居宅介護支援(ケアマネ事業所)の研修 必須項目 2026|義務は何分野?年何回・少人数での実施と記録・しないとどうなる(減算と遡り)
更新日:2026-10-22・約14分で読めます
居宅介護支援(ケアマネ事業所)で、運営基準が「研修の実施」を義務づけているのは虐待防止・感染症・業務継続計画(BCP)の3分野で、研修はいずれも年1回以上、感染症とBCPは訓練も年1回以上です。1人・少人数の事業所での進め方と記録、しないとどうなるか(減算と遡り)、2026年の変更(処遇改善加算の新設・カスハラ対策の義務化)、ケアマネ本人の法定研修(実務研修・更新研修)との違い、特定事業所加算の研修の要件を、一次資料の原文で整理しました。
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まず結論:研修の義務は虐待防止・感染症・BCPの3分野。いずれも年1回以上
居宅介護支援の運営基準(平成11年厚生省令第38号)で「研修を定期的に実施する」ことが義務づけられているのは、①高齢者虐待防止(第27条の2)、②感染症の予防とまん延防止(第21条の2)、③業務継続計画=BCP(第19条の2)の3分野です。感染症とBCPは訓練も義務です。回数は解釈通知(老企第22号)で、研修・訓練とも年1回以上とされています。このほか、④職場のハラスメント対策の措置(第19条第4項)と、⑤介護支援専門員の研修の機会の確保(第19条第3項)も義務です。
一方、認知症介護基礎研修を受講させる措置は居宅介護支援の基準になく、身体的拘束等と事故防止には委員会・研修の義務はありません(身体的拘束等を行った場合の記録と、事故の記録は義務です)。
未実施が減算につながるのは2つです。虐待防止は、研修を含む4つの措置のどれかが欠けると所定単位数の1%減算で、さかのぼりません。BCPは計画が未策定だと1%減算で、基準を満たさない事実が生じた時点までさかのぼります(居宅介護支援の施行は令和7年4月)。
なお、介護支援専門員実務研修や更新研修は、ケアマネジャー本人が資格の登録・更新のために受ける研修で(介護保険法)、事業所が従業者に行う運営基準の研修とは別の仕組みです。
年何回?居宅介護支援の研修・訓練の早見表(条文・回数・新規採用時・減算)
条番号は平成11年厚生省令第38号、回数と新規採用時の扱いは解釈通知(老企第22号。令和3年度の改正=介護保険最新情報 Vol.934)、減算は令和6年度介護報酬改定によります。虐待防止・感染症・BCPは令和3年度改定で義務化され、3年の経過措置を経て令和6年4月から完全義務です。
- 高齢者虐待防止【研修が義務】第27条の2:委員会・指針・研修・担当者の4つ。研修は年1回以上と、新規採用時に必ず。4つのどれかが欠けると所定単位数の1%減算。
- 感染症の予防とまん延防止【研修・訓練が義務】第21条の2:委員会(おおむね6か月に1回以上)・指針・研修・訓練。研修・訓練は各年1回以上で、新規採用時の研修は「望ましい」。減算なし。
- 業務継続計画(BCP)【研修・訓練が義務】第19条の2:感染症と災害の計画の策定、従業者への周知、研修・訓練(各年1回以上)、定期的な見直し。新規採用時は別に研修するのが「望ましい」。感染症のBCPの研修・訓練は、感染症の研修・訓練と一体で実施してよい。計画の未策定は所定単位数の1%減算。
- ハラスメント対策【措置義務】第19条第4項:介護支援専門員の就業環境が害されることを防ぐための方針の明確化等の措置。研修は周知・啓発の手段の一つで、回数の定めなし。
- 研修の機会の確保【義務】第19条第3項:介護支援専門員の資質の向上のために研修の機会を確保。回数の定めはなく、倫理・法令遵守や個人情報の取扱いの研修は、この枠で年間計画に入れます。
- 身体的拘束等【記録が義務・研修は義務ではない】第13条第2号の2・第2号の3:緊急やむを得ない場合を除き禁止。行う場合は、態様・時間・その際の心身の状況・緊急やむを得ない理由を記録し、2年間保存(第29条第2項)。委員会・指針・研修・減算の規定なし。
- 認知症介護基礎研修【対象外】:居宅介護支援の基準には、通所介護などの基準にある「受講させるために必要な措置」の規定がありません。
1人・少人数の事業所でも省略はできない:国のQ&A(問170)と解釈通知が示すやり方
令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)問170は、「居宅療養管理指導や居宅介護支援などの小規模な事業者では、実質的に従業者が1名だけということがあり得る」という問いに対し、規模の大小に関わりなく虐待防止委員会と研修を定期的に実施するよう答えています。小規模事業所は他者・他機関によるチェックが働きにくい環境にあるため、外部機関などを積極的に活用するよう求めています。確認できた具体的なやり方は次のとおりです。
