福祉用具貸与・特定福祉用具販売の研修 必須項目 2026|貸与と販売の違い・年何回・減算の有無とさかのぼり
更新日:2026-10-27・約22分で読めます
福祉用具貸与と特定福祉用具販売で、運営基準が研修の実施を義務づけているのは、高齢者虐待防止・感染症の予防とまん延防止・業務継続計画(BCP)の3分野です。回数はいずれも年1回以上で、感染症とBCPは訓練も年1回以上です。身体的拘束等は「禁止と記録」、ハラスメントは「措置」の義務で、研修そのものの義務ではありません。認知症介護基礎研修は対象外です。減算は福祉用具貸与だけが対象で、BCPは令和7年4月から、虐待防止は令和9年4月1日から適用されます。特定福祉用具販売は、どちらの減算もありません。条番号・回数・新規採用時の扱い・減算とさかのぼりを、省令・解釈通知・算定構造・国のQ&Aの原文で整理しました(2026年10月時点)。
この記事に関連する無料キット・一覧
研修キット(レジュメ・確認テスト・記録様式)
サービス類型ごとの義務一覧・年間計画表
まず結論:研修の義務は虐待防止・感染症・BCPの3分野で年1回以上。減算は貸与だけ
福祉用具貸与の運営基準は平成11年厚生省令第37号の第13章(第194条から)、特定福祉用具販売は第14章(第207条から)です。この省令で「研修を定期的に実施する」と書かれているのは、①高齢者虐待防止、②感染症の予防とまん延防止、③業務継続計画(BCP)の3分野です。条文には「定期的に」とあるだけで、年1回以上という回数は解釈通知(老企第25号)が示しています。感染症とBCPは、研修に加えて訓練(シミュレーション)も年1回以上です。
貸与と販売で扱いが分かれるのは減算です。高齢者虐待防止措置未実施減算と業務継続計画未策定減算は、どちらも所定単位数の1%で、対象は福祉用具貸与だけです(介護報酬の算定構造)。BCPの減算は令和7年4月1日から、虐待防止の減算は令和9年(2027年)4月1日から適用すると算定構造の注に書かれています。特定福祉用具販売は、算定構造に福祉用具貸与費の行はあっても販売の行がなく、国のQ&A(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問165)もBCPの減算は特定福祉用具販売に適用されないと明記しています。
ただし、減算がないことは、研修の義務がないことを意味しません。特定福祉用具販売も、虐待防止・感染症・BCPの措置は貸与と同じ条文を準用して義務づけられています。研修をしていなければ、減算がなくても運営指導で改善を求められます。
研修の義務ではないものも、並べて押さえておくと迷いません。身体的拘束等は「原則禁止と記録」だけが義務で、委員会・指針・研修の義務はありません。事故防止の委員会・研修の規定も福祉用具の運営基準にはありません。認知症介護基礎研修を受講させる措置は、福祉用具貸与も特定福祉用具販売も対象外です。
早見表:貸与と販売の条番号・回数・新規採用時・減算
条番号は平成11年厚生省令第37号です。福祉用具貸与は第205条、特定福祉用具販売は第216条で、訪問介護の規定(第30条の2・第37条の2など)を、読み替えて準用しています。読み替えにより、研修の相手は「福祉用具専門相談員」と書かれます。虐待防止・感染症・BCPは令和3年度改定で義務化され、令和6年3月31日までは努力義務、令和6年4月1日から義務です(解釈通知)。
- 高齢者虐待防止【研修が義務】第37条の2(貸与は第205条、販売は第216条で準用):委員会(定期的に開催)・指針・研修・担当者の4つ。研修は年1回以上と、新規採用時に必ず。貸与は4つのどれかが欠けると所定単位数の1%減算(令和9年4月1日から)。販売は減算なし。
- 感染症の予防とまん延防止【研修・訓練が義務】貸与は第203条第6項、販売は第31条第3項(第216条で準用):委員会(おおむね6か月に1回以上)・指針・研修・訓練。研修・訓練は各年1回以上で、新規採用時の研修は「望ましい」。確認した国の資料の範囲では、研修・訓練の未実施そのものを対象にした減算はありません。
