働者についてのものですが、厚生労働省・労働局・労働基準監督署のパンフレット「介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント」(平成29年2月)は、専ら介護関係業務に従事する全ての労働者を対象に、研修時間を「労働時間として取り扱っていない例がみられる」時間の1つに挙げ、同じ考え方を示しています(パンフレットのPDF 1ページ・4ページ)。同じページには、交替制勤務における引継ぎ時間、業務報告書等の作成時間、利用者へのサービスに係る打ち合わせ・会議等の時間、使用者の指揮命令に基づく施設行事等の時間とその準備時間も並んでいます。
令和8年6月のリーフレットにある事例:該当する・該当しないの分かれ目
厚生労働省は、令和8年6月付けで研修・教育訓練についてのリーフレットを2種類出しています。1つは労働基準監督署への相談事例をもとにしたもの、もう1つは裁判例等に基づく事例を紹介したものです。介護以外の業種の事例ですが、分かれ目の考え方は介護の研修にも当てはめて考えられます。以下は要約です。
- 該当しない事例(相談事例・1ページ):終業後の夜間に行い、参加の強制も不参加の不利益な取扱いもない勉強会/会社の設備を使う許可をとったうえで、自ら申し出て、指揮命令を受けずに勤務時間外に行う訓練/業務と関連のない任意参加の講習。
- 該当する事例(相談事例・1ページ):使用者が指定する社外研修に休日の参加を指示され、後日レポートの提出も課される研修/先輩の業務を見学しなければ実際の業務に就けないとされている場合の業務見学。
- 該当しないと考えられる事例(裁判例等・1ページ):労働者の自主的なスキルアップのためのweb学習ツールを提供しているが、使用者が受講を指示しておらず、習熟度を測る試験も実施しておらず、受講状況を人事評価に反映させていない場合など。
- 該当すると考えられる事例(裁判例等・2ページ):自由参加の勉強会という位置づけでも、使用者が参加者・日時・場所を決め、参加後にレポートを求め、遅刻や欠席に指導が行われていた場合/形式上は自由参加でも、業務に関わる内容で、受講が正社員になるための要件とされ、参加できるよう使用者がシフトを調整していたなど、事実上参加が強制されていた場合。
法定研修(運営基準で求められる研修)はどう考えるか
運営基準(省令)は、研修の機会の確保を事業者の義務としています。訪問介護の基準(平成11年厚生省令第37号)第30条第3項は「訪問介護員等の資質の向上のために、その研修の機会を確保しなければならない」、特養の基準(同第39号)第24条第3項は「従業者に対し、その資質の向上のための研修の機会を確保しなければならない」としています。特養の同じ項は、資格を持つ人などを除く全ての従業者に、認知症介護に係る基礎的な研修を受講させるために必要な措置を講じることも求めています(2026年11月4日に e-Gov 法令検索で確認)。虐待の防止・感染症・業務継続計画(BCP)などの研修は、解釈通知が回数を定めています。
一方、今回確認した運営基準と通知には、これらの研修の時間を労働時間として扱うかどうかを直接定めた記載は見当たりませんでした。研修の時間が労働時間に当たるかは、労働基準法の考え方(上のガイドラインと通達)で判断することになります。事業所が運営基準に沿って計画し、職員に業務として受講を命じる研修は、ガイドラインのウ(参加することが業務上義務づけられている研修)や通達の「使用者の明示的な指示に基づいて行われる場合」に当てはめて考えることになり、業務として命じて受けさせる研修は労働時間に当たるとされています。
- 認知症介護基礎研修:国のQ&A(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問161)は、受講させるための必要な措置の例に「受講料の負担や、勤務時間内に受講出来るような配慮(シフトの調整等)、インターネット環境の整備等」を挙げています(介護保険最新情報 Vol.1225 のPDF 98ページ)。受講の時間を労働時間とするかを定めた記載は、同じ問にはありません。
- 迷う場合:事業所として受講を求めているのか、自由参加なのかを、研修ごとに決めて職員に示しておくと、後で扱いが食い違いにくくなります(当社の整理)。
- 個別の判断:同じ研修でも、指示の仕方、不参加の扱い、業務との関連で結論が変わり得ます。個別の扱いは、労働基準監督署や社会保険労務士に確認してください。
自主的な研修・資格取得の勉強はどう考えるか