- 虐待防止の委員会:法人内の複数事業所による合同開催、感染症対策委員会など他の委員会との合同開催、関係機関などの協力を得た開催が例示されています(問170)。解釈通知も、他の会議体との一体的な設置・運営、他のサービス事業者との連携による実施、テレビ電話装置等の活用を認めています。
- 虐待防止の研修:法人内の複数事業所や他の委員会との合同開催、都道府県・市町村などが実施する研修会への参加、複数の小規模事業所による外部講師を活用した合同開催が例示されています(問170)。解釈通知は「研修の実施は、事業所内での研修で差し支えない」としています。
- 感染症対策の委員会:解釈通知は、居宅介護支援事業所の従業者が1名の場合は、指針を整備することで委員会を開催しないことも差し支えないとしています(その場合、指針の整備は外部の感染管理等の専門家などと積極的に連携することが望ましい)。委員会以外の指針・研修・訓練を省いてよいという記載はありません。
- 感染症・BCPの研修と訓練:解釈通知は、事業所に実施が求められるものの、他のサービス事業者との連携等により行うことも差し支えないとしています。感染症の研修は厚生労働省の研修教材を活用するなど事業所内で行うものでも差し支えなく、訓練は机上を含め実施手法を問いません(机上と実地を適切に組み合わせるのが適切)。
- 合同で開催した場合:参加した各事業所の従事者と実施した内容などが、記録で確認できるようにしておきます(問170)。
日を分けて行う場合と、研修の記録の残し方
少人数でも、訪問やモニタリングの予定で全員がそろわない日はあります。BCPの解釈通知は、研修・訓練は「全ての従業者が参加できるようにすることが望ましい」としています。集まれる人で行い、来られなかった人には同じ内容を後日行う方法が現実的ですが、日を分けて行う方法や、1人で資料を読む学習を研修として扱えるかを名指しで定めた国の資料は確認できませんでした(2026年10月時点)。扱いに迷う場合は、指定権者(居宅介護支援は市町村)に確認してください。
記録について、解釈通知は虐待防止・感染症・BCPのいずれの研修も、実施内容を記録するよう求めています。回ごとに実施日・テーマ・講師・使った資料・出席者を残し、従業者の名簿と突き合わせて全員分そろっているか確かめると、受講漏れが見つけやすくなります。なお、省令第29条第2項が完結の日から2年間の保存を定める記録(居宅介護支援台帳、身体的拘束等・苦情・事故の記録など)に、研修の記録は挙がっていません。保存期間は指定権者の案内も確認してください。
このサイトでは、研修ごとの読み上げ用レジュメ・確認テスト・実施記録様式・出席簿を無料で表示・印刷できます。毎回同じレジュメを読み上げ、確認テストに答えてもらい、出席簿に日付と氏名を残す形にすれば、1人ずつ行っても内容と記録をそろえられます。「義務研修一覧表」でサービス類型に「居宅介護支援」を選ぶと、この類型に当てはまる研修だけの一覧と、頻度に応じて月を配置した年間計画表も作れます(無料・登録なし。入力内容はお使いのブラウザの中にだけ保存されます)。
しないとどうなる?減算は2つ。虐待防止はさかのぼらず、BCPは事実が生じた時点までさかのぼる
令和6年度の介護報酬改定で新設された2つの減算は、どちらも居宅介護支援が対象で、率はいずれも所定単位数の1%です(介護報酬の算定構造)。感染症の研修・訓練、ハラスメント対策、研修機会の確保は、確認した国の資料の範囲では減算はありませんが、運営基準の義務なので、守れていなければ運営指導で指摘の対象になります。
- 高齢者虐待防止措置未実施減算(1%):委員会を定期的に開催していない、指針を整備していない、年1回以上の研修を実施していない、担当者を置いていない、のどれか一つでもあれば、虐待が起きていなくても利用者全員について減算されます(留意事項通知、Q&A Vol.1 問167)。
- 虐待防止の減算の始まりと終わり:運営指導などで把握した事実が過去のものでも、さかのぼっては適用されず、発見した日の属する月が「事実が生じた月」になります(問168)。速やかに改善計画を提出し、事実が生じた月から3か月後に改善状況を報告します。減算は改善計画の提出の有無にかかわらず翌月から始まり、事実が生じた月から3か月以降に改善が認められた月まで続きます(問169)。
- 業務継続計画未策定減算(1%):感染症・災害のどちらか、または両方の計画が未策定で、計画に従った措置も講じていない場合が対象です。BCPの周知・研修・訓練・見直しをしているかどうかは、この減算の要件ではありません(問164)。