- 業務継続計画(BCP)【研修・訓練が義務】第30条の2(準用):感染症と災害の計画の策定、従業者への周知、研修・訓練(各年1回以上)、定期的な見直し。新規採用時は別に研修を実施するのが「望ましい」。貸与は計画の未策定で所定単位数の1%減算(令和7年4月1日から)。販売は減算なし。
- 身体的拘束等【禁止と記録が義務・研修は義務ではない】貸与は第199条第6号・第7号、販売は第214条第6号・第7号:緊急やむを得ない場合を除き禁止。行う場合は態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録。委員会・指針・研修の定めなし。
- ハラスメント対策【措置が義務】第101条第4項(準用):就業環境が害されることを防ぐための方針の明確化等の措置。研修は周知・啓発の手段の一つで、回数の定めなし。カスタマーハラスメントは令和8年10月1日から事業主の措置義務。
- 研修の機会の確保【義務】第201条(貸与。販売は第216条で準用):福祉用具専門相談員の資質の向上のために、福祉用具に関する適切な研修の機会を確保。回数の定めなし。
- 事故発生時の対応【義務】第37条(準用):市町村・家族・居宅介護支援事業者等への連絡、必要な措置、記録、賠償。事故防止の委員会・指針・研修の規定は福祉用具の基準にはありません。
- 認知症介護基礎研修【対象外】:準用されるのは第101条の第1項・第2項・第4項だけで、受講させる措置を定めた第3項は準用されません。
根拠:条文は「定期的に」、回数と新規採用時は解釈通知。準用の読み方
省令の研修の条文は、3分野とも「定期的に」としか書いていません。虐待防止は第37条の2第3号が「虐待の防止のための研修を定期的に実施すること」、BCPは第30条の2第2項が「必要な研修及び訓練を定期的に実施しなければならない」、感染症は貸与の第203条第6項第3号が「感染症の予防及びまん延の防止のための研修及び訓練を定期的に実施すること」です。福祉用具貸与は第205条、特定福祉用具販売は第216条の読み替えで、これらの研修の相手が「福祉用具専門相談員」になります。
貸与と販売で、準用の範囲は少し違います。貸与は感染症について自前の第203条(回収した福祉用具の消毒・区分保管の規定を含む)を持ち、販売は訪問介護の第31条(衛生管理等)を準用しています。どちらも、感染症の委員会(おおむね6月に1回以上)・指針・研修・訓練の4つは同じ内容です。
回数と新規採用時の扱いは、解釈通知(老企第25号。令和3年度の改正は介護保険最新情報 Vol.934、令和6年度の改正は Vol.1213)にあります。福祉用具貸与は第3の十一・3、特定福祉用具販売は第3の十二・3で、虐待防止は「訪問介護と同様」、BCPと感染症(衛生管理等)は「訪問入浴介護と同様」として、それぞれの項を参照させています。参照先の書き方は、虐待防止が「定期的な研修(年1回以上)を実施するとともに、新規採用時には必ず虐待の防止のための研修を実施することが重要」、感染症が「定期的な教育(年1回以上)を開催するとともに、新規採用時には感染対策研修を実施することが望ましい」、BCPが「定期的(年1回以上)な教育を開催するとともに、新規採用時には別に研修を実施することが望ましい」です。
研修ごとの原文:委員会・指針・研修・訓練の中身
3分野の中身を、解釈通知の言葉で並べます。虐待防止と感染症の委員会、感染症とBCPの研修・訓練は、事業所に実施が求められるものですが、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えないとされています。
