運営指導(実地指導)の準備書類チェックリスト|類型別の確認文書(研修・委員会・指針・BCP・訓練)と事前提出・当日提示の分け方(2026)
更新日:2026-10-26・約14分で読めます
運営指導(旧・実地指導)で見られる書類は、厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」別添の「確認項目及び確認文書」にサービス種別ごとに載っており、指導指針は「確認文書以外の文書は原則求めない」と定めています。この別添から、研修・委員会・指針・業務継続計画(BCP)・訓練にかかわる確認文書を原文の文書名のまま類型別のチェックリストにし、事前提出と当日提示の分け方、各文書が「そろっている状態」の目安、新規採用時研修の類型別の書き分け、保存と整理の仕方を、指導指針・マニュアル・解釈通知の原文で整理しました(2026年10月時点)。
まず結論:基準は国の「確認文書」。研修まわりは4つの束+類型ごとの上乗せ
運営指導で確認される項目と文書は、運営指導マニュアル(令和4年3月策定・令和6年7月改訂)の別添に、介護予防を含む39のサービス種別ごとにまとめられています。指導の基本を定めた「介護保険施設等指導指針」は、介護サービスの実施状況指導と最低基準等運営体制指導について、「確認項目以外の項目は、特段の事情がない限り確認を行わない」「確認文書以外の文書は原則求めない」と定めています。2026年10月26日に、別添の全頁から、研修・委員会・指針・BCP・訓練にかかわる確認文書を種別ごとに抜き出しました。
- 構造:研修まわりの確認文書は、ほとんどの種別に共通する4つの束(①勤務体制の確保等 ②業務継続計画 ③感染症 ④虐待の防止)に、類型ごとの上乗せ(認知症介護基礎研修・非常災害の訓練・身体的拘束等の適正化・事故発生の防止・生産性向上の委員会・運営推進会議)が加わる形です。
- 1つで足りれば1つでよい:確認文書として複数が例示されていても、その1つで確認できれば、複数を求めることは要しないとされています。運営基準に明記されていない例示は、提出がなくても基準違反にはなりません。
- 例外:確認文書で確認項目が確認できない場合は、別の文書を求められることがあります。加算は、確認文書に限らず算定要件ごとの書類で確認されます。
- 新規採用時研修の書き方は、類型と分野で違います。感染症とBCPを、すべての類型について一括りに「新規採用時が望ましい」とは書けません(後の節で類型別に整理しました)。
チェックリスト①:ほとんどの種別に共通する4つの束(原文の文書名)
別添に並ぶ確認文書の名前を、原文の言葉のまま書きます。かぎ括弧の外の補足は当社の整理です。各文書が「そろっている」とはどういう状態かは、後の節で述べます。
- ①勤務体制の確保等:「研修の計画及び実績がわかるもの」と、「職場におけるハラスメントによる就業環境悪化防止のための方針」。勤務体制・勤務実績がわかるもの(勤務体制一覧表、勤務実績表)と、雇用の形態がわかるものも並びます。
- ②業務継続計画の策定等:「業務継続計画」「研修の計画及び実績がわかるもの」「訓練の計画及び実績がわかるもの」。確認項目は、計画の策定と必要な措置、従業者への周知・研修・訓練の定期実施、定期的な見直しの3つです。
- ③感染症(衛生管理等):委員会の「開催状況・結果がわかるもの」、指針、「研修及び訓練の実施状況・結果がわかるもの」。委員会の頻度は確認項目に、おおむね6月に1回以上と書かれています。特養・老健・介護医療院・地域密着型特養は、おおむね3月に1回以上で、「感染症及び食中毒」の予防・まん延の防止という言い方になります。
- ④虐待の防止:委員会の「開催状況及び結果がわかるもの」、指針、「研修の計画及び実績がわかるもの」、「担当者を置いていることがわかるもの」。運営規程に「虐待の防止のための措置に関する事項」を定めているかも、確認項目に入っています。
チェックリスト②:サービス類型ごとの上乗せ
お使いのサービスの行に書かれたものを、上の4つの束に足したものが、研修まわりの確認文書です。介護予防のサービスも、おおむね対応する本体の種別と同じ形です(細部は各頁で確かめてください)。
- 訪問介護・訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅療養管理指導・定期巡回・夜間対応型:4つの束のみです。認知症介護基礎研修の項目はありません。居宅療養管理指導の頁には、業務継続計画と虐待の防止の欄に「令和9年4月1日より義務化」の注記があります。
- 訪問入浴介護:4つの束に加えて、認知症介護基礎研修の「受講させるため必要な措置を講じているか」が確認項目に入ります。