リーフレットは、業務上義務づけられていない自由参加の研修・教育訓練の時間は、労働時間に該当しないとしています(相談事例のリーフレット1ページ)。職員が自分の判断で受ける外部の勉強会や、自宅での資格試験の勉強は、使用者の指示も不参加の不利益もなければ、この「自由参加」に近い位置づけになります。
ただし、名目が自主研修でも、受講を指示している、受講状況を確認して試験を課している、受講を人事評価や登用の要件にしている、参加できるようシフトを組んで実質的に出席を求めている、といった事情が重なると、リーフレットの「該当すると考えられる事例」に近づきます(裁判例等のリーフレット1〜2ページ)。どの事情がいくつあれば労働時間になる、という基準はリーフレットに書かれていません。
- 処遇改善加算との関係:介護職員等処遇改善加算のキャリアパス要件Ⅱのbは、資格取得のための支援として「研修受講のための勤務シフトの調整、休暇の付与、費用(交通費、受講料等)の援助等」を挙げています(介護保険最新情報 Vol.1479 のPDF 8ページ)。通知には、こうした支援をした研修の時間が労働時間に当たるかどうかの記載は見当たりません。
- 支援と指示を分ける:受講料の援助やシフトの調整は、それだけで労働時間になると書かれているわけではありません。一方、受講を業務として命じるなら、その時間は労働時間として扱う方向になります。支援として行うのか、業務として命じるのかを、案内の文書に書き分けておくと説明しやすくなります(当社の整理)。
- 休暇を付与して受講させる場合:休暇の扱い(有給か無給か、年次有給休暇とは別か)は、就業規則等で定めておきます。資料に一律の決まりは見当たりません。
賃金:研修が労働時間なら、通常の賃金と、時間外・休日・深夜の割増の対象になる
介護向けの通達は、賃金はいかなる労働時間についても支払われなければならないものであるので、労働時間に応じた賃金の算定を行う場合は、訪問介護の業務に直接従事する時間のみならず、研修時間などの労働時間を通算した時間数に応じた賃金の算定を行うこととしています(Vol.912 のPDF 9ページ)。介護労働者向けのパンフレットも、時給制などの場合は、研修時間等の介護サービスに直接従事した時間以外の労働時間も通算した時間数で算定するよう求めています(パンフレットのPDF 7ページ)。
同じ通達は、訪問介護の業務に直接従事する時間と、それ以外の業務に従事する時間の賃金水準は、最低賃金額を下回らない範囲で、労使の話合いにより決定されるべきものとしています(Vol.912 のPDF 9ページ)。研修時間の時給を介護の時間と同じにしなければならない、とまでは書かれていませんが、最低賃金額を下回ることはできません。
割増賃金は、労働基準法第37条に定めがあります。数字は条文と政令の文言のとおりで、当社が計算した率ではありません(2026年11月4日に e-Gov 法令検索で確認)。
- 時間外・休日(第37条第1項):第33条又は第36条第1項の規定により労働時間を延長し、又は休日に労働させた場合は、「通常の労働時間又は労働日の賃金の計算額の二割五分以上五割以下の範囲内でそれぞれ政令で定める率以上の率で計算した割増賃金」を支払うこととしています。延長した時間が1か月について60時間を超えた場合は、その超えた時間について「五割以上の率」としています。
- 政令の率:時間外の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令は、延長した労働時間の労働については「二割五分」、休日の労働については「三割五分」としています。
- 深夜(第37条第4項):午後10時から午前5時までの間に労働させた場合は、「通常の労働時間の賃金の計算額の二割五分以上の率」で計算した割増賃金を支払うこととしています。
- 法定労働時間(第32条):休憩時間を除き1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させてはならないとしています。研修でこれを超える場合は、第36条の協定(いわゆる36協定)の締結と届出が前提になります。変形労働時間制(第32条の2以下)を採る事業所や、常時10人未満の労働者を使用する一部の事業(別表第一第十三号の保健衛生の事業など)について1週間44時間までとする施行規則第25条の2の特例の対象となる事業所は、この時間の数え方が変わるため、自事業所の就業規則と届出を確認してください。
- 休日(第35条):毎週少なくとも1回(4週間を通じ4日以上とする定めもある)の休日を与えることとしています。休日に研修への参加を指示すれば、その日の扱いが問題になります。
- 所定の時間を超えたが法定の範囲内の時間:第37条第1項の割増は、条文上、法定の労働時間を延長した場合の定めです。所定労働時間を超えた部分に割増を付けるかは、就業規則や労働契約の定めを確認してください。