- 虐待防止の委員会:管理者を含む幅広い職種で構成し、構成メンバーの責務と役割分担を明確にして、定期的に開催します。他の会議体を設置している場合は、一体的に設置・運営して差し支えありません。テレビ電話装置等を活用して開催できます。虐待等の事案は機微な情報を含むため、従業者への共有は個別の状況に応じて慎重に対応するとされています。
- 虐待防止の指針:事業所における虐待の防止に関する基本的考え方、委員会その他の組織、職員研修の基本方針、発生時の対応方法、相談・報告体制、成年後見制度の利用支援、苦情解決方法、利用者等への閲覧、その他の9項目を盛り込みます。
- 虐待防止の研修:虐待等の防止に関する基礎的内容の普及・啓発と、事業所の指針に基づく虐待防止の徹底を行います。指針に基づく研修プログラムを作成し、定期的な研修(年1回以上)と新規採用時の研修を行い、実施内容を記録します。事業所内での研修で差し支えありません。
- 虐待防止の担当者:委員会・指針・研修を適切に実施するための担当者を置きます。委員会の責任者と同一の従業者が務めることが望ましいとされています。令和6年度の改正で解釈通知の「専任の担当者」は「担当者」に改められ、担当者としての職務に支障がなければ、同じ事業所内の身体的拘束等適正化・感染対策などの担当との兼務や、ほかの事業所・施設等との兼務も差し支えないとされました。
- 感染症の委員会:感染対策の知識を有する者を含む幅広い職種での構成が望ましく、外部の者の参画も望ましいとされています。感染対策担当者を決めておくことが必要で、おおむね6月に1回以上、定期的に開催し、感染症が流行する時期等を勘案して必要に応じて随時開催します。
- 感染症の指針:平常時の対策(事業所内の衛生管理、ケアにかかる感染対策)と、発生時の対応(状況の把握、感染拡大の防止、関係機関との連携、行政等への報告)を定めます。
- 感染症の研修と訓練:研修は感染対策の基礎的内容の普及・啓発と、指針に基づく衛生管理の徹底が目的で、年1回以上行い、実施内容を記録します。厚生労働省の研修教材等を使い、事業所内で行って差し支えありません。訓練は、発生時を想定して年1回以上行い、机上を含め手法は問わず、机上と実地を適切に組み合わせて行うのが適切とされています。
- BCPの策定と研修・訓練:感染症に係る計画と災害に係る計画の両方を作り、従業者に周知します。研修は計画の具体的内容を共有し、平常時と緊急時の対応の理解を促すもので、年1回以上行います。訓練は年1回以上で、感染症のBCPの研修・訓練は、感染症の予防とまん延防止の研修・訓練と一体的に実施しても差し支えありません。研修・訓練は、全ての従業者が参加できるようにすることが望ましいとされています。
新規採用時の研修:必ず行うのは虐待防止だけ。感染症とBCPは「望ましい」
福祉用具貸与・特定福祉用具販売の研修を、新規採用時の扱いで分けると、次の3段階になります。省令は新規採用時の研修を書いていないため、この区別は解釈通知の書き方によります。
グループホームや特別養護老人ホームの資料を流用する場合は、書き方の違いに注意してください。施設系・居住系では、感染症やBCPの新規採用時の研修が「実施すること」「必ず」と書かれている種類があります。福祉用具は、訪問系・通所系などと同じ「望ましい」の側です。
また、認知症介護基礎研修は、新規採用の従業者に採用後1年以内に受講させる措置が他のサービスでは義務ですが、福祉用具貸与・特定福祉用具販売は対象外なので、この年間計画には入りません。
- 「必ず…実施することが重要」:高齢者虐待防止。新しく採用した従業者に、早い時期に虐待防止の研修を行います。
- 「望ましい」:感染症(新規採用時には感染対策研修を実施することが望ましい)とBCP(新規採用時には別に研修を実施することが望ましい)。
- 新規採用時の定めがないもの:身体的拘束等(研修自体が義務ではありません)、事故発生時の対応、秘密保持、ハラスメント対策、研修の機会の確保。措置は義務ですが、「新規採用時に研修」という定めはありません。
身体的拘束等は研修の義務ではなく「禁止と記録」:貸与は第199条、販売は第214条