- BCPの減算の施行とさかのぼり:居宅介護支援の施行は令和7年4月です(問165。令和7年3月31日までは適用しない経過措置)。基準を満たさない事実が生じた月の翌月(その日が月の初日なら当月)から、状況が解消された月まで、利用者全員について減算されます(留意事項通知)。運営指導で見つかった時点ではなく「基準を満たさない事実が生じた時点」までさかのぼり、Q&Aは、同じく令和7年4月施行の訪問介護で令和7年10月の運営指導で未策定が判明した場合、令和7年4月から減算の対象になる例を示しています(問166)。
2026年の変更:処遇改善加算が居宅介護支援にも新設、カスハラ対策は10月1日から義務
令和8年度の介護報酬改定(期中改定)で、これまで介護職員等処遇改善加算の対象外だった訪問看護・訪問リハビリテーション・居宅介護支援等に、処遇改善加算が新設されました。厚生労働省の改定資料では、居宅介護支援・介護予防支援の加算率は2.1%です。届出の扱いを改めた通知(介護保険最新情報 Vol.1478)は令和8年6月1日から適用され、居宅介護支援の項目にも「介護職員等処遇改善加算」の扱いが加わっています。
研修との関係では、新たに対象となったサービスは、加算Ⅳに準ずる要件(「賃金体系等の整備及び研修の実施等」=キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱと、職場環境等要件)か、令和8年度特例要件(ケアプランデータ連携システムへの加入と実績の報告、社会福祉連携推進法人への所属など)のどちらかで算定できるとされています。加算Ⅳに準ずる要件は、申請時点では令和8年度中の対応の誓約でも算定可能です。これは運営基準の義務研修とは別の、加算を算定するための要件です。
2026年10月1日からは、改正労働施策総合推進法により、カスタマーハラスメント対策が全ての事業主の措置義務になりました。厚生労働省のリーフレットは、方針の明確化と周知・啓発、あらかじめ定めた対処の内容の周知、相談窓口の設置、事後の迅速かつ適切な対応などを講ずべき措置とし、対処の例に「可能な限り労働者を一人で対応させない」ことなどを挙げています。ケアマネジャーは、アセスメントで利用者の居宅を訪問して面接し(第13条第7号)、少なくとも月1回は利用者に面接します(第13条第14号)。1人で訪問する場面での連絡方法や判断を仰ぐ手順を決めて研修で周知しておくと、措置の「周知・啓発」を記録で示せます。
ケアマネ本人の法定研修(実務研修・更新研修)と、事業所の義務の研修は別もの
混同されやすいのが、ケアマネジャー本人が受ける法定研修です。介護保険法は、介護支援専門員の登録を受けるには、実務経験があり、都道府県知事が行う介護支援専門員実務研修受講試験に合格し、介護支援専門員実務研修の課程を修了することを求めています(第69条の2)。介護支援専門員証の有効期間は5年で(第69条の7)、更新を受けるには都道府県知事が行う更新研修を受けなければなりません(第69条の8。現に業務に従事し、更新研修に相当するとして都道府県知事が指定する研修を修了した人は除く)。
ただし、令和8年6月25日公布の社会福祉法等の一部を改正する法律(令和8年法律第51号)で、介護支援専門員証の有効期間(5年)と更新の規定(第69条の8)を削る改正が成立しています。施行は「公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内において政令で定める日」で、e-Govでは未施行と表示されています(2026年10月22日確認)。改正後の第69条の34第4項は、介護支援専門員(厚生労働省令で定める者を除く)は、資質の保持及び向上を図るため、都道府県知事が行う研修として厚生労働省令で定めるものを受けるものとしています。
- ケアマネ本人の法定研修:根拠は介護保険法。受けるのは介護支援専門員本人で、行うのは都道府県知事(現行法では、登録と介護支援専門員証の更新のため)。
- 事業所の義務の研修:根拠は運営基準(省令第38号)と解釈通知。行うのは居宅介護支援事業者で、対象は介護支援専門員その他の従業者。虐待防止の研修は、事業所の指針に基づいて虐待の防止の徹底を行うものとされています(解釈通知)。
- 更新研修などを受けたことで、事業所の虐待防止・感染症・BCPの研修を実施したものとして扱えるかは、国の資料では明記されていません(2026年10月時点)。3分野の研修は事業所として年1回以上行い、記録を残しておくのが確実です。
特定事業所加算を算定する事業所は、研修の算定要件が別にある
特定事業所加算(Ⅰ)〜(Ⅲ)・(A)には、運営基準とは別に、研修にかかわる算定要件があります。令和6年度介護報酬改定の改定事項の資料では、次の要件が挙がっています。