休憩時間に研修を入れない:休憩は自由に利用させるもの
労働基準法第34条は、労働時間が6時間を超える場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えること、そして休憩時間を自由に利用させることを定めています(第1項・第3項)。
昼の休憩時間に、参加が求められる研修を入れると、その時間は自由に利用できる休憩とはいえなくなります。研修は休憩とは別の時間帯に組み、休憩は別に確保するのが条文に沿った組み方です(当社の整理)。
勤務時間内に組む研修計画の作り方(当社の整理)
研修を業務として行うなら、最初から勤務時間の中に枠を取っておくと、賃金と時間外の扱いで迷う場面が減ります。年間計画の月割りは、関連記事「介護の年間研修計画の立て方」の類型別の例をそのまま使えます。そのうえで、勤務の側から次の点を確かめます。月の配置や時間の決め方は当社の提案で、法令や通知の定めではありません。
- 勤務表に研修を「勤務」として書く:研修の日時を、シフト表・勤務表の勤務時間として入れます。
- 時間を決める:本サイトの研修キットは、読み合わせと確認テストで約30分の構成です。研修の時間と、移動や準備の時間を含めて勤務に入れます。
- 複数回に分ける:全員が一度に集まりにくい職場は、同じ内容を日勤帯・遅番・夜勤明け前などに分けて行い、それぞれを勤務時間内に入れます。
- 夜勤の職員:午後10時から午前5時までに研修を行うと、深夜の割増の対象になります。夜勤者向けの回を設ける場合は、時間帯を決めてから計画に入れます。
- 登録ヘルパー・短時間の職員:訪問介護の解釈通知は、BCPの研修を登録訪問介護員等を含めて行うとしています。業務として受講を求める研修であれば、研修に来た時間も労働時間を通算した時間数に入れて時給を算定します(Vol.912 のPDF 9ページ)。
- 休日は避ける:休日に参加を指示する研修は、休日労働になり得ます。予備月を年間計画に置き、欠席者の補講も勤務時間内で行います。
動画・e-ラーニング・個別の読み合わせの時間の数え方と記録
動画やe-ラーニング、紙の資料を各自で読む形の研修でも、考え方は集合研修と同じです。まず、ガイドラインは、労働時間として扱わなければならない時間の例(ウ)に「使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間」を挙げています(ガイドラインのPDF 2ページ)。事業所が受講を指示した業務に必要な学習は、この例に当たる方向で考えることになります。そのうえで、裁判例等のリーフレットは、自主的なスキルアップのためのweb学習ツールで、使用者が受講を指示しておらず、習熟度を測る試験もなく、受講状況を人事評価に反映させていない場合を、労働時間に該当しないと考えられる事例に挙げています(1ページ)。リーフレットは逆の場合を直接は書いていませんが、事業所が受講を指示し、確認テストを課し、受講の記録を集めて運営基準の研修の実績にするなら、事業所の研修として受けさせている形になり、労働時間に当たる方向で考えることになります。
各自で受ける研修は、何時から何時まで受けたかが見えにくくなります。ガイドラインは、使用者が労働日ごとの始業・終業時刻を確認し記録することを求め、自己申告制による場合は、実態を正しく記録・申告するよう十分に説明し、必要に応じて実態調査をして補正することとしています(ガイドライン2〜3ページ)。勤務時間内に受講時間を指定するか、受講した日時と時間を本人に記録してもらい勤務の記録と合わせるか、どちらかの形にしておきます(当社の整理)。
- 受講の時間を決める:「この週の勤務時間内に、約30分」のように、受講する時間を勤務の中に指定します。
- 日時を残す:研修の実施記録には、実施日時・方法(集合・オンライン・各自の受講)・内容・参加者を書きます。各自で受けた場合は、職員ごとの受講日と時間を出席簿の備考などに残します。
- 持ち帰らせない:自宅で見るよう指示すると、その時間の把握が難しくなります。勤務時間外に受けた分があれば、労働時間として申告してもらう取り決めにしておきます。
- 確認テストの扱い:確認テストは理解の確認の道具です。点数を人事評価に直結させるかは事業所の判断ですが、関連記事「確認テストの作り方」のとおり、当社はおすすめしていません。
記録:研修の記録と労働時間の記録は、根拠も保存の決まりも別
研修の記録は、運営基準の解釈通知が「研修の実施内容についても記録することが必要である」とし、運営指導では「研修の計画及び実績がわかるもの」などが確認文書になります。様式や研修記録だけの保存年限を定めた国の規定は、関連記事「介護の研修記録の書き方」で確認した範囲には見当たりません。