福祉用具の運営基準は、貸与の第199条第6号・第7号、販売の第214条第6号・第7号で、身体的拘束等について次の2つを定めています。第6号は、利用者または他の利用者等の生命または身体を保護するため緊急やむを得ない場合を除き、身体的拘束等を行ってはならない、第7号は、行う場合に、その態様と時間、その際の利用者の心身の状況、緊急やむを得ない理由を記録しなければならない、です。施設系や短期入所系にある委員会・指針・研修の義務は、福祉用具の基準にはありません。
解釈通知(令和6年度改正・Vol.1213)は、緊急やむを得ない理由について、切迫性・非代替性・一時性の3つの要件を満たすことを、組織等として確認する手続きを極めて慎重に行い、その具体的な内容を記録しておくことが必要だとしています。この記録は、貸与は第204条の2第2項、販売は第215条第2項により、完結の日から2年間の保存が義務です。
3つの要件の意味は、国のQ&A(Vol.1345 問3)が、切迫性は「利用者本人又は他の利用者の生命又は身体が危険にさらされる可能性が著しく高いこと」、非代替性は「身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替する介護方法がないこと」、一時性は「身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること」と示しています。この問は短期入所・小規模多機能などが対象で、福祉用具は対象サービスに挙がっていませんが、要件の言葉の説明として参考になります。
記録を求める条文がある以上、「行わない」ことと「万一行った場合に記録する」ことを、虐待防止の研修の中で一緒に確認しておくと、抜けを防げます。これは法令の定めではなく、当サイトの編集上の提案です。
研修の義務ではないが押さえる5つ:研修の機会・ハラスメント・事故・秘密保持・認知症介護基礎研修
次の5つは、研修の回数の定めがない、または研修の義務ではないものです。年間計画に一緒に入れておくと漏れを防げます。
- 研修の機会の確保【第201条・義務】:福祉用具貸与事業者は、福祉用具専門相談員の資質の向上のために、福祉用具に関する適切な研修の機会を確保しなければなりません(第1項)。福祉用具専門相談員も、常に自己研鑽に励み、必要な知識及び技能の修得、維持及び向上に努めます(第2項)。回数の定めはありません。特定福祉用具販売は第216条の準用で、「福祉用具」が「特定福祉用具」に読み替えられます。製品の知識や使い方の説明は、この枠で計画に入れます。
- ハラスメント対策【第101条第4項の準用・措置義務】:職場において行われる性的な言動または優越的な関係を背景とした言動で、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、福祉用具専門相談員の就業環境が害されることを防止するための方針の明確化等の必要な措置を講じます。研修は、周知・啓発の手段の一つです。
- 事故発生時の対応【第37条の準用・義務】:事故が起きた場合に、市町村、家族、居宅介護支援事業者等へ連絡し、必要な措置を講じ、事故の状況と処置を記録し、賠償すべき事故では損害賠償を速やかに行います。事故防止の委員会・指針・研修・担当者の規定は、福祉用具の運営基準(第13章・第14章)にもこの第37条にもありません。
- 秘密保持等【第33条の準用・義務】:従業者が、正当な理由なく業務上知り得た利用者やその家族の秘密を漏らさないこと、従業者でなくなった後も漏らさないよう必要な措置を講じること、サービス担当者会議等で個人情報を用いる場合に、あらかじめ文書により同意を得ることが定められています。研修の定めはありません。
- 認知症介護基礎研修【対象外】:通所介護などの基準にある「受講させるために必要な措置」(第101条第3項)は、福祉用具貸与・特定福祉用具販売の準用に入っていません。令和3年度改定の資料も、受講の義務づけの対象から福祉用具貸与を除いています。