- 通所介護・通所リハビリテーション・地域密着型通所介護・認知症対応型通所介護:4つの束に加えて、認知症介護基礎研修の項目と、非常災害対策の「非常災害時の対応計画」「避難・救出等訓練の実施状況がわかるもの」「通報、連絡体制がわかるもの」が並びます。地域密着型通所介護と認知症対応型通所介護には運営推進会議の記録もあります。
- 福祉用具貸与・特定福祉用具販売:①の研修は項目名が別で、「適切な研修の機会の確保並びに福祉用具専門相談員の知識及び技能の向上等」の項に「研修の計画及び実績がわかるもの」が並びます。ハラスメントの方針は「勤務体制の確保等」の項です。②〜④は4つの束と同じです。居宅介護支援は、4つの束のみです。
- 短期入所生活介護・短期入所療養介護・特定施設入居者生活介護:4つの束、認知症介護基礎研修、非常災害対策に加えて、身体的拘束等の適正化の指針、検討委員会(3月に1回以上)の「開催状況及び結果がわかるもの」、研修の「開催状況及び結果がわかるもの」が並びます。生産性向上のための委員会の「開催状況がわかるもの」は、「令和9年3月31日まで努力義務」の注記つきです。
- 介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護医療院・地域密着型介護老人福祉施設:上の行に加えて、事故発生の防止の指針、委員会の「開催状況及び結果がわかるもの」、「研修の計画及び実績がわかるもの」、「担当者を置いていることがわかるもの」が並びます。感染症の委員会は3月に1回以上です。地域密着型介護老人福祉施設には、運営推進会議の記録もあります。
- 認知症対応型共同生活介護・小規模多機能型居宅介護・看護小規模多機能型居宅介護・地域密着型特定施設:短期入所系と同じ形の身体的拘束等の適正化、非常災害対策、生産性向上の委員会が並び、運営推進会議の記録もあります。認知症対応型共同生活介護と(看護)小規模多機能型居宅介護の管理者の欄には「研修を修了したことがわかるもの」もあります。
事前提出と当日提示の分け方:決めるのは通知文と自治体
マニュアルは、事前提出資料について、多くの自治体で実施されていると考えられるとしつつ、運営指導を行う上で必ず求めなくてはならないわけではない、と書いています。求める場合も必要最小限にとどめ、自治体がすでに持つ情報や事業所のホームページで足りる情報は、改めて求めなくてよいとされています。
確認文書や加算の算定要件の文書についても、事前に提出を求めることは可能ですが、基本は一次資料を現場で確認することが重要で、これも必要最小限にとどめるとされています。自己点検の結果は、事前または当日に提出を求めるのが一般的ですが、自己点検シートの提出だけで済ませる形は、書面だけで行う指導と変わらないとして、当日は確認文書を実際に見て、管理者等の話を聞くことが必要だとされています。
- 事前提出に回るもの:通知文の「準備すべき書類等」と、自治体が示す事前提出資料・自己点検シートに挙がったものです。何を事前に出すかは、通知文で確かめます。
- 当日に提示するもの:事前提出に挙がっていない確認文書は、当日すぐに出せる場所に置きます。原本が基本ですが、監査とは異なり、写しなどの二次資料でも差し支えないとされています。
- 部数:事前や当日に提出を求める資料は1部のみ。新規指定・更新・変更の際に提出済みの文書は、再提出を求めないとされています。
- オンラインの場合:確認文書の共有は、オンライン会議システム等の機能の活用、PDFなどの電子媒体による事前提出、または事前に原本を出し、行政が写しを取って返却する方法などが想定されています。
- 当社の提案:事前に提出したものは、提出した版を控えとして残し、当日の説明と食い違わないようにします。
「そろっている状態」の目安(当社の整理)
確認文書の言葉は「計画及び実績がわかるもの」「開催状況及び結果がわかるもの」「実施状況・結果がわかるもの」などです。記録の様式や記載項目を定めた規定は、今回確かめた資料にはありません。次は、原文の言葉を満たすための当社の整理です。解釈通知(介護保険最新情報 Vol.934)は、虐待防止・感染症・BCPの研修について、研修の実施内容も記録することを求めています。
- 研修の計画:年度の計画に、分野・予定月・対象者・新規採用時の扱いが入っていて、前年度の計画も出せる。
- 研修の実績:実施した回ごとに、実施日・研修名・講師・参加者(出席簿)・使った資料・扱った内容の要点がそろい、前年度から直近まで切れ目がない。
- 委員会:開催日・出席者・検討結果・従業者への周知の方法が残っている。併設の事業所と合同で開いた場合も、その事業所としての開催がわかる記録を整える(福井市の集団指導資料の言い方。研修・訓練も同様)。
- 指針:現行の基準と通知に沿った項目で、改定した日が分かる(改定履歴は当社の提案)。運営規程に虐待の防止の措置が入っている。