- 介護支援専門員に対し、計画的に研修を実施していること(全区分。(A)は他の事業所との連携でも可)。
- 他の法人が運営する指定居宅介護支援事業者と共同で、事例検討会・研修会等を実施していること(全区分。(A)は連携でも可)。
- ヤングケアラー、障害者、生活困窮者、難病患者等、高齢者以外の対象者への支援に関する知識等の事例検討会・研修等に参加していること(全区分。令和6年度改定で要件に追加)。
- 介護支援専門員実務研修の科目「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」等に協力し、または協力体制を確保していること(全区分。(A)は連携でも可)。
この記事で確認した一次資料
本文の条番号・回数・減算・Q&Aの問番号・加算の要件と率は、次の一次資料の原文で2026年10月22日に確認しました(リンクは記事末尾の「出典(一次資料)」)。研修計画の立て方など特定事業所加算の細かな運用は、留意事項通知(老企第36号)で確認してください。法令・介護報酬は改定されます。最終的な適用は指定権者(居宅介護支援は市町村)へご確認ください。
- 平成11年厚生省令第38号:第13条第2号の2・第2号の3・第7号・第14号、第19条第3項・第4項、第19条の2、第21条の2、第27条の2、第29条第2項。
- 介護保険最新情報 Vol.934(老企第22号の令和3年度改正):研修・訓練の回数、新規採用時の扱い、従業者1名の事業所の感染対策委員会、他のサービス事業者との連携、記録。
- 令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)問164〜問170と、介護保険最新情報 Vol.1345 問1(虐待防止の研修は居宅介護支援も年1回以上)。
- 老企第36号の令和6年度改正の新旧対照表(居宅介護支援の2つの減算)と、介護報酬の算定構造(率と施行日)。
- 令和6年度介護報酬改定の改定事項(特定事業所加算の算定要件)。
- 令和8年度介護報酬改定について(介護給付費分科会資料)と介護保険最新情報 Vol.1478:処遇改善加算の新設と加算率、令和8年6月1日からの届出の扱い。
- 介護保険法 第46条・第69条の2・第69条の7・第69条の8(現行)と、令和8年法律第51号による改正後の条文(e-Govの未施行版の第69条の7・第69条の8・第69条の34)。
- 厚生労働省のカスハラ対策リーフレット(令和8年10月1日施行)。
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出典(一次資料)
- 指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)
- 介護保険最新情報 Vol.934(令和3年度改定・解釈通知改正)
- 介護保険最新情報 Vol.1225(令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)・令和6年3月15日)
- 介護保険最新情報 Vol.1345(令和6年度改定 Q&A)
- 厚生労働省「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準(訪問通所サービス、居宅療養管理指導及び福祉用具貸与に係る部分)及び指定居宅介護支援に要する費用の額の算定に関する基準の制定に伴う実施上の留意事項について」(老企第36号)令和6年度改正の新旧対照表(別紙1・抄)
- 厚生労働省「介護報酬の算定構造」(令和6年4月改定・PDF)
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定における改定事項について」(PDF)
- 厚生労働省「令和8年度介護報酬改定について」(社会保障審議会介護給付費分科会 第253回 資料1・令和8年1月16日)
- 介護保険最新情報 Vol.1478(「介護給付費算定に係る体制等に関する届出等における留意点について」の一部改正=令和8年6月1日から適用・令和8年3月13日)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)
- 厚生労働省リーフレット「令和8年10月1日からハラスメント対策が強化されます!」
【免責事項】本キットは研修実施の参考資料です。法令・運営基準・介護報酬の内容は改定されることがあります。実際の運用にあたっての最終確認は、指定権者(都道府県・市区町村等の自治体)へのご確認をおすすめします。本キットの利用により生じた損害について、当社の損害賠償責任は、故意・重過失を除き購入代金の額を上限とします。