しないとどうなる?減算は貸与の2つ(各1%)。さかのぼるのはBCPだけ
率は令和6年度の介護報酬の算定構造、算定の考え方は留意事項通知(老企第36号。令和6年度改正・Vol.1213)、さかのぼりと始まり方は国のQ&A(令和6年度改定 Q&A Vol.1 問164〜169)によります。
感染症の研修・訓練、ハラスメント対策、研修の機会の確保、事故発生時の対応は、確認した国の資料の範囲では減算の対象ではありませんが、運営基準の義務なので、していなければ運営指導で改善を求められます。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算【所定単位数の1%・令和9年4月1日から適用】:算定構造の福祉用具貸与費は、この減算を「−1/100」とし、注に「令和9年4月1日から適用する」とあります。留意事項通知は、虐待が発生した場合ではなく、措置を講じていない場合に、利用者全員について減算するとしています。具体的には、委員会を定期的に開催していない、指針を整備していない、年1回以上の研修を実施していない、担当者を置いていない事実が生じた場合です。虐待が起きていなくても、4つのどれか一つでも欠ければ対象です(問167)。
- 虐待防止の減算の始まりと終わり:運営指導などで把握した事実が過去のものでも、さかのぼっては適用されず、発見した日の属する月が「事実が生じた月」になります(問168)。減算は、事実が生じた月の翌月から、改善が認められた月まで続きます。改善計画の提出の有無にかかわらず、翌月から減算して差し支えなく、事実が生じた月から3か月以降に改善計画に基づく改善が認められた月まで継続します(問169)。
- 業務継続計画未策定減算【所定単位数の1%・令和7年4月1日から適用】:算定構造の福祉用具貸与費に「−1/100」があり、注に「令和7年4月1日から適用する」とあります。感染症または災害のいずれか、または両方の計画が未策定で、かつ、その計画に従った措置も講じられていない場合が対象です(問164)。計画の周知・研修・訓練・見直しをしているかどうかは、減算の要件ではありません(同)。福祉用具貸与は、令和7年4月が施行月の区分(訪問介護・訪問入浴介護・訪問看護・居宅介護支援などと同じ)で、令和7年3月31日までは適用しない経過措置がありました(問165)。
- BCPの減算のさかのぼり:行政機関が運営指導で未策定を見つけた時点ではなく、「基準を満たさない事実が生じた時点」までさかのぼって適用します(問166)。留意事項通知は、基準を満たさない事実が生じた月の翌月(その日が月の初日なら当該月)から、解消された月まで、利用者全員について減算するとしています。
- 特定福祉用具販売:2つの減算はどちらも対象外です。BCPの減算は問165の注が、特定福祉用具販売には適用されないと明記しています。虐待防止の減算も、算定構造では福祉用具貸与費の注にだけ置かれていて、算定構造には特定福祉用具販売費の項目そのものがありません(Vol.1345 の虐待防止の問は貸与と販売の両方を対象から外しているため、販売だけを除く根拠にはなりません)。
- 介護予防福祉用具貸与:算定構造は、介護予防福祉用具貸与費にも同じ2つの減算(−1/100)を置き、同じ適用開始日(虐待防止は令和9年4月1日、BCPは令和7年4月1日)を注記しています。
数え方の例:BCPはさかのぼり、虐待防止は発見した月から
令和8年10月の運営指導で、福祉用具貸与の事業所に感染症と災害のBCPがなく、計画に従った措置も講じられていないことが分かった場合を考えます。問166は、発見した時点ではなく、基準を満たさない事実が生じた時点まで遡及するとしています。事実がずっと続いていたなら、施行月の令和7年4月分からさかのぼる計算になります。BCPは、計画の有無を最優先で確かめてください。