労働時間の記録は、労働基準法の側の決まりです。ガイドラインは、賃金台帳に労働日数、労働時間数、休日労働時間数、時間外労働時間数、深夜労働時間数といった事項を適正に記入すること(第108条)、出勤簿やタイムカード等の労働時間の記録に関する書類を保存すること(第109条)を挙げています(ガイドライン4ページ)。保存期間について、ガイドラインは策定時の条文に沿って3年間と書いていますが、現在の第109条は「五年間」とし、附則第143条で当分の間「三年間」と読み替えています(2026年11月4日に e-Gov 法令検索で確認)。
- 研修の側:実施記録・出席簿・レジュメ・確認テスト(運営指導での確認に備える)。
- 勤務の側:勤務表・タイムカード等の始業終業の記録・賃金台帳(研修の時間も労働時間数・時間外労働時間数に入る)。
- 突き合わせ:研修の実施日時と、その日の勤務の記録が食い違っていないかを、研修のたびに確かめます(当社の整理)。
労働時間に当たらない扱いにする研修の決め方
自由参加の勉強会などを労働時間に当たらない扱いにする場合について、相談事例のリーフレットは、上司がその研修・教育訓練を行うよう指示しておらず、かつ、開始する時点で本来業務や本来業務に不可欠な準備・後処理は終了しており、労働者はそれらの業務から離れてよいことを、あらかじめ労使で確認しておくよう勧めています。具体的には、通常の勤務場所とは異なる場所で行う、通常勤務でないことが外形的に見分けられる服装で行うなどを定め、こうした取扱いの実施手続を書面で明確化することが望ましいとしています(2ページ)。
このように決めても、実際に参加を事実上強制していれば労働時間に該当し得る点は変わりません(1ページ)。運営基準で求められる研修の実績にする研修を、自由参加の扱いにすると、参加者が集まらず回数や対象者の要件を満たせないおそれもあります。運営基準の研修は業務として勤務時間内に行い、自由参加の勉強会はそれと分けて案内する、という分け方がわかりやすくなります(当社の整理)。
よくある誤りと、資料に照らした考え方(当社の整理)
上の資料の文言に照らして、起こりやすいものを挙げます。件数などの統計ではありません。
- 「研修は勉強だから無給」:業務上義務づけられている研修の受講時間は、労働時間として扱わなければならない時間の例に挙がっています(ガイドライン2ページ)。研修という名前だけで無給にはできません。
- 「休日に受けてもらい、自己研鑽として扱う」:使用者が指定する社外研修に休日の参加を指示し、レポートも課す研修は、労働時間に該当する事例として示されています(相談事例のリーフレット1ページ)。
- 「本人に自主研修と申告させれば労働時間でない」:自主的な研修と報告されていても、実際に指揮命令下に置かれていたと認められる時間は、労働時間として扱わなければならないとされています(ガイドライン3ページ)。
- 「就業規則に研修は労働時間外と書いた」:労働時間に当たるかは、就業規則等の定めのいかんによらず客観的に定まるとされています(ガイドライン2ページ)。
- 「時給は介護をした時間だけ」:研修時間などの労働時間を通算した時間数で賃金を算定するよう示されています(Vol.912 のPDF 9ページ)。
- 「昼休みに研修を済ませる」:休憩時間は自由に利用させることとされています(労働基準法第34条第3項)。
- 「形式は自由参加だから大丈夫」:不参加に不利益がある、受講が登用の要件になっているなど、事実上強制されている場合は労働時間に該当するとされています(リーフレット1〜2ページ)。
研修の中身は無料の研修キットで、勤務時間内の約30分に収める
本サイトの研修キット(虐待防止・身体拘束の適正化・感染症対策・BCP・事故防止・ハラスメント対策など全11テーマ)には、読み上げ用のレジュメ・確認テスト・実施記録様式・出席簿があり(認知症介護基礎研修は受講案内と受講記録の様式)、登録不要・無料で表示と印刷(PDF保存)ができます。読み合わせと確認テストで約30分の構成なので、勤務時間内の枠に入れやすくなっています。実施記録様式には開催日時と研修方法(集合研修・オンライン・その他)の欄があり、各自で受けた場合の記録にも使えます。サービス類型を選ぶと、義務研修の一覧と、頻度に応じて月を配置した年間計画表も作れます。入力内容はお使いのブラウザの中にだけ保存され、外部には送信されません。
労働時間に当たるかは、指示の仕方、不参加の扱い、業務との関連などの個別の事情で変わります(本記事は2026年11月時点)。個別の判断は、労働基準監督署や社会保険労務士にご相談ください。本記事は法的助言ではありません。