- BCP:計画本体、従業者への周知、研修と訓練それぞれの計画と実績、見直しの記録。訓練は感染症と災害の両方を想定する。
- 担当者:虐待の防止・事故発生の防止の「担当者を置いていることがわかるもの」は、担当者名を定めた文書や委員会の名簿などで示す(例は当社の整理)。
- ハラスメント:方針の文書と、相談窓口を従業者に周知したことがわかるもの。
- 認知症介護基礎研修:医療・福祉関係の資格のない従業者ごとの受講状況の一覧。新たに採用した従業者は、採用後1年を経過するまでに受講させます(Vol.934)。
- 非常災害:消防計画や風水害・地震の計画、避難・救出等訓練の実施状況、通報・連絡体制。
新規採用時研修の書き方:分野と類型で3段階
省令には「新規採用時」の語がなく、解釈通知(介護保険最新情報 Vol.934。身体的拘束等の適正化は Vol.1213 と平成30年度改正の通知)が、分野と類型ごとに書き分けています。2026年10月26日に原文を確かめた結果です。入職手続きのチェックリストは、この3段階で作ります。
- 「必ず…実施することが重要」:虐待の防止は、どの類型も(年1回以上の類型も、年2回以上の類型も)です。感染症は、年2回以上の施設系(特養・地域密着型特養・老健・介護医療院)です。身体的拘束等の適正化は、確認した短期入所系・小規模多機能系・特定施設・施設系の通知です。
- 「実施すること」:感染症は居住系(特定施設・地域密着型特定施設・グループホーム)です。BCPは、施設系・居住系の年2回以上の類型で、新規採用時に「別に研修を」実施することとされています。
- 「望ましい」:感染症とBCPは、年1回以上の類型(訪問系・通所系・短期入所系・多機能系・居宅介護支援・福祉用具貸与など)です。
- 福井市の集団指導資料は、BCPや感染症の研修・訓練を、年1回以上(施設・居住系は年2回以上)と新規採用時に実施し、実施内容を記録するよう書いています。自治体の言い方は、国の通知より強い場合があります。事業所の所在地の自治体の資料も確かめてください。
保存と整理の仕方
研修の記録の保存年限を直接定めた規定は、今回確かめた資料にはありません。訪問介護の運営基準(平成11年厚生省令第37号)第39条第2項が「その完結の日から二年間保存」とするのは、訪問介護計画、サービス提供の記録、身体的拘束等の記録、市町村への通知に係る記録、苦情の内容等の記録、事故の状況等の記録の6つで、研修の記録は挙がっていません。
運営指導マニュアルは、文書等の保存年限について「2年から5年程度に定めている場合が多いと思いますが」と書いたうえで、運営指導では運営指導を行う年度の前年度から直近(おおむね1月程度前まで)の実績にかかるものを確認するとしています。保存すべき文書がない等の不明な点が見つかり、それより過去を確認せざるを得なくなった場合は、監査を実施する必要がある、とも書かれています。実際の保存年限は、指定権者に確認してください。
- 最低ライン:前年度から直近までの計画・実績・議事録は、いつでも出せる場所に置きます。
- 束ね方(当社の提案):分野ごと(虐待防止・身体的拘束等の適正化・感染症・BCP・事故発生の防止・認知症介護基礎研修・ハラスメント)に、指針、委員会の記録、研修の計画と実績を1か所にまとめます。電磁的記録で管理している書類は、ディスプレイ上での確認でよく、印刷した書類の準備や提出は求めないとされています。
自治体の公表例から見える点と、言えないこと
福井市の令和6年度の集団指導資料は、運営指導の主な指摘事項を、項目ごとに「指摘事項」と「改善のしかた」の形で載せています。研修まわりでは、医療・福祉関係の資格のない従業者に認知症介護基礎研修を受講させていない、ハラスメント防止の方針がセクシャルハラスメントのみになっている、BCPや感染症、虐待防止の研修の実施内容が記録されていない、感染対策委員会の結果を従業員に周知していない、といった項目が並びます。
ただし、これは1つの自治体が公表した例で、全国の傾向や、研修の不備の多さを示すものではありません。国が研修の不備の件数を集計して公表した資料は、確かめた範囲に見当たりませんでした。研修の中身よりも、実施内容の記録、委員会の結果の周知、指針の項目といった「書類で確かめられるか」にかかわる項目が目立つ、というのが当社の読み方です。
運営指導の仕組みと当日の流れ(要点)
令和4年3月31日の通知で新しい指導指針が定められ、令和元年の実地指導の標準化の通知は廃止されました。同じ月の全国課長会議資料は、実地指導の名称を「運営指導」に改めるとしています。運営指導は、介護保険法第23条・第24条にもとづく行政指導で、立入検査の権限はなく、相手方の任意の協力によって行われるものです。