虐待防止の減算が始まる令和9年4月以降の例も見ておきます。令和9年10月の運営指導で、年1回以上の研修が行われていなかったと分かった場合、さかのぼらないので「事実が生じた月」は令和9年10月で、減算は翌月の11月分から始まります。事実が生じた月から3か月以降の令和10年1月以降に、改善計画に基づく改善が認められた月まで続きます(留意事項通知と問168・問169による数え方の例)。令和9年3月までは減算の適用がありませんが、委員会・指針・研修・担当者の義務はすでに続いています。「減算が始まるまで研修しなくてよい」という意味ではありません。
少人数・外回りが多い事業所での実施:相談員は常勤換算2以上、合同開催と日を分ける実施
福祉用具貸与も特定福祉用具販売も、事業所ごとに置く福祉用具専門相談員は、常勤換算方法で2以上です(第194条第1項、第208条第1項)。少人数の事業所が多く、納品・回収・訪問で全員が同じ時間にそろいにくい業態でもあります。
国のQ&A(Vol.1 問170)は、小規模な事業所でも、規模の大小にかかわらず、虐待防止の委員会と研修を定期的に実施するよう求めています。例として、法人内の複数事業所による合同開催、感染症対策の委員会などほかの委員会との合同開催、関係機関等の協力を得た開催を挙げ、研修では都道府県や市町村が実施する研修会への参加、複数の小規模事業所による外部講師を活用した合同開催なども挙げています。合同で行う場合は、参加した各事業所の従事者と実施した内容等が、記録で確認できるようにしておくこととされています。
虐待防止と感染症の研修は、事業所内で行って差し支えないと解釈通知にあります。BCPの研修・訓練は、全ての従業者が参加できるようにすることが望ましいとされています。全員がそろわない場合は、同じ内容を複数回に分けて行い、回ごとに出席者を記録しておくと、全員が受けたことを示しやすくなります。どのような形で行えば研修の実施として扱われるかは、事業所の指針や指定権者の案内も合わせて確認してください。
研修の相手は、条文では福祉用具専門相談員です。配送、回収、消毒、メンテナンスを担当する従業者が相談員以外にいる事業所では、同じ機会に参加してもらえば、事業所の取り組みがそろいます。当サイトのキットは、全職員向けに作ってあります。
貸与と販売の両方を行う事業所:年間計画では「貸与」「販売」を分けて確認する
福祉用具貸与と特定福祉用具販売を同じ事業所で行う場合、福祉用具貸与計画と特定福祉用具販売計画は、一体のものとして作成することが運営基準に書かれています(第199条の2第1項、第214条の2第1項)。一方、研修の義務は、貸与と販売のそれぞれが、準用の条文で同じ3分野を求めています。
同じ事業所で貸与と販売を一体的に運営している場合に、研修を1回で兼ねてよいかを直接示した国の資料は、今回確認した範囲では見つかりませんでした。一体で行う場合は、記録に、貸与と販売の両方の従業者が参加したことが分かるように書いておくと、運営指導で説明しやすくなります。
年間計画では、減算の対象が貸与だけであることに注意します。貸与の行と販売の行を分けて、虐待防止(貸与は令和9年4月1日から減算)とBCP(貸与は令和7年4月1日から減算)の確認欄に、「貸与のみ減算」と書き分けておくと、確認漏れを防げます。
年1回以上の最低ラインは、虐待防止の研修1つ、感染症の研修と訓練、BCPの研修と訓練です。感染症のBCPの研修・訓練は、感染症の研修・訓練と一体的に実施して差し支えないと解釈通知にあるので、まとめて行えば機会の数を整理できます。災害のBCPの訓練は別に確認が必要です。
2026年の変更:カスハラ対策が10月1日から義務、貸与の虐待防止減算は2027年4月1日から