この記事で確認した一次資料
2026年11月4日に、下の「出典」に挙げた資料を取得し、PDFは本文を直接テキスト化して該当箇所を確かめました。ページ番号は各PDFの通し番号です。法令の条文は e-Gov 法令検索の現行の本文で確かめました。厚生労働省の労働基準関係リーフレットの一覧では、研修・教育訓練についての2種類のリーフレットはいずれも令和8年6月の版でした。確認できなかった事項は、本文で「見当たらない」「確認してください」と書いています。
- 労働時間の考え方:労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン(平成29年1月20日)、リーフレット2種(R8.6)。
- 介護向け:介護保険最新情報 Vol.912(別添2=基発第0827001号)、介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント(平成29年2月)。
- 法令:労働基準法 第32条・第34条・第35条・第36条・第37条・第108条・第109条・附則第143条、労働基準法施行規則 第25条の2、割増賃金に係る率の最低限度を定める政令、平成11年厚生省令第37号 第30条、同第39号 第24条。
- 介護保険の通知:介護保険最新情報 Vol.1225(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問161)、Vol.1479(処遇改善加算の令和8年度分の通知)。
この記事を書いたチームは、note でも介護の仕事で考えたことを書いています。note をフォローする
出典(一次資料)
- 厚生労働省「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」(平成29年1月20日策定・基発0120第3号・PDF・2026年11月4日確認)
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 リーフレット「労働時間の考え方:『研修・教育訓練』等の取扱い」(R8.6・PDF・2026年11月4日確認)
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 リーフレット「『研修・教育訓練』に関する労働時間の考え方」(R8.6・裁判例等に基づく事例・PDF・2026年11月4日確認)
- 介護保険最新情報 Vol.912(訪問介護労働者の移動時間等の取扱いについて(周知徹底)・令和3年1月15日/別添2=基発第0827001号「訪問介護労働者の法定労働条件の確保について」平成16年8月27日・平成20年7月1日改正・PDF)
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「介護労働者の労働条件の確保・改善のポイント」(平成29年2月・PDF)
- 労働基準法(昭和22年法律第49号)第32条・第34条・第35条・第36条・第37条・第89条・第108条・第109条・附則第143条
- 労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)第25条の2(常時10人未満の労働者を使用する一部の事業の労働時間の特例)
- 労働基準法第三十七条第一項の時間外及び休日の割増賃金に係る率の最低限度を定める政令(平成6年政令第5号)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)
- 指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第39号)
- 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年度改定・解釈通知改正)
- 介護保険最新情報 Vol.1225(令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)・令和6年3月15日)
- 厚生労働省老健局「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和8年度分)」(令和8年3月13日 老発0313第6号)及び「介護職員等処遇改善加算に関するQ&A(第1版)」(介護保険最新情報 Vol.1479・PDF・2026年10月26日確認)
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