- 3つの指導:介護サービスの実施状況指導、最低基準等運営体制指導、報酬請求指導。研修まわりの確認文書は、主に最低基準等運営体制指導で、管理者などが書類を見ながら説明する形で確認されます。
- 頻度:原則として指定又は許可の有効期間(6年)内に少なくとも1回以上。居住系・施設系は3年に1回以上が望ましいとされています。
- 事前通知:原則として実施日の1月前までに、根拠規定と目的、日時と場所、指導担当者、事業所の出席者、準備すべき書類等、当日の進め方・流れの6つを文書で通知します。高齢者虐待が疑われる場合などは、指導の開始時の通知です。
- 対象期間:原則として前年度から直近(おおむね1月程度前まで)の実績にかかるもの。利用者の記録は、特に必要な場合を除き、原則3名以内です。
- 出席者:管理者のほか、実情に詳しい従業者や、法人の労務・会計の担当者が同席しても差し支えありません。
- 結果:特段の改善事項がない場合も通知されます。違反は文書指導(期限を定めた改善報告)、軽微な場合は口頭指導、違反でなければ助言という区分がマニュアルに整理されています。当日の講評は必ず行うものではありません。
- 監査への切り替え:確認文書の不備などで確認項目が確認できない場合や、虚偽の報告・答弁が疑われる場合は、監査に切り替わる例に挙げられています。足りない書類があっても、日付をさかのぼって作り直さず、今ある記録をそのまま出して、足りない点と今後の改善策を説明するのが基本です。
無料で使える研修キットと年間計画表
本サイトでは、虐待防止・身体拘束・感染症対策・BCP・事故防止など、テーマ別の研修キット(レジュメ・確認テスト10問・実施記録様式・出席簿)を無料でご利用いただけます。実施記録様式と出席簿は、確認文書の「研修の計画及び実績」を残す用途に使えます。登録不要・無料で、入力内容はお使いのブラウザ内にのみ保存され、外部には送信されません(zero-retention)。サービス類型を選べば、義務研修が頻度に応じて自動配置された年間計画表も作れます。
法令・介護報酬・運営指導の運用は、改定や自治体による違いがあります(本記事は2026年10月時点)。最終的な運用は、指定権者(都道府県・市区町村等の自治体)へご確認ください。
この記事で確認した一次資料
2026年10月26日に、下の「出典」に挙げた介護保険施設等指導指針、運営指導マニュアル(令和6年7月改訂)と別添「確認項目及び確認文書」、令和4年3月の全国課長会議資料、解釈通知(Vol.934・Vol.1213・平成30年度改正の通知)、訪問介護の運営基準、福井市の集団指導資料を取得し、該当箇所を確かめました。最終的な取扱いは指定権者(都道府県・市町村)にご確認ください。
この記事を書いたチームは、note でも介護の仕事で考えたことを書いています。note をフォローする
出典(一次資料)
- 厚生労働省老健局長通知「介護保険施設等の指導監督について」(老発0331第6号・最終改正 令和6年3月26日/別添1 介護保険施設等指導指針・別添2 介護保険施設等監査指針)(2026年10月26日確認)
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」(令和6年7月改訂)(2026年10月26日確認)
- 厚生労働省「介護保険施設等運営指導マニュアル」別添 確認項目及び確認文書(令和6年7月改訂・PDF)(2026年10月26日確認)
- 厚生労働省「全国介護保険・高齢者保健福祉担当課長会議資料」(令和4年3月・総務課介護保険指導室・PDF)(2026年10月26日確認)
- 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年度改定・解釈通知改正)(2026年10月26日確認)
- 介護保険最新情報 Vol.1213(令和6年度改定・解釈通知等改正)(2026年10月26日確認)
- 厚生労働省「指定居宅サービス等及び指定介護予防サービス等に関する基準について」(老企第25号)平成30年度改正の新旧対照表(別紙5・PDF)(全文)(2026年10月26日確認)
- 指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第37号)(2026年10月26日確認)
- 福井市「令和6年度 介護保険制度等に係る集団指導」1.運営指導における指摘事項等について(令和6年度の運営指導の実施状況と主な指摘事項・PDF)(2026年10月26日確認)
【免責事項】本キットは研修実施の参考資料です。法令・運営基準・介護報酬の内容は改定されることがあります。実際の運用にあたっての最終確認は、指定権者(都道府県・市区町村等の自治体)へのご確認をおすすめします。本キットの利用により生じた損害について、当社の損害賠償責任は、故意・重過失を除き購入代金の額を上限とします。