- カスタマーハラスメント対策(令和8年10月1日から):改正労働施策総合推進法により、事業主が必ず講じなければならない措置になりました。厚生労働省のリーフレットは、方針の明確化と周知・啓発、あらかじめ定めた対処の内容の周知、相談窓口の整備、事実関係の確認、被害者への配慮、再発防止、特に悪質なカスハラへの対処方針の整備などを挙げ、「顧客等」には、顧客、取引の相手方、施設の利用者のほか、事業に関係を有する者が含まれるとしています。電話やSNS上のものも含まれます。納品や訪問先で利用者やご家族と接する場面がある事業所は、既存のハラスメント対策の方針に加えておくと整理できます。
- 福祉用具貸与の高齢者虐待防止措置未実施減算(令和9年4月1日から):算定構造の注による適用開始日です。それまでの間も、委員会・指針・研修・担当者の義務は続いています。
記録の残し方と、無料の研修キット
解釈通知は、虐待防止・感染症・BCPのいずれの研修も、実施内容を記録するよう求めています。日時、テーマ、講師、使った資料、出席者を残し、従業者の名簿と対応させておくと、実施状況を後から説明しやすくなります。身体的拘束等を行った場合の態様・時間・心身の状況・緊急やむを得ない理由の記録は、完結の日から2年間の保存が義務です。研修の実施記録を何年保存するかは、確認した条文・通知には書かれていません。第204条の2第1項が従業者・設備・備品・会計に関する諸記録の整備を求めているので、事業所の記録の管理方針に合わせて、保存期間を決めておくと運用しやすくなります。
職員が納品や訪問で外出する時間が多い事業所では、記録が後回しになりがちです。研修の終了時にその場で記入する運用にすると、抜けを防げます。
本サイトの「義務研修一覧表」でサービス類型に「福祉用具貸与・販売」を選ぶと、この類型に当てはまる研修だけを絞り込んだ一覧と、頻度に応じて月を配置した年間計画表が作れます。虐待防止・感染症対策・BCP・ハラスメントの各キットには、レジュメ・確認テスト・実施記録様式・出席簿がそろっています。無料・登録なしで、入力内容はお使いのブラウザの中にだけ保存されます。
この記事で確認した一次資料
本文の条番号・回数・新規採用時の扱い・減算の率と適用開始日・Q&Aの問番号は、2026年10月27日に次の原文で確認しました(リンクは記事末尾の「出典(一次資料)」)。法令や介護報酬は改定されることがあります。実際の適用は、事業所を指定した都道府県(指定都市・中核市にある事業所はその市)にご確認ください。
- 省令:平成11年厚生省令第37号(e-Gov の現行版)の第13章(第194条〜第205条)、第14章(第207条〜第216条)と、準用される第30条の2・第31条・第33条・第37条・第37条の2・第101条。
- 解釈通知:老企第25号の令和3年度改正(介護保険最新情報 Vol.934)の第3の十一・十二と、参照先の第3の一の3(31)、第3の二の3⑺⑻。令和6年度改正(Vol.1213)の第3の十一・3⑶(身体的拘束等)、十二・3⑷。
- 報酬:介護報酬の算定構造(福祉用具貸与費・介護予防福祉用具貸与費の2つの減算と適用開始日の注)。留意事項通知(老企第36号)の令和6年度改正(Vol.1213)の第2の9⑴⑵。
- Q&A:令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1。介護保険最新情報 Vol.1225)の問164〜問170と、介護保険最新情報 Vol.1345(身体的拘束等の3要件、対象サービス)。
- 認知症介護基礎研修:令和3年度介護報酬改定における改定事項について(対象外のサービス)。
- 2026年の変更:厚生労働省のカスタマーハラスメント対策リーフレット(令和8年10月1日施行)。
この記事を書いたチームは、note でも介護の仕事で考えたことを書いています。note をフォローする
出典(一次資料)
【免責事項】本キットは研修実施の参考資料です。法令・運営基準・介護報酬の内容は改定されることがあります。実際の運用にあたっての最終確認は、指定権者(都道府県・市区町村等の自治体)へのご確認をおすすめします。本キットの利用により生じた損害について、当社の損害賠償責任は、故意・重過失を除き購入代金の額を上限